法学部 140 回講演会 平成 28 年 6 月 28 日 「ふるさと納税制度と地方自治」 小林 弘和(法学部) 多くの人々が全国各地の地方公共団体で生まれ、そこから教育や福祉医療といった多様 なサービスを受けて育ち、やがて進学や就職を機に生活の場を都会に移し、そこで納税を行 っています。その結果、都会の地方公共団体は税収を得ますが、自分が生まれ育った故郷の 地方公共団体には税収が入りません。そこで、「今は都会に住んでいても、自分を育んでく れたふるさとに、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではない か」 、そんな問題提起から始まり、数多くの議論や検討を経て生まれたのがふるさと納税制 度です。 しかし、このような制度開始時における趣旨も急速に変化し、毎年大きく拡大の一途をは かっている半面、現在では全く異なる趣旨や目的で利用されているというのが実態です。例 えば、ふるさと納税という寄附形式での地方公共団体間における財源の奪い合いや競争の 激化、同制度利用者による単なる返礼品の取得により実質的な税の「物品等による還付」を 目的とした寄附の急増、ふるさと納税を少しでも多く得る目的での地方公共団体による返 礼品の高額化や当該地域とはなじまない金券類の活用等々が、問題として議論されつつあ ります。 このため、今回の講演では、ふるさと納税制度の詳細を説明することよりも、むしろなぜ 本制度がこのように本来の趣旨とは異なる方向に向かいながらも利用が急増するのかとい う背景或いは理由について考察すると共に、それが日本の地方自治にいかなるインパクト を与えるのかに関して共に考えて行きたいと思います。
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