法学部 140 回講演会 平成 28 年 11 月 8 日 会社法とコンプライアンス ―大和銀行株主代表訴訟の教訓― 法学部教授 出口正義 「会社の望ましい経営のためには、経営者の行動をどのようにコントロールしてゆけばよ いか」という問題は、いわゆるコーポレート・ガバナンス(企業統治)論の課題である。 「会 社で働くすべての人たちが法令(定款等内規や業務マニュアル等も含む)に従って業務を行 うことをどのようにコントロールしてゆけばよいか」という問題は、いわゆるコンプライア ンス(法令遵守)論の課題である。 ガバナンスやコンプライアンスの問題は、いずれも営利組織である会社にかぎらず、非営 利団体、国や地方公共団体など、すべての団体・組織に共通する普遍的課題である。現在、 民間・国・地方公共団体等を問わず一定規模の団体・組織には必ずといってガバナンスやコ ンプライアンス体制を定める内規が整備されている。違法な経営や組織の運営は、今日、会 社や組織に対する信頼を著しく損なうだけでなく、多くの人々や社会に回復し難い甚大な 被害を与えるおそれがある。 本講演では、とりわけ 2000 年以降日本で重視されるようになった会社におけるコンプラ イアンスの問題に焦点を当て、その背景・契機となった裁判例(大和銀行株主代表訴訟事件) を紹介しつつ、コンプライアンスが会社のリスク・マネージメント(リスク管理)のうえでい かに重要であるかを、わかりやすく講義する。
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