熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System Title 卵巣明細胞腺癌における臨床病理学的多様性の検討 Author(s) 松尾, 勇児 Citation Issue date 2015-03-09 Type Thesis or Dissertation URL http://hdl.handle.net/2298/32269 Right 松尾 勇児 氏の学位論文審査の要旨 論文題目: 卵巣明細胞腺癌における臨床病理学的多様性の検討 (Thea n a l y s i sf o rc l i n i c o p a t h o l o g i c a lheterogeneityi no v a r i a nc l e a rc e l l adenocarcinoma) 上皮性卵巣癌(卵巣癌)には主に 4つの組織型が存在するが、子宮内膜症を合併する ことが多い明細胞腺癌は、本邦において特に増加傾向を示している O その一方で、子宮 内膜症を合併しない症例がみられ、他の組織型の成分が一部に混在する明細胞腺癌も認 められる。臨床的にも明細胞線癌は一般的には予後が不良とされているが、実地臨床で は予後が良好な例も経験されることも多く、多彩な臨床像を示す。本研究の目的は明細 胞腺癌のみからなるもの (pure-type)と他の組織型が混在する明細胞腺癌 (mixedtype) 圃 を病理組織学的あるいは免疫組織化学的手法を用いて比較検討し、明細胞腺癌が有する 多彩な腫蕩性格を明らかにすることである。対象は明細胞腺癌 46例で、 35例は puretype、残り 1 1例は mixed-typeであった。免疫染色法により、明細胞腺癌、衆液 圃 性腺癌、類内膜腺癌の責任遺伝子である ARID1A、p53、PTEN、明細胞腺癌で異常発 現する Annexin4、HNF-1s、築液性腺癌で異常発現する机斤1 を検索した。 臨床進行期 1a 期の明細胞腺癌は、腫蕩壁の表面直下に浸潤が及ぶ傾向があり (25.00 / 0 )、 / 0 )、明細胞腺癌が潜在的に予後不良因子を有する さらに壊死を伴うことも示され (33.30 可能性が示唆された o pure-typeではARID1Aとp53の変異が相補的にみられ、 p53の変 異を有する症例の予後は不良であった (p<0.001)0 mixed-typeで、は、類内膜腺癌を混在 する 2例で PTENの発現が低下していた。紫液性腺癌を混在する 8例のうち、 3例が子宮 内膜症の合併ならびに ARID1AやAnnexin4、HNF-1sの変異といった明細胞腺癌の特徴 がみられた。しかし、 5例では柴液性腺癌の特徴である p53の変異や山斤・ 1の発現がみら れ、子宮内膜症の合併もみられなかった。結論として明細胞腺癌の特異的な組織構築が x e d t y p e !こ着目した検討で多彩な腫蕩性格が示 予後不良因子となることが示唆され、 mi されたことから、明細胞腺癌の再分類が必要であり、新たな治療ストラテジーの構築が 望まれた。 )mi x e dtypeに E期が多かった点、 2 )p53,ARID1Aの遺伝子異常として 審査では、 1 e p i g e n e t i cな変化の有無、 3 )卵巣癌における nextgenerationsequencer!こよる新たな遺 )免疫染色の際のコントロールの置き方、 5 )ピルの使用と内膜症の相関、 6 ) 伝子変異、 4 卵巣癌と腎癌の淡明細胞癌の違い、 7 )卵巣癌における分子標的薬の開発状況などについ て多くの質問がなされ、それぞれの質問に対して満足のゆく回答が得られた。 本研究は、卵巣明細胞腺癌の予後不良となる特異的な組織構築と明細胞腺癌の再分類 の必要性を示した点で高く評価され、学位論文に相応しいと評価された。 審査委員長泌尿器科学担当教授 共 魚 ム 久
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