3ヵ月間の非常事態を宣言したトルコ ~景気や国際収支への影響に要注意

楽読
(ラクヨミ)
2016年7月22日
Vol.
1,123
3ヵ月間の非常事態を宣言したトルコ
~景気や国際収支への影響に要注意~
トルコのエルドアン大統領は7月20日夜、前週末のクーデター未遂事件を受けて、全土に3ヵ月間の非常
事態を宣言しました。また、これと前後して、格付会社スタンダード&プアーズ(以下、S&P)は、クーデター未
遂事件の発生に伴なう政情不安の一段の高まりなどを理由に、同国の外貨建債務格付を「BB+」から1段階
引き下げ「BB」としたほか、見通しを「弱含み」として、さらなる格下げの可能性を示唆しました。これらを受け
てトルコ・リラが売られ、対米ドルで20日に一時、1ドル=3.09リラ前後と、過去最安値を更新しました。
非常事態宣言の目的は、テロ組織関係者を全て排除することとされています。エルドアン大統領と政府は、
米国に亡命中のイスラム教指導者ギュレン師が今回のクーデター未遂事件に関与したとして、同師の支持
者とみられる軍人や司法関係者、警官、公務員、教師など、既に約6万人を拘束ないし解任したほか、テレビ
やラジオ局の免許取り消しといった、メディアへの弾圧も行なっています。同大統領は、民主的な議会制度を
維持すると述べているものの、非常事態宣言が発効すると、大統領を議長とする閣議により、国会での審議
を経ずに、法律と同等の効力を持つ政令を出すことが可能となるなど、大統領権限が事実上、高まります。
このため、ギュレン師支持者層など、今回の事件に関与したとされる勢力に対する徹底した弾圧にとどまら
ず、政権の意に沿わない対抗勢力への幅広い弾圧も予想されます。そして、当局による対応が行き過ぎと
の見方が拡がるような場合などには、企業経営者や家計の心理にとどまらず、直接投資をはじめとする、海
外から同国への投資、観光などにも影響が及び、景気や国際収支の悪化につながる可能性も考えられます。
なお、今回、格下げを決めたS&Pは、従来からトルコを投資不適格級としていましたが、同国を投資適格級
と評価しているムーディーズも、7月18日に格付を引き下げる方向で見直すと発表しています。格下げの可
能性は既に市場で織り込みが進んでいるとみられるものの、実際に投資適格級の評価を失うこととなれば、
海外から同国への投資の足かせとなったり、同国からの海外資金引き揚げの一因となることも考えられます。
トルコ・リラの推移
55
(円)
(2015年1月1日~2016年7月21日)(リラ)
トルコの格付*の推移
(S&P/ムーディーズ)
2.2
リラ高
50
2.4
BBB+/Baa1
投
資
適 BBB/Baa2
格
(2000年~2016年**)
S&Pによる格付
ムーディーズによる格付
*外貨建長期債務格付
BBB-/Baa3
リラ安
BB+/Ba1
45
対円(左軸)
40
BB/Ba2
2.8
35
3.0
対米ドル(右軸)
30
15年1月
2.6
15年7月
投
資
不
適
格
BB-/Ba3
B+/B1
B/B2
B-/B3
** 2016年は7月21日時点、その他は年末時点
3.2
CCC
00年
04年
16年1月
16年7月
信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
08年
12年
16年
※上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。
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