平成 28 年熊本地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げま すとともに、被災地の一日も早い復旧・復興を祈念いたします。 景気循環研究所 鹿野達史の日本経済の視点 2016 年 5 月 31 日 消費税率の引き上げ方針の変更が経済に与える影響 ●増税延期で、17年度の成長ペース加速の素地が整う。 駆け込み需要があ 17 年 4 月に予定されている消費税率の 2%引き上げについて、安倍総理 らわれず、反動減、 大臣が 19 年 10 月まで延期することを決断し、政府・与党幹部が総理の決 増税効果も出ない 断を受け入れる方向となったと報じられている。 ことに。 17 年 4 月の消費税率引き上げの見送りの影響については、4 月 14 日の 本欄(「鹿野達史の日本経済の視点」16 年 4 月 14 日号:消費増税見送りの 16 年度の成長率は 経済への影響)で示した通り、予定通り実施された場合に比べ、16 年度の 0.3%低下、17 年度 実質GDP成長率が 0.3%ポイント押し下げられ、17 年度については、 は 0.8%上昇。 0.8%ポイント押し上げられることになる(表 1)。税率引き上げの延期で 駆け込み需要があらわれない一方、その後の反動減や消費増税効果も出な いためである。 また、政府・与党は、新たな経済対策を盛り込んだ 16 年度第 2 次補正 嶋中 雄二 景気循環研究所長 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 シニアエコノミスト 03-6627-5131 shikano-tatsushi1@ sc.mufg.jp 宮嵜 予算の編成に向けた動きもみせている。補正予算の規模は、5~10 兆円と なるとみられているが、仮に、家計の負担軽減策などを含め、10 兆円規 模とすると、補正予算の執行で、16、17 年度の成長率が、それぞれ 0.3% ポイント押し上げられ、16 年度については、駆け込み需要の消失分が相 殺される可能性がある(表 1)。 表 1. 消費税率引き上げ見送り、経済対策発動の経済効果 (%ポイント) 実質GDP成長率へ影響 浩 16年度 17年度 消費税率引き上げ見送り:17年4月 (2%引き上げケースとの比較) ▲ 0.3 0.8 経済対策の発動 : 10兆円規模 0.3 0.3 0.1 1.1 シニアエコノミスト 03-6627-5132 miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp 福田 圭亮 シニアエコノミスト 03-6627-5133 (16年度補正予算 秋の臨時国会で成立) fukuda-keisuke@sc.mufg.jp 景気循環研究所 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ 消費税率引き上げ見送り +経済対策10兆円 (2%引き上げケースとの比較) (注)経済対策は、子育て支援、家計負担の軽減、住宅購入の支援、公共投資の増額(それぞれ4兆円、 3兆円、3兆円)を想定。 (資料)三菱UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 1 2016 年 5 月 31 日 増税延期、補正予 17 年 4 月の消費税率引き上げを想定し、年度ベースでは、17 年度に成 算の執行で、成長 長ペースが大幅に鈍化するとの見方が多い。ただ、下振れリスクは残るも ペース加速の素 のの、中国経済が底入れしつつあるなど、世界経済に持ち直しの兆しがみ 地。 えている。こうした中、消費税率引き上げの延期、16 年度第 2 次補正予 算の編成・執行となれば、17 年度に成長ペースが高まっていく素地が整 ってくるといえよう。 ●19年10月の税率引き上げで、19年度下期の前期比成長率は1.1%低下。 一方、19 年 10 月に消費税率を 10%へ引き上げるとすると、18 年度下 18 年度下期から 19 年度上期に駆け込 期から 19 年度上期にかけて、駆け込み需要の発生が見込まれる。14 年 4 み需要が発生。 月の税率引き上げ時の動きをもとに、軽減税率の適用を伴う 2%の税率引 き上げの影響を推計すると、年度半期ベースでは、実質GDPは 18 年度 19 年度上期は、反 下期に 0.2%押し上げられ、19 年度上期についても、成長率が前期比ベー 動減と増税効果 スで 0.2%ポイント高まることになる(図 1・下段)。 で、前期比成長率 を 1.1%押し下げ。 19 年度下期には、駆け込み需要の反動減と増税効果で、前期比成長率 は 1.1%ポイント低下し(同)、年率換算では 2%以上押し下げられる。反 動減が 19 年度下期中で一巡するとすると、「反動の反動」で 20 年度上期 年度ベースでは、 には、成長率は 0.6%ポイント押し上げられ、同下期には、影響が一巡し、 19 年度の成長率は 成長率に与える影響がゼロとなる(同)。 0.3%低下。 また、年度ベースの成長率に与える影響は、18 年度がプラス 0.1%ポイ ント、19 年度はマイナス 0.3%ポイントとなる(図 2・下段)。20 年度に ついては、増税の押し下げ効果が続くものの、駆け込み需要の「反動の反 動」による押し上げ効果が相殺し、成長率に与える影響はゼロとなる(同)。 図 1. 消費税率引き上げの経済効果(年度半期) (%) (19 年 10 月に 2%引き上げ・軽減税率の適用を想定) 図 2.消費税率引き上げの経済効果(年度) (%ポイント) (%) 0.6 0.4 0.4 0.2 0.2 実質GDP(水準)に 与える影響(左目盛) 0.0 0.0 -0.2 -0.2 駆け込みと その反動 -0.4 -0.2 -0.6 -0.7 0.6 -0.8 0.2 増税効果 0.2 -1.0 0.0 0.0 -1.2 -1.4 (19 年 10 月に 2%引き上げ・軽減税率の適用を想定) 実質成長率(前期比)に 与える影響(右目盛) -1.1 -1.6 18年度 上期 下期 19年度 上期 下期 20年度 上期 3.3 3.0 2.7 2.4 2.1 1.8 1.5 1.2 0.9 0.6 0.3 0.0 -0.3 -0.6 -0.9 -1.2 下期 0.1 (%ポイント) 0.1 0.5 実質GDP(水準)に 与える影響(左目盛) 0.4 0.0 -0.1 -0.2 0.3 駆け込みと その反動 増税効果 0.2 -0.2 0.1 0.1 -0.2 0.0 -0.3 -0.4 -0.5 -0.1 実質成長率(前年度比) に与える影響(右目盛) -0.2 -0.3 -0.6 -0.3 18年度 19年度 20年度 (資料)三菱UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 (以 (資料)三菱UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 (16.5.31 上) 鹿野 達史) 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様ご自身でご 判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 0.0 2016 年 5 月 31 日 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-8127 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循 環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様ご自身でご 判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3
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