法学部 140 回講演会 2016 年 10 月 18 日 共謀共同正犯と幇助犯との

法学部 140 回講演会
2016 年 10 月 18 日
共謀共同正犯と幇助犯との区別
法学部教授 森住信人
わが国の刑法は、60 条に「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と規定
し、共同正犯を処罰している。共犯形態としては、共同正犯の他に 61 条に教唆犯、62 条に幇助犯
がある。
ところで、判例は、大審院時代から実行行為に加わらない共犯者であっても、いわゆる「共
謀」を認定できる場合に、共謀共同正犯として 60 条を適用して処罰してきた。従来の学説は、判
例の共謀共同正犯の理論に否定的な立場であったのであるが、近年では判例を単に否定すること
を無意味であるとして、共謀共同正犯を肯定した上で、共謀共同正犯と教唆・幇助との区別基準
を模索する方向へと議論が移行している。現在では、むしろ共謀共同正犯を認めない見解の方が
少数である。
本講義では、判例における共謀共同正犯の理論を概観しつつ、共謀共同正犯と幇助犯との区別
がどのような理論・基準に基づいているのかに焦点を当てて考察を試みる。その上で、学説に主
張される共謀共同正犯と幇助犯との区別基準が有用かどうか、判例の基準とどういった点に相違
があるのかについても言及できればと考えている。