PDFで読む - 日興アセットマネジメント

楽読
(ラクヨミ)
2016年12月21日
Vol.
1,172
憲法改正に動き出したトルコ
~地政学的リスクなどに注意が必要~
トルコの与党AKP(公正発展党)は12月10日、現在は象徴的な地位にとどまる大統領に行政権などを集
中させる憲法改正案を国会に提出しました。同案は、右派の野党MHP(民族主義者行動党)の党首から事
前に合意をとりつけたものであることから、2017年2月頃までには両党の支持により国会で5分の3以上の
賛成を獲得した上で、来春にも国民投票にかけられる可能性が高いとみられます。
憲法改正案では、首相職を廃止し、行政権を大統領に移行するほか、新設する副大統領や閣僚を大統領
が指名するとしています。また、現行憲法では、大統領は政治的中立を求められ、政党を離れる必要があり
ますが、改正案では政党に所属し続け、党の役職を兼務することも認められます。なお、改正案が成立する
場合、エルドアン氏には、最長で2029年まで大統領を続投する道が開けることになります。
通貨リラは、前首相の辞任(5月)やクーデター未遂事件の発生および非常事態宣言の発令(7月)、米利
上げ観測の高まり(夏場以降)、非常事態宣言の延長(10月)などを背景に下落基調となりました。さらに、
11月の米大統領選挙でのトランプ氏の勝利や米金利の上昇などを受け、対米ドルで急落しました(対円で
は、急激な円安・米ドル高のおかげで概ね底這い)。こうした事態を受け、トルコ中央銀行は11月下旬に利
上げに転じたものの、効果は限定的でした。なお、同中央銀行は、12月20日の金融政策委員会で金利の
据え置きを決定し、利上げを予想していた市場を驚かすこととなりました。
今後のリラの動向に影響を及ぼす要因として、米国の金融政策のほかに、国民投票での過半の支持の取
りつけに向けた政府・与党の動きが注目されます。7-9月期のGDPが2009年以来のマイナス成長となった
こともあり、経済・財政面で大衆迎合的な政策が見込まれ、それが経常赤字の拡大につながる可能性があ
ります。また、利下げ要請を強める場合などには、中央銀行の独立性に懸念が生じることも考えられます。
さらに、右派からの支持を固めることなどを狙い、少数民族クルド人に対する締め付けを強化するような場
合、地政学的リスクが一段と高まることも予想されるだけに、注意が必要です。
トルコのGDPおよび経常収支の推移
トルコ・リラの推移
55
(円)
(2015年1月1日~2016年12月20日) (リラ)
リラ高
50
2.2
9
(2013年1-3月期~2017年10-12月期予想)
15
GDP(前年同期比、左軸)
(%)
2.5 6
経常収支(対GDP比、右軸)
10
市場予想
リラ安
対米ドル(右軸)
45
2.8
3
5
40
3.1
0
(%)
0
3.4
-3
-5
対円(左軸)
35
30
15年1月
15年7月
3.7 -6
13年
14年
15年
16年1月
16年7月
信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
-10
16年
17年
※上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。
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