Title Author(s) Citation Issue Date URL クライエント中心療法の臨床的適用( Abstract_要旨 ) 村山, 正治 Kyoto University (京都大学) 1969-05-23 http://hdl.handle.net/2433/213133 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University u( 引i] 氏) 村 むら 山 正 やま しよ う 治 じ 博 士 学 位 の 種 類 教 学 位 記 番 号 論 教 博 第 学位授与の 日付 昭 和 44 年 5 月 23 日 学位 授与の要件 学 位 規 則 第 5 粂 第 2 項 該 当 学位 論文題 目 クライエ ン ト中心療法の臨床的適用 論文 調 査 委員 教 授 倉 石 精 一 (主 育 学 8 号 査) 論 文 内 教 授 下 程 勇 吉 容 の 要 教 授 佐 藤 幸 治 旨 本論文 は教育臨床 の中核的問題の一つで あるパー スナ リテ ィの成長 の促進 につ いて, クライエ ント中心 療法の枠組 に立 って攻究 した ものであ り, 内容 は 4部 9茸 か らな り, 過去 6年間の著者 の臨床 的実践 と研 究 をまとめた もので ある。 第 Ⅰ部 は, 理論的展望で あ り,心理療法 とい う未発達 な段階にある科学の一分野 に対す る,C. Ro ge r sの 研究法の特徴を吟味 して, 次 の諸点 に要約 して いる。 1) 臨床経験 に もとづ いて 自分 の理論を展開 し, ま )理論 は事実を説 明す るための仮説で あ り, ドグマと して信仰 され るべ きで たそれを修正 して きた こと,2 ) 理論的構成概念 は検証 され うる仮説 と して記述 され るべ きこと,4) 科学的活動 は 自分 の興 ないこと,3 味のある領域 で どんな レベルか らで も追求す ることがで きる し, 科学的に問題を展開す ることも可能 で あ ) 科学を客観性を得 るための固定 した方法 もしくは体系 と して と らえ るのではな く, 探究 の論理 ること,5 と して位置づ けていること,6 )科学的活動を行 な うのは研究者 の もつ意味- の欲求を充足す るためで ある と し, それ には科学者 の情緒的安定感を必要 とす ること。 第 Ⅱ部 は臨床 的適用 と治療結果 と題 され, 3個の異 な る測定法 によ り, 治療初期 におけるク ライエ ン ト の特徴 と治療結果 との関連を調べた もので ある。 その- は著者 自らの考案 にな る 4段階のス ケ ー ル で, 1 ) 問題 に対 す る責任を経験 して いる程度 ,2)問題解決 につ いての治療者への依存度 ,3 ) 変化 しよ うとす 9 5 9 -6 0 年 に京都大学心理教 る意欲の程度等を評定 し, それ と治療成績 との関係を明 らか に した。 対象 は1 2事例であったが, 初 回面接時に 自分 の心理状態 に問題を感 じ, 不安 に悩 まされて い 育相談室 に来談 した1 るか, あるいは 自分 の中の明瞭に二価値的な葛藤を感 じて いるよ うな クライニ ントは治療 によ り自己知覚 が新 しくな り, 行動の改善 が認め られ るが, 自分の問題を他人事 のよ うに感 じ, あるいは表現 して いるク ライエ ントや,治療者 の権威 に依存す る傾 向のつ よいクライエ ントは, 治療が長期 にわたって も, 洞察 が知 的 レベルに とどま り, 行動 の改善 も乏 しく, あるいは全 く治療効果 が見 られなか った。 その二 は, Ki r t ne r のスケ- ルを用 いて別個 の クライエ ントの成功例 1 0 例 と失敗例 1 0例 について, 同 じ手続 によって検討 した - 31- ものであるが, その結果は- と同様であった。 その三 は, 以上の結果をさらに Ro ge r sのプロセススケルを用いて検討 した ものであるが, 以上 3研究 の結果か ら, 従来 の クライエ ント中心療法では, 治療 しに くい事例があることを認め, その特徴を明 らか に した。 第Ⅱ部は, 母親及び児童への適応 と超 され, 母親のカウ ンセ リングの治療経過 に関す る評定結果 と, 輿 型的な治療経過 を示 した母 と児童各一例の事例研究を行なっている. 従来, 問題児童 の母親 は, 子供の治 療 のために来所 したという意識が勝ち, カウ ンセ リングを行 なって も治療関係を深め ることが困難な場合 4 があった. そ こで母親 との面接 の特質 を明 らか にす るために, 7項 目 7点法の評定 スケ- ルを考案 し,2 人の問題児の母親 について 5人 のカウ ンセ ラーが評定 したO 母親 のカウ ンセ リングが成功す る場合は, 千 供が治療を うけている時間とい うよ り自分 自身 が新 しい経験をす る場であると意識 し, 子供の問題が 自分 の態度に関係 あるものと気付 き, 単なる報告 の態度か ら自身の卒直な感情を表現す るような態度 に変化す ることが指摘 された。 なお子供 の治療成果 と母親のカウンセ リングの成果 との問に密接な相互関係がある ことが, あ らためて確認 された。 第Ⅳ部 は学校恐怖症への適用で ある。 従来 の本症 に関す る研究分野の中で, 未開拓 な治療法に重点 をお き, 著者が担 当 した1 3事例について, 観察を行 ない, 治療過程, 治療関係, 治療方法 について臨床的記述 を行 な っている。 これを要約す ると 1) 治療 の発展過程は, 治療者 との関係を持 とうと しない段階か ら, 積極的な関係の中で明確な 自己表現を行な う段 階まで 5段階を設定す ることが可能で あること。 2 ) 治療 の進行 に伴な う行動変化は コミニ ュケー シ ョンの改善, 身体症状 の訴え強迫行動の消失ない しは軽減, 自 己表現の増大, 自主的行動の増大等である。3) 自己受容が登校への一つのきめ手 になること,4) 中学生 年齢 における登校拒否者 の治療の困難は認め られ るが, 訪問面接等 によ り治療関係 を もつ ことが可能であ ることで あること等であった。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 C.Ro ge r s の提唱 した クライエ ント中心療法は, 我国に導入 されて以来臨床実践面に 多大の影響 をあ たえたが, その反面 この療法の適用に関す る諸 問題を, 確実な資料 に もとづいた研究 は比較的少ない。 本 論文は, 過去 6年 にわたる京都大学心理教育相談室及び京都市 カウ ンセ リングセ ンターにおける臨床事例 ge r sの研究法を用いて, これを究 明 した もので ある。 を対象 と して, Ro まず第 I l部 においてほ, 初回面接時のクライエ ントを, 自ら考案 した評定 スケールで評定 した結果 と, r t ne rのスケールを用いて行 なった評定や, Ro ge r sのプロセス 治療成績 との関係を調べ, それを更 に Ki スケールによる評定 と照合 しなが ら, この治療法 による治療可能性 の見当付けを論 じている. この所見 は, 絶対的意義は もたぬにせよ, この治療法の適用限界に関 して, おおまかなが ら一面か らの見通 しをあたえ るものといえる。 第Ⅱ部において, 問題児の母親 に関 し, プロセススケールを考案 したのは, は じめての試みで あり, 創 意的である。 従来 問題児 とその母親 については, 種 々の角度か ら攻究 され, 母親のカウンセ リングの必要 が強調 されているのであるが, 児童の附添 いと して来談 している母親達 との面接が, 親 に対 して治療的機 能 を発捧す るプロセスであることについて組織 的に検討 したのは新 しい着想で ある。 - 32 - 第Ⅳ部における学校恐怖症への適用は, 級密な考察 によ り, 従来 の研究に見 られなか った知見を提供 し ている。 学校恐怖症 に関す る研究 の多 くは, 原 因論的ない しは症状論的研究 にかたよ.り, 治療論的研究 に 乏 しいので あるが, 本研究 は治療過程を通 じて本症児を考察 してい るのが特色である。 本症児の治療過程 が五つの段階に区別 され うること, 治療の結果 と しての本症児の行動の変化, 及び治療過程か らみた学校 恐怖症の本質 を明 らかに した ことは, 今後 の教育臨床 に貢献するところが大 きい ものと思われ る。 よって, 本論文は教育学博士の学位論文 と して価値 あるものと認める。 -3 3-
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