景気循環研究所レポート 景気循環研究所の 金融政策展望(6/15・16、日銀決定会合) 2016 年 6 月 13 日 追加緩和の予想 日本銀行は、6 月 15-16 日の金融政策決定会合で、追加の金融緩和を決 定する可能性がある。物価の基調は、現実のインフレ率でみても、期待イ ンフレ率でみても、かなり大きく下振れしている。2%の物価安定目標の 対象となっている消費者物価指数(生鮮食品を除く総合=コア CPI)は、 2016 年 3 月に続き 4 月も前年比マイナス 0.3%と前年割れ状態にあり、コ ア CPI 上昇率の落ち込みを後追いする形で、期待インフレ率の動向を示す 様々な指標が下降に向かいつつある。 「物価の基調」は下向き 日銀は、昨年夏頃から「生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数= 日銀版コアコア CPI」を「物価の基調」として重視しているが、最近では、 その「物価の基調」にも暗雲が垂れ込め始めている。15 年 12 月に 1.3% となっていた日銀版コアコア CPI の前年比上昇率は、直近 4 月には同 0.9%まで鈍化した。しかも、日銀版コアコア CPI との連動性が認められ る、全国スーパーの POS システムによる集計値である日経 CPINow は直近 で急減速し、SRI 一橋大学消費者購買価格指数も 5 月に入り前年割れを記 録している。コア CPI で見ても、期待インフレ率で見ても、日銀版コアコ 嶋中 雄二 景気循環研究所長 ア CPI で見ても、「物価の基調」は下向きである。 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 次元を用いて、少なくとも 10 兆円規模の量的緩和を、国債(5 兆円)の シニアエコノミスト 宮嵜 浩 シニアエコノミスト 03-6627-5132 miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp 福田 圭亮 シニアエコノミスト 03-6627-5133 fukuda-keisuke@sc.mufg.jp 本レポートは、嶋中雄二の見方に 基づき、宮嵜・福田が執筆を担当 しています。 追加緩和の具体的な手段としては、量・質・金利のうち、量と質の 2 ほかに、地方債(2 兆円)、政府関係機関債(財投機関債など 0.5 兆円)、 ETF(1.5 兆円)、J-REIT(600 億円)その他金融資産の構成を増やす質的 拡充の下に行うべきである。 但し、マイナス金利の深堀りについては、無担保コール翌日物金利と 10 年債利回りがほぼ四半世紀ぶりに逆転し、金融機関の中で逆ザヤが発生し 続けている中で、着地点への明確な展望がないままに短期金利のマイナス 幅を拡大して長期金利のマイナス幅を一段と大きくすることは、金融緩和 の中で一部金融引き締めを実施するような政策となってしまい、現時点で は望ましくないと思われる。一部の海外投資家は、日銀のマイナス金利深 掘りに対してはドル売り・円買い、日本株売りを仕掛けて来る可能性を否 定できない。 「物価の基調」の低下に対して躊躇なく実施するべき追加金 融緩和は、マネタリー・アプローチを好む海外投資家の多くがより深く理 景気循環研究所 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティ 解し、過去に大きな成果を収めている 2 次元の量的・質的金融緩和が望ま しい。 (以 グランキューブ (16.6.13 1 みやざき 上) ひろし 嶋中 雄二・宮嵜 浩 ) 2016 年 6 月 13 日 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-8127 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循 環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。 2
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