Title 近世封建制の土地構造( Abstract_要旨 )

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近世封建制の土地構造( Abstract_要旨 )
竹安, 繁治
Kyoto University (京都大学)
1967-03-23
http://hdl.handle.net/2433/212144
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
じ士
学
用博
吋済
竹
たけ
治
繁
安
氏)
【1
7】
学 位 の 種 類
経
学 位 記 番 号
論
学位授与の 目付
昭 和 42 年 3 月 23 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文題 目
近世 封 建 制 の土 地 構 造
論 文調査委員
教 授 堀 江 保 蔵
(主
経
博
第 1
5号
査)
論
文
内
教 授 堀 江 英 一
容
の
要
教 授 山 岡 亮 一
旨
本論文 は, 江戸時代 , 領主的土地制度の固定化の下 に, 農民的土地制度がいかに して形成 され展開 した
かを考察 し, それ は, 結局, 土地制度 における名 目と実態 との帝離を示 し, また, 封建的土地所有の解体
と, 事実上の農民的土地所有の進行を意味す ることを論証 した ものである
。
いわゆる領主的土地制度 とは, 検地 に基づいて記載 された公式帳簿上の田積 と石高を基準 に して, 責租
を徴収す る制度の ことで あ り, 農民的土地所有 とは, 農民 自身が丈量 して得た田積 と実際の収穫高を基準
に して, 田畑の売買 ・ 質入な どをな し, また小作関係 を結ぶ ことで ある。 一言 に していえば, 前者 は名 目
的で あ り, 後者 は現実的で ある。 両者の あいだに差違 が現われた最初 は, 近世初頭 に行なわれた検地 にお
いて, 純延びな どの手心が加 え られた ことにあるが, 検地が行なわれな くな った延宝年間以後, 隠 し田の
増加 , 地 目の変換 , 用水路の開聖, 作物の転換, 耕作技術の進歩など, 要す るに土地生産力の向上 によ っ
て , その差違 は しだいに拡大 した。
この差違の進行状態を具体的 に知 る手掛 りと して, 著者が着 目 したのは, 本畝 (検地帳上の反別) ・ 分
米 (各 田畑の石高 ) に対す る有畝 (実反別) ・ 宛米 (貢租分を含む小作料 ) である。 後者 の前者 に対す る
関係 を, 領主的土地制度 に対 して農民的土地所有を最 も端的に示す もの と して捉 えた著者 は, まず第 1 章
において, 有 畝 ・ 宛米の実現過程 と, それを黙過せ ざるを得なか った幕府の土地政策を概観 し, 時代的傾
向を展望す る。 第 2 葦以下第 8 章 まで, この展望の下 に, 河内国の諸郡 ・ 諸村の豊富な現存史料を駆使 し
て , それ に客観的解釈を加え, もって きわめて詳細な記述を行な っている。
すなわ ち, 第 2葦で は, 慶長検地 についての, 当時 および江戸時代 中期の, たがいに異 る評価か ら出発
して , 領主的土地制度の成立 とその固定化を論 じ, 第 3葦では, 検地 に際 して既 に存 した有畝が, 田価の
売買 ・ 質入 ・ 小作な どの過程を通 じて, 有力農民 に対 してだけでな く, 一般農民 に対 して も, 黙認せ られ
るに至 った こと, すなわ ち農 民的土地制度が形威 されてい った ことを述べ, 第 4葦では, その展開過程
を, 有畝 ・ 宛米を もって, 農民が土地生産力把握の実質的基準 と した こと, さ らにそれが, 土地売買の公
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的な証文 にまで記載 され るに至 った ことなどによ って, 明 らかに している。 第 5童 では, 農民的土地制度
における耕地形態を問題 と し, 主 と して棉作農村を例 にと り, 近世前期 ・ 中期 ・ 後期 の時期別 に農家経営
を分析 して, 有 畝 ・ 宛米 と本畝 ・ 分米 との差 に基づ く得分差 (収益差) を, 詳細 に算 出 している。 進んで
第 6葦では, 農民的地価の形成機構が取上 げ られて いるが, これ は, 地価決定の主要 因 と して, 領主的収
奪の大小 はその意義を失 い, 代 って土地生産力の大小 が登場 して きた ことを, 相対売買 ・ 入札売買 ・ 質流
な どの場合 について論証 した もので ある。 田地支配の慣行 (出作地 における高名前預 か り制度) を論 じた
第 7 章 とともに, 農民的土地制度の進展を示す有力な論述 とすべ きで あろう。 第 8 葺 では, 以上のよ うに
展開 した農民的土地制度 も, 訴訟などでは公然 と表 に出せず, しぜんそ こに一定の限界 があ った ことを述
べ,. しか しなが ら, 公法的な手続 きによるほかに, いわゆ る不時証文 による土地の売買 ・ 集積 は依然進行
して居 り, こうして明治の地租改正- の道が開かれていた とす る。 展望- 地租改正- の道 と題す る第 9章
は, 本論文の結論 に当る。 すなわ ち, 地租改正 は, 封建的土地所有の解体 と農民的土地所有の進展 との認
識 に立 ち, 名実の帝離 に基づ く土地制度および租税制度の素乱を是正す ることを主眼 と して行なわれた も
ので, これ によ って , 一方では, 面積差 ・ 斗代 (収穫率) 差の検 出が行なわれたけれ ど も, 他方では, 農
民的土地制度が法認せ られ, 近代的土地構造の基底 に組み こまれてい ったと結んでいる。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
1. 本論文 は, 有畝を主題 と した唯一 の研究書で ある。 近世の経済 ・ 財政の基礎 である田畑の面積 が,
名実相伴 って いない事実 は, かねてか ら周知の ところであるが, その差違の大 きさについて, 地方 帳簿や
私文書などによ って実証的 に研究 され るよ うにな ったのは, 近年 の ことで ある。 本論文の著者 は, この問
題 に全面的に取組み, 全 国的な傾 向を主 と して政策 面か ら研究 し (著書 「近世土地政策の研究」) , 然 るの
ち, 河 内諸村を対象 と して本論文を作製 した。 時代的 には江戸時代全期を蔽 うてお り, また土地をめ ぐる
主要事項 が主題 に沿 うて忠実 に体系化 されている。
2.史料を博捜 しかつ駆使 している。 本論文の基礎 とな っている文書 ・ 記録 はほとん どすべて旧家の所
蔵 にかかるもので あるが, 著者 はこれ らを探 し索 め, その集積 は蒐大な量 に上 る。 著者 の古文書読解力 も
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0に上 る数表を作製 ・ 掲 出 している点 に も, 本
さることなが ら, 数字 について も一 々検討 して整理 し,1
論文の細密 さが うかがわれ る。
3.論証方法が堅実で ある。 農民的土地制度の進行 について, 学界では, 理論的研究 ・ 法制史的研究 も
な されているが, 本論文 は, 田畑の売買 ・ 質入れ ・ 小作 ・ 支配な ど, 所有者や耕作者の移動の現実 に即 し
た, 経済学的な研究で あ り, しぜん, もっとも実証的で あ って, 疑念を挿む余地の少ない堅実 さを示 して
いる。 したが って, 本論文 は- 河内国を対象 と した ものではあるが, その結論 は全 国に及 ぼ しうべ く, 少
な くと も地域別比較研究の重要な指標 とな るで あろ う。
4.もっと も, 本論文 は必ず しも完壁ではない。 土地 の生産力の向上を云為す るには, 有 畝のほかに,
耕作技術や経営方法 について, もっと深 い考察を必要 とす るで あろう。 明治の地租改正 において, 面積差
・ 斗代差がすべて検 出されたよ うに書かれてい る点 に も疑問がある。 また, 自営農 ・ 小作農 の経営 につい
て直接 には触れ られていない。 もっとも, 最後の点は, 史料 の残存状態か ら見て, 止むをえないことで あ
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る し, と くに小作人の経営は, よ うや く史料をえて, 著者が別に発表 しているところである。
5.以上要す るに, 本論文は, 封建制度の解体過程を土地制度な る経済的側面か ら明確 に把握 した もの
で あって, 著者 に経済学博士の学位を授与す るに値 いす るものであると信 じる
。
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