数学B補足ノート(試行版) 第9回

数学 B 補足ノート(試行版) 第 9 回
2016 年 7 月 6 日 (水)
担当: 田中 冬彦
以下の目標は, 簡潔さのため「∼できる」
「∼を覚える」
「∼について理解する」といった文言を
省略. 慣れを要するものもあり, 期末までに達成できればよい.
5.1
コーシーの積分公式 (続き)
目標
(a) コーシーの積分公式の意味; 公式を利用した計算 (済)
(b) グルサの公式の意味; 公式を利用した計算
(c) 正則と解析的の同値性; 実関数との違い
(d) 積分路変形原理と組み合わせた積分計算
(e) 一様収束する正則関数列の微分と積分
¶
コーシーの積分公式とグルサの公式
³
f (z): 領域 D 上で正則な複素関数
C: 領域 D 内部の区分的になめらかな単純閉曲線(反時計周り)
(i) a を C の内部の点とすると,
I
1
f (z)
dz = f (a).
2πi C z − a
(コーシーの積分公式)
a を C の外部の点とすると, 上の積分は 0(コーシーの積分定理).
(ii) ∀a ∈ D について, 中心を a とする開円板 Ua,r ⊆ D が存在して f のべき級数展開
が得られる. (したがって, f が正則 ⇒ f は解析的 (テーラー展開可能.))
f (z) =
∞
X
An (z − a)n , ∀z ∈ Ua,r ,
n=0
1
An :=
2πi
I
C
f (ζ)
dζ, n = 0, 1, . . . ,
(ζ − a)n+1
ただし, C は a を内部に含む D 内の区分的になめらかな単純閉曲線.
(iii) 開円板 Ua,r ⊆ D で f のべき級数表示を微分することにより f (n) (a) = n!An , n =
0, 1, . . . であるから, 以下の公式が成立 (グルサの公式).
f (n) (a)
1
=
n!
2πi
µ
I
C
f (ζ)
dζ, n = 0, 1, . . . .
(ζ − a)n+1
1
´
¶
複素関数列の極限
³
領域 D 上の正則な複素関数列 f1 , f2 , . . . が f に一様収束しているとする.
(i) f も D で正則,
(ii) 領域 D 内の任意の経路 C (L(C) < ∞) について
Z
Z ³
´
lim
fn dz =
lim fn dz
n→∞
C
C
n→∞
(iii) f 0 (z) = lim fn0 (z).
n→∞
(ii) は C 上で一様収束していれば成立する.
µ
5.2
´
コーシーの不等式
目標
(a) 整関数の定義, リウヴィルの定理の内容
(b) 代数学の基本定理の内容
(c) コーシーの不等式 (評価式) と二つの定理の順序関係 (何を使って何が示されるか)
¶
コーシーの不等式とその応用
³
複素関数 f が (無限遠点をのぞく) 複素平面全体で正則な時, 整関数という.
(i) 原点中心, 半径 R の開円板 U0,R 上で f (z) は正則, かつ有界 |f (z)| ≤ M , ∀z ∈ U0,R
M n!
とする. このとき, |f (n) (z)| ≤
, n = 1, 2, . . . が成立. (z = 0 の時, コー
(R − |z|)n
シーの不等式 (評価式) という.)
(ii) 有界な整関数は定数関数にかぎる. (リウヴィルの定理.)
(iii) f (z) が n 次多項式の時, 重複度をこめてちょうど n 個の根をもち, それを
α1 , . . . , αn とかけば, f (z) = c(z − α1 )(z − α2 ) · · · (z − αn ), c 6= 0 のように必
ずかける. (代数学の基本定理.)
µ
´
*5-3 節 平均値定理と最大値定理は時間の都合で省略予定.
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