Title 日本私有鉄道史研究 - 都市交通の発展とその構造

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日本私有鉄道史研究 - 都市交通の発展とその構造(
Abstract_要旨 )
中西, 健一
Kyoto University (京都大学)
1967-01-23
http://hdl.handle.net/2433/212069
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
15
【
氏
学 位 の 種 類
中
西
健
なか
にし
けん
経 済
学 博
経
】
いち
士
第 1
3号
学 位 記 番 号
論
博
学位授与の 目付
昭 和 42 年 1 月 2
3日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文題 目
日本 私 有 鉄 道 史 研究
一都市交通 の発展 とその構造-(主 査)
論 文調査委員
教 授 島
論
恭 彦
文
教 授 大 野 英 二
内
容
の
要
教 授 堀 江 英 一
旨
本 論文 は, 第一部幹線交通手段 と しての私有鉄道, 第二部都市交通手段 と しての私有鉄道の研究 とか ら
な る。 前者 は鉄道国有化 (明治39年 ) 以前の私有鉄道の研究で あ り, 後者 は国有化以後の私有鉄道の研究
で ある
。
第- 部では, 基幹線の重要部門をすでに掌握 していた国有鉄道 とな らんで, い くつかの幹線鉄道を支配
し, 私有鉄道業界で大 きな比重を しめる特権的私鉄資本 と, 地方的な市場 と小鉄道 に依存す る多数の中小
私鉄資本 との対抗関係がまず叙述 され る 恐慌 ごとに主張 され る 「鉄道国有論」 は, 後者の地方的, 地主
。
的投機的私鉄資本を背景 とす る もので あ り, 三井, 三 菱 財 閥 とむす びつ きを もつよ うな特権的私鉄資本
は, 鉄道の民有民営論で一貫 していた。 そ うい う私鉄資本をふ くむ 日本の財閥資本が一転 して, 鉄道国有
化 に転 じた ところに, 日本の鉄道国有化の経済的必然性を見 出 し, それ は主要産業部門に独 占的地位を確
立 し, 梅外市場- と進 出 してい った, かつての特権的政商資本の変質 と転進 その ものに関係す ることを論
証 しよ うと したのが, 第一部の主要な論 旨で ある。
第二部 は, 鉄道国有化 によ って解放 された私鉄資本が, 国有 と公有 の鉄道の双方 か らはさまれて, 狭わ
い化 した都市交通の部門- と進 出す る経路を分析す る。 私鉄資本は, 国有 , 公有 および私鉄相互間のはげ
高速電気鉄道 とい ういわゆ る都市交通近
しい競争関係のLFlで , 市内路面電気鉄道一郊外電気鉄道- 大都 市一
代化の三段階を歩む。 そ して それぞれの段階 における交通競争 は, 昭和0) 恐慌期, 自動車交通の発達 によ
って, ついに]B J封こ達す る。 私鉄資本 は, 乗合 自動車, タクシー, 電力供給 , 土地住宅経営 , 百貨店経営
などの兼営部門を多角化 し, コンツェル ン化す る動 きをあ らわす。 あたか もその時期 につづ く戦時の交通
統制 は, 都市交通 と地方的軌道部門での集中独 占を- そ う促進す ることとな った。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文 は, 私有鉄道 に関す る最初のまた唯一の体系的な研究で あ り, またわが国では全 く未開拓の分野
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0-
で あ った大正期 , 昭和期を もふ くむ私有鉄道の通史的研究である。
これまでわが国の私有鉄道の研究 といえば, 国有鉄道の問題を中心 と した附ずい的研究で あることが多
か った。 本論文の第一部は, 鉄道国有化までの私有鉄道の発展 に焦点をおいた もので あるが, そのためか
え って鉄道国有化へ と発展す る資本の動向が明瞭 にえが き出され , 鉄道国有化の r経済的必然性」 な る も
の も, これまで にな く明確 にと らえ られている。
第二部 は, 第一部 に くらべて理論的な一貫性を欠 き, 交通論的な視点 , 経営史的な視点 , また都市間題
的視点が入 り乱れて, 相 当混乱を きた している点がみ られ る。
しか しこの第二部 については, すでに指摘
したよ うに, これまで全 く未開拓で あ った大正期 , 昭和期の, 都市交通 に関す る資料 , 交通競争や交通独
占に関す る資料 を提供 している点か ら, かな り評価 されてよい もの と考 える。
以上の諸点か らみて, 本論文 は経済学博士 の学位論文 と して, 価値 ある もの と認め られ る。
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