改訂1追加分

 ど う ? 等 比 関 数列型の漸化式の解法の威力 が 十 分 に 分 か っ た だ ろ う ?
ン ? でも,もっと他の漸化式にも使えないのかって ? この解法パターン
は実は様々な漸化式の解法に利用できる。
た い しょう け い
そ れ で は , こ こ で も う 1 つ,対 称 形 の連立の 漸 化 式 の 解 法 に つ い て も
解説 し て お こ う 。
● 対称形の連立の漸化式にもチャレンジしてみよう !
連立方程式では,2 つの未知数 x と y を求めたように,連立の漸化式では,
2 つの数列 { a n } と { b n } の 関 係 式 に な っ て い る ん だ ね。 エ ッ ! 急 に ハ ー ド
ルが高くなって,難しそうだって !? 確かに,レベルは少し上がるけれど,
この解法も,等比関数列型の 漸 化 式 の 考 え 方 を 使 え ば,シンプルに解ける
ので,そんなに心配する必要はないよ。
たい しょう けい
それではここで,対 称 形 の連立の漸化式と極限の問題を,例題を使って,
具体 的 に 紹 介 し よ う。
188
2 つの数列 { a n } と { b n } が次の連立の漸化式で定義 さ れ る と き ,この 2 つの
bn
数列の一般項 a n と b n を求め,極限 ln i m an を求めてみよう。
→∞
a1 = 4,b1 = 2
{
a n + 1 = 4a n + 2b n ……①
b n + 1 = 2a n + 4b n ……② ( n = 1 ,2 ,3 ,… )
式
と
曲
線
・ n = 1 のとき,① より, a 2 = 4a 1 + 2b 1 = 16 + 4 = 20
4
2
② より, b 2 = 2a 1 + 4b 1 = 8 + 8 = 16
4
2
・ n = 2 のとき,① より, a 3 = 4a 2 + 2b 2 = 80 + 32 = 112
16
20
② より, b 3 = 2a 2 + 4b 2 = 40 + 64 = 104
16
20
……………………………………………………………………
講義
関
数
こ の よ う に, 連 立 の 漸 化 式 で も,順次, a 1 ,a 2 ,a 3 ,…, b 1 ,b 2 ,b 3 ,…の
値を求めていけるんだね。そして,この 連 立 の 漸 化 式の中でも, ①の a n の
係数と ②の b n の係数が 4 で等しく,かつ ①の b n の係数と ②の a n の係数が 2 で
等しい も の ,
{
右辺の 係数が,対角線上
に a n + 1 = pa n + qb n の形の
すなわ ち
p 同士, q 同士等しいも の
b n + 1 = qa n + pb n
4
4
4
4
ものを 特 に , 対 称 形 の 連立漸化式 というんだね。
そして,この対称形の連立 漸 化 式であれば,一般項を求めることは,
簡単な ん だ よ 。 す な わち, ① + ②と ① − ②を求め れ ば , す ぐ に 等 比 関 数 列
型の漸 化 式 に も ち 込 めるからなんだね。早速やっ て み よ う 。
① + ② よ り a n + 1 + b n + 1 = 6a n + 6b n
a n + 1 + b n + 1 = 6 ( a n + b n )
[ F ( n + 1 ) = 6 ・ F ( n )
]
① − ② よ り a n + 1 − b n + 1 = 2a n − 2b n
a n + 1 − b n + 1 = 2 ( a n − b n )
[ G ( n + 1 ) = 2 ・ G ( n )
]
1
2
3
4
複
素
数
平
面
F ( n ) = a n + b n と お く と, F ( n + 1 ) は
F(n) の n の 代 わ り に n + 1 を 代 入 し
た も の な の で F(n + 1) =an + 1 + bn + 1
となるんだね。
G ( n ) = a n − b n と お く と, G ( n + 1 ) は
G(n) の n の 代 わ り に n + 1 を 代 入 し
た も の な の で G(n + 1) =an + 1 − bn + 1
となるんだね。
189
講義
数
列
の
極
限
① + ② と ① − ② か ら, 2 つの等比関数列型
の漸 化 式 が 出 て き たので,後はアッという
{
間に解くことができるんだね。
{
a1 = 4,b1 = 2
a n + 1 = 4a n + 2b n …… ①
b n + 1 = 2a n + 4b n …… ②
a n + 1 + b n + 1 = 6 ( a n + b n)
[ F(n + 1) =6・F(n)
]
a n + 1 − b n + 1 = 2 ( a n − b n)
[ G(n + 1) =2・G(n)
2
4
{
アッと
]
n−1
an + bn =( a1 + b1 )・6
[ F(n) =
F(1)
・6
n−1
]
いう間 !
2
4
n−1
an − bn =( a1 − b1 )・2
[ G(n) =
G(1)
・2
n−1
]
よって, a 1 = 4 , b 1 = 2 を代入すると,
{
a n + b n = 6 ・ 6 n − 1 = 6 n ……③
a n − b n = 2 ・ 2 n − 1 = 2 n ……④
1
( ③ + ④ ) より, a n =
2
1
( ③ − ④ ) より, b n =
2
∴
1
( 6 n + 2 n)
2
1
( 6 n − 2 n ) ( n = 1 ,2 ,3 ,… )
2
となって,一般項 a n と b n が求まる。
よって,求める極限は,
1
( 6 n − 2 n)
6n − 2n
bn
2
lim
l
i
m
l
i
m
=
=
n →∞ an
n →∞
n →∞ 6 n + 2 n
1
( 6 n + 2 n)
2
1−
= lim
n →∞
1+
2n
6n
2n
6n
[
分子・分母を
6 n で割った = ln i→m
∞
=
∞−∞
の不定形
∞+∞
1−
( )
( 31 )
1
3
0
n
=
n
1+
0
190
]
1
=1 となる。
1
どう ? 初め難しく思えた対称形の連立の漸化式と極限の問題も,意外
とアッサリ解けて驚いたって !? そうだね,数学って体系立てて学習す
れば実 力 を 次 々 に 伸 ばしていくことも可能なんだ ね 。
では も う 1 題 , 例 題を解いておこう。
2 つの数 列 { a n } , { b n } が次のように定義されると き , 一 般 項 a n と b n を 求 め
て,極 限 ln i m a n と ln i m b n を求めてみよう。
→∞
{
→∞
2
a1 = ,b1 =
3
2
an+1 = an +
3
1
3
1
b …… ア
3 n
ア ,イ の 右 辺 の 係 数 が , 対 角 線 上 に 等 し
いので,これは対称 形 の 連 立 漸 化 式 だ 。
関
数
ア + イ より, a n + 1 + b n + 1 = 1 ・ a n + 1 ・ b n
∴ a n + 1 + b n + 1 = 1 ・ ( a n + b n ) [ F ( n + 1 ) = 1 ・ F ( n ) ]
1
1
a − b
3 n 3 n
アッと
1
1
∴ a n + 1 − b n + 1 = ( a n − b n ) G ( n + 1 ) = ・ G ( n )
3
3
より, a n + 1 − b n + 1 =
[
]
これか ら ,次 の よ う に 変形できる。
2
3
{
an + bn =( a1
b 1 ) ・ 1 n − 1 [ F ( n ) = F ( 1 ) ・ 1 n − 1 ]
2
3
an − bn =( a1
以上の 結 果 に a 1 =
{
1
3
+
1
3
−
b1 )・
いう間 !
( )
1
3
n−1
[
G ( n ) = G ( 1 )・
( ) ]
1
3
n−1
2
1
, b 1 = を代入すると,
3
3
a n + b n = 1 ・ 1 n − 1 = 1 ……………… ウ
an − bn =
ウ+エ
2
ウ−エ
2
( )
1
1
・
3
3
より,an =
より,bn =
( 31 ) ……
1
1
1 ( ) }
2{
3
1
1
1 ( ) }
2{
3
n−1
式
と
曲
線
講義
1
2
b n + 1 = a n + b n …… イ ( n = 1 ,2 ,3 ,… )
3
3
ア − イ
1
2
3
4
複
素
数
平
面
n
=
エ
となる。よ っ て ,
n
+
n
−
191
講義
数
列
の
極
限
∴一 般 項 a n =
{ ( 31 ) } , b
n
1
1+
2
n=
{ ( 13 ) } ( n
1
1−
2
n
= 1 ,2 ,3 ,… )
が求 ま っ た の で ,それぞれの極限を求めると
lim
a n = ln i m
n
→∞
→∞
{ ( 31 ) }
n
1
1+
2
=
1
1
・1 =
と な る し ,
2
2
=
1
1
・1 =
となって,答えだ ! 納得いった ?
2
2
0
{ ( 31 ) }
n
1
lim
b = ln i m
1−
n →∞ n
→∞ 2
0
ど う ? こ れ で, a n + 1 = p a n + q ( p ≠ 1 ,q ≠ 0 ) の 形 の 漸 化 式 か ら 一 般 項
a n を 求 め , そ の 極限を求める問題にも,また, 対 称 形 の 連 立 漸 化 式
{
a n + 1 = pa n + qb n
b n + 1 = qa n + pb n から一般項 a n と b n を求め, 極 限 を 求 め る 問 題 に も 自 信
がつ い た だ ろ う ?
ここで使われた F(n + 1) =r・F(n) から F(n)=F(1) ・r
n−1
へと変形する
考 え 方 は,実はもっとさまざまな漸化式を解く上でポイントとなる変形パ
タ ー ン な ん だ 。 だ か ら , こ れ ま で の 内 容 を マ ス タ ー で き た 人 は , 「 元気が
出る数学 III」や「 合格 ! 数学 III」( マセマ ) で勉強 し て , さ ら に 腕 に 磨 き を か
けていくといいよ。どんな漸化式でも解いて,その極限が求められるよう
にな る と , ス バ ラ シイからね。
の講義はすべて終了です。
以 上 で ,
「初めから始める数学 III P a r t 1 改訂 1 」
み ん な, 本 当 に よ く 頑 張 っ た ね。 で も, 本 格 的 な 数 学 III の テ ー マ で あ る
び ぶ ん
せきぶん
“微 分・積 分”は, Pa r t 2 の 講 義 で 扱 う か ら, ま だ ま だ 気 を 抜 か ず に 最 後
ま で , や り 抜 い て ほ し い。 も ち ろ ん, マ セ マ は , そ ん な 頑 張 る キ ミ 達 の 強
い味 方 だ か ら ね 。だから,次回は, P a r t 2 で会 お う な !
そ れ ま で , み ん な 元 気 で …。 ま た キ ミ 達 に 会 え る こ と を 楽 し み に し て る 。
さよ う な ら 。
け い
し
マセマ代表 馬場 敬之
192