週間天気予報解説資料

週間天気予報解説資料
2016 年 7 月 28 日 10 時 00 分 発表
気象庁予報部
予報期間
7 月 29 日から 8 月 4 日まで
1.アンサンブル資料
●アンサンブル(ENS):500hPa高度は全体的に高く、5880mのすぐ北側には前線位相を考える必要がありそうで、5820mより少し高い5
850m付近の正渦度に注目。また、小笠原付近にある寒冷渦(500hPaで-6℃以下の寒気)の動向も天気を左右する。比較的安定し
た夏空が期待できるのは5880m以上の領域だが、日本付近を覆うのは31日頃までで、その後は上記5850m付近の正渦度域と南か
ら北上する寒冷渦が日本付近に滞留する。500hPa-6℃線はENSでは2日は東日本付近まで南下し、その後北上する寒冷渦の-6℃域
と重なって西日本付近まで覆い、広い範囲で大気の状態が不安定となる。
●500hPa基本場(週間予報支援図):実況は、千島の東に優勢なリッジがあり、華中から西日本にかけてはサブHに覆われる。その
間の東日本から日本の東にかけてトラフとなっており、小笠原付近の寒冷渦周辺は負偏差。予報期間は、千島の東のリッジ、華
中のサブHともに弱まる。日本の東のトラフは、寒冷渦の北西進に伴い本州の南に移動する。日本付近は南海上の寒冷渦付近を
除き期間を通して正偏差。
●31日~8月1日:沿海州の5820m付近のトラフは、日本の東のリッジに乗り上げながら北東進しオホーツク海へ進む。小笠原付
近の寒冷渦は東日本の南海上まで北上する。これに伴い1日には日本付近は5880m圏内から外れる。北海道ではトラフ通過に伴
い雨の降る所が多い。東北地方から西日本にかけては31日は晴れる所が多くなる見込みだが、1日は雲が多くなり、東北地方
と東日本では、広く不安定性降水が予想される。西日本の雲が広がりやすくなる。
●2~3日:日本付近には、北からの5850m付近の正渦度域と、南海上の寒冷渦に伴う正渦度域が滞留する。500hPa-6℃線も西日本
まで覆う。トラフの影響がなくなる北海道を除き、広い範囲で大気の状態が不安定。雲が広がりやすく雨の降るところもある。
●4日:日本付近に滞留している正渦度域は新たな渦度補給が無く次第に不明瞭になり、代わって東海上の高気圧が日本付近へ勢力
を伸ばす傾向で、500hPa気温も上昇傾向だが、高気圧縁辺の暖湿気の流入しやすい状態は残る。また、アンサンブルメンバーの
半数以上が予想している、台湾付近へ進む熱帯じょう乱による暖湿気の影響も、西日本や沖縄・奄美を中心に懸念される。北~
西日本は晴れる所もあるが雲の広がりやすい状態は続き、にわか雨の降る所もある。
●沖縄・奄美:太平洋高気圧に覆われて概ね晴れるが、期間後半は湿った空気の影響で雲が広がりやすく、雨の降る所もある。
・ アンサンブル(ENS)/27メンバー:ほぼ全メンバーが、小笠原付近の寒冷渦に伴う低気圧ないし低圧部を期間中頃にかけて東日本
の南海上に北上させているが、降水域の予想にはバラつきがある。期間の終わりに台湾付近に熱帯じょう乱を予想しているメン
バーは約6割。
・ スプレッド:昨日資料に比べて、3日目までは縮小、その後拡大し、6、7日目は0.5を越えここ数日中では大きな値。特定高度
線も、6、7日目の5880mのバラつきが大きく、日本付近の予想は安定していない。
・ 降水頻度分布:高降水頻度域は、1日が北海道で拡大。
・ 予想T850時系列:北日本は正偏差、東日本はやや負偏差、西日本と沖縄・奄美はほぼ平年値付近。
2.防災事項等
・ 期間のはじめ、北日本で大雨となる。
・ 期間の後半は北~西日本の広い範囲で大気の状態が不安定となり、短時間強雨や落雷のおそれがある。
・ 期間中頃にかけて西日本と沖縄・奄美を中心に、最高気温が高い傾向。熱中症などに注意。
3.明後日予報(3時40分発表の短期予報解説資料も参照)
・ 日本海からオホーツク海にかけて前線が停滞する。前線の影響のある北海道を除くと、日本付近は日本のはるか東の高気圧の張り
出しの圏内となる。
・ 天気は、北海道では広い範囲で雨となる。その他の地域は、おおむね晴れるが、午後は山沿いを中心に大気の状態が不安定となり、
にわか雨の降るところがある。
4.全般週間天気予報(案)
・ 北日本は、気圧の谷や湿った空気の影響で雲が広がりやすく期間の中頃まで雨の降る所があるが、その後は高気圧に覆われて晴れ
る所もある。
・ 東日本と西日本は、高気圧に覆われて晴れる日があるが、期間の後半は湿った空気や気圧の谷(上空の寒気)の影響で雲が広がり
雨の降る所もある。
・ 沖縄・奄美は、高気圧に覆われて概ね晴れるが、期間の終わりは湿った空気の影響で曇る日がある。
・ 最高気温・最低気温ともに、東日本は概ね平年並だが期間の終わりは平年より低い。その他の地方は平年並か平年より高い日が多
く、期間の中頃にかけて平年よりかなり高くなる所もある。
この資料は、気象事業者等が、気象庁の提供する週間天気予報の根拠を理解するための補助資料であり、そのままの
形で一般に提供することを想定して作成したものではありません。