Title Author(s) Citation Issue Date URL 学業不振児の知的特徴に関する研究( Abstract_要旨 ) 村川, 紀子 Kyoto University (京都大学) 1967-07-24 http://hdl.handle.net/2433/212299 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 氏 名 果 b) ,t と 育 学 子) 士 男 学 位 の 種 類 教 学 位 記 番 号 論 学位授与の 日付 昭 和 4 2年 7 月 24 日 学位授与の要件 学 位 規 則 第 5条 第 2項 該 当 学位 論文題 目 学業不振児 の知的特徴 に関す る研究 (主 論 文 調 査 委員 教 博 第 博 4 号 査) 教 授 倉 石 精 一 論 文 内 教 授 篠 原 陽 二 容 の 要 教 授 佐 藤 幸 治 旨 本論文 は, 学業不振児 の知能構造 の特異点 を明 らかにしよ うと試みた もので ある0 学業不振児 に関す る従来 の研究 の多 くは, 不振 の原 因を情緒不安定 や環境条件 に求 め, 性格検査, 環境 調査等によ って, その分析 を試みているが, 本研究 は, 学業不振を問題解決の仕方, 思考の能力等, 知的 側面か ら分析探究 しよ うとした。 4人の不 振 児 を 選 被験者 として, 米国テキサス州 オースチ ンの小学校 5・6年, 中学 1年の男女か ら6 び, 各児 にそれぞれ, 性, 年令, 知能指数, 居住地 域, 父兄の職業, 経済条件が等 し く, 学業成就値 が普 4人 を対照群 として, 比較検討 した。 通以上で ある対照児 を組み合わせ, この6 2 5種 のテス トが, 一部 は個人 テス ト, 他 は団体 テス トで 4日間にわた り, 各 1時間ずつ施行 されたO この資料 に もとづいて考察 された ことは, 以下 の ごと くであ った。 ( 1 ) 一筆書 きパ ズルや積木分類 テス ト等の問題解決において, 不振児 は仮説演縛的態度 をとることが少 な く, 知覚 にたよ って, 試行錯誤的な解 決を行 な う傾向がある。 (2) 分類作業 においては, 抽象的基準 によ らず, 具体的あるいは用途的基準 にたよる傾向がある。 (3) 客観的 に一般化す る能力 に欠 け, 事象 を主観的経験的な枠組で と らえ るO ( 4 ) di ve r gentt hi nki ng における s po nt ane o usf l exi bi l i t y が普通児 に比べて低 い。 これは概念 の体 系の分化 と統合 とが劣 っているためと思われ る。 ( 5 ) 知能 テス トで測 られてい る思考能力 は, c o nve r ge ntt hi nki ng の面であることが多 く, これに類 す る多 くのテス トでは普通児 と不振児間の成績 の差 はみ とめ られない。 (6) 推理の型 については, 不振児 には不充分 な情報で誤 った推論 を行 な う傾 向がみ られ る。 (7) 不振児 は機械的記憶 においてほ遜色がないが, 文章記憶では, 記憶 の仕方 が粗雑で不正確である。 ( 8 ) 知能 プ ロフィルにおいて, 言語性知能 が高 い児童 は, 普通児では7 5% であるのに対 して, 不振児で 5% に過 ぎなか った。 は3 - 1 8- 要す るに, 学業不振児 は抽象的思 考 において劣 り概念 を具体的個人的経験 的に体系づげ, 自分 を中心 と した主観的な見方 をとりやす い。 一方彼等は空間知覚 の能力で, 普通児 に劣 らないが, この能力 を用 いて むずか しい推理問題 を解 こうとす る傾向がある。 ∫. Q. が普通児 に等 し くて も, 以上のよ うな知的特徴 が, 学業不振 の原 因をなす と考え られ る。 この理解 にた っての学習指導が要望 され る。 以上の所論のわが国児童への適用性 は, 不 じゅうぶんなが ら若干の追試 によ って検討 した。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 冒 本論文 は, 学業不振児 に関す る従来の教育心理学的研究 が, 不振の原 因を児童生徒の情緒不安 や環境条 件への心理的不適応 に求 めて, 当該児童 の知能構造 の詮索 には重 きをおかなか った点 に着 目し, 学業不振 児 の知的機能の特徴 を, 明 らかに しよ うとした もので ある。 実験対象および対照群の設定 に, 工夫 の跡 がみ られ るとともに, 使用 したテス トは25種 目におよび, 同 一被験者 を分析精査 した点で, 従来 の諸研究 を しのいで いる。 資料 の分析 には, 多角的な指標 を採用 して, 考察 を深 め, 先人の見 出 した知見 を, 新 しい実験結果 によ って裏付 けるとともに, 若干の新知見 を提供 してい る 。 ことに25種 目のテス トバ ッテ リーの因子分析 の結果 を省察 し, テス ト問題 の因子負荷量 は, 被験者 を通 じて必ず しも同一ではな く, 問題へ の接近の仕方 によ って, 当該 テス トで測定 され る能力 が異 な るとい う 見解を, データに もとづいて提言 しているのは, とか く安易 にながれがちな, 筆紙法 テス トに警告をあた え るとい う意義がある。 学業不振の原 因は多様であ り, 不振児 を指導す る上の着眼点 も多面 にわ たるが, 従来強調 されなか った 学業不振児 の知的特徴 を心理学的 に解 明 した点 は, 学習指導上 に も重要 な示唆を もつ ものとい うことがで きる。 要す るに, 本論文 は教育心理学的研究 として, 理論 および実際の両面 に貢献 したと認め られ る。 よ って本論文 は, 教育学博士 の学位論文 として価値 あるもの と認 め る。 - 1 9-
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