Title プラトンの国家論の研究( Abstract_要旨 ) Author(s) 今井, 直重

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プラトンの国家論の研究( Abstract_要旨 )
今井, 直重
Kyoto University (京都大学)
1968-01-23
http://hdl.handle.net/2433/212412
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
重
直
【 5】
井
い
学 位 の 種 類
文
学
学 位 記 番 号
論
学位授与の 日付
昭 和 4
3年 1 月 23 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第
学位論文題 目
プ ラ トンの 国 家 論 の 研 究
論 文 調 査 委員
教 授 野 田 文 夫
納博
(主
文
川士
今
いま
氏
博
2
8号
第
5条 第 2項 該 当
査)
論
文
内
教 授 松 平 千 秋
容
の
要
教 授 井 上 智 勇
旨
本論文 は前後両篇 に分かたれ, 前篇 はプ ラ トンの国家論を, 後篇 はプ ラ トン哲学一般を論ず るが, 全体
の題名の示すよ うに重点 は前篇 にあ り,後篇 は前篇の所論の裏付 けとして加え られたものとみ とめ られ る。
前篇 「プ ラ トンの国家論」 の本論は 8章よ り成 り, 前半 5章 において主 としてプ ラ ト ン の 「国家篇」
を, 後半 3章 において主 として 「法律篇」 を検討す る。
著者 はまず 「国家篇」 その他 によ り, 一般 にイデアによる現実形成がプ ラ トン哲学の中心課題であ り,
就中国家の形成 がかれの最大の関心事であったこと, 国家の形成 は人間の魂 の形成 と平行す ること, 形成
の導 きとなるのは善 のイデアであって, 従 って国政の頂点 には哲学者 の知恵がな くてはな らぬ こと, を論
ず る。
ついでプ ラ トン自身, そのよ うな 「知恵 による政治」 の実現 し難 いことを, シシ リー畠での政治的経験
によ って知 り, 次善 の策 として 「法律 による政治」 を考えるにいた った ことがのべ られ る。 「法律」 は一般
者 を もって多 くの個別者 を律す るものであって, 「知恵」 のよ うに個別者を個別的に十全に扱い うるので
はないけれ ども, 支配者 の悠意による政治を防止できるのである. か くて著者 は 「法律篇」 の内容の検討
に うつ り, 法律の本質 についてのプ ラ トンの見解 と, かれの考案 した法律案 とを, 詳細綿密 に考察 してい
る。
後篇 はプ ラ トンのイデア論全体を考え, イデア ・ 世界形成者 ・ 魂 ・ 知識等について論 じている。
論 文 審 査 の 結 果 の 要
旨
プ ラ トンの国家論の研究 は, 本論文のよ うに 「国家篇」 よ り 「法律篇」 への推移に着眼す るとい う見地
か らも, すでに多 く試み られてお り, 本論文の著者は, 多 くの点 において通説 に従い, 穏健中正な解釈 を
採 っている, とみ とめ られ る。 しか し著者 の解釈の特色は明瞭に示 されている. 節- に, 著者 の考えによ
ればプ ラ トンの哲学 はイデアによる現実 「形成」 とい うことを中心 としてお り, これは, 例えば, 自然約
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「生成」 を中心 とす るア リス トテ レス哲学 と著 しく異 なる点である。 著者 の この考 えはす ぐれた着眼を示
す といわねばな らない。 第二 に, 著者 は 「国家篇」 中の諸問題 を論ず るに当 り, 問題 を政治思想史 の広 い
視野の中で考えた。 たとえば, プ ラ トンの説 いた共産主義 と後世のそれ との相違を明確に し, また, プ ラ
トンの 「正義」 の考え方 には身分 による分権の思想がふ くまれ るとも考える。 このよ うな視野での考察 は
甚だ暗示 に富んでいる。 第三 に, 著者 は 「法律篇」 の所説を細 く辿 り, 法律 ・ 理性 ・ 自然 についてのプ ラ
トンの考え方 と, プ ラ トンの法律案 とについて, 十分な検討をお こな った。 これは, 従来のプ ラ トンの国
家論の研究 において閑却 され勝 ちであった点を補 った ものであって, この論文の最 もす ぐれた特色をな し
ている。
もちろん本論文がすべてを尽 しているわけではな く, 殊 に後篇 には論 じ足 らない点がい くつか見 出され
るが, それ らはこの論文 の当面の問題 か ら梢 々離れた点 にかかわ るものであ って, 細壇 とい うべ き で あ
る。
以上 によって, 本論文 は文学博士の学位論文 として価値 あるものと認める。
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