イエレン議長の議会証言、細部に宿るもの

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北米
2016年6月22日
イエレン議長の議会証言、細部に宿るもの
イエレン議長の議会証言は、金融政策報告書の内容が楽観的であったことなどからタカ派(金融引き締めを選好す
る傾向)的だったという見方もありますが、イエレン議長の証言には利上げに慎重なトーンも見られました。
イエレン議長上院議会証言:インフレ率や労
働市場の見通しを微妙に修正
米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は2016年6月
21日、上院銀行委員会の公聴会で証言しました。イエレン議
長はフェデラルファンド(FF)金利の引き上げを慎重に進める
ことで、①成長ペース、②労働市場の改善、③インフレ率(当
局の目標である2%に向けての上昇を続ける)の3点を確認す
る間、景気に対する金融面での支援を適切に維持できると
述べています。また、イエレン議長は、金融政策当局は米経
済が改善の明確な兆しをいつ見せるかではなく、見せるかど
うかを注意して見守っていると述べ、1週間足らず前の米連
邦公開市場委員会(FOMC)に示した見通しを微妙に修正し
ました。
どこに注目すべきか:
経済成長率、労働市場、労働生産性
イエレン議長の議会証言は、質疑応答も無難で期待(?)さ
れたハプニング的な発言は聞かれませんでした。なお、イエ
レン議長の証言を支援するためFRBスタッフが用意する金
融政策報告書(MPR)の内容が楽観的であったためタカ派
(金融引き締めを選好する傾向)的な証言だったという見方
もありますが、イエレン議長の証言は利上げに慎重なトーン
も見られました。
まず、議会証言でも利上げの条件として上記の3点(成長率、
労働市場、インフレ率)の確認が必要という、最近のスピー
チと同様の内容が繰り返されています。
イエレン議長は景気回復の兆しとして、例えば4-6月期の
GDP(国内総生産)の改善を強調しています(図表1参照)。
軟調であった1-3月期GDPからの回復は想定されます。金
融政策報告書の内容を合わせれば楽観的な印象です。
ただし、イエレン議長の発言の中には、米国景気に対する
弱気の一面も見られます。例えば労働市場です。労働市場
情勢指数(LMCI)がマイナスとなったことに対し、労働市場
は、悪化はしていないものの改善ペースの勢いが失われた
ピクテ投信投資顧問株式会社
と述べるなど、労働市場に対する表現が弱まっていると見ら
れます(図表2参照)。LMCIは労働市場全体の動きを捉える
構成の指数であり、イエレン議長は反転を予想するとも付け
加えているものの、スタンスの変化が伺えます。
次に、労働生産性の低下についてやや踏み込んだ発言をし
ています。労働生産性低下の可能性に言及することで、潜在
成長率の長期停滞懸念を示唆したとも受け取れる内容です。
議会証言を受け、今後の米国の金融政策を占う上で、先の3
点を注視することが大切であることが確認されたと思います。
なお、これらの要因を考えると、7月利上げの可能性は極め
て低いと思われます。
図表1:アトランタ連銀による米GDP予想(GDPナウ)
(期間:2016年4月29日~2016年6月17日、前期比年率)
3.0
%
2.5
GDPナウ
2.0
※2016年4-6月期GDP予想
1.5
4月29日
5月13日
5月27日
6月10日
出所:アトランタ連銀のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
図表2:FRB労働市場情勢指数(LMCI)の推移
(月次、期間:2010年5月~2016年5月、前月比)
12 指数
9
6
3
0
-3
-6
10年5月
LMCI
12年5月
14年5月
16年5月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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