Vol. 128

KTS-Net
進化はここから生まれる。
激動する時代、メーカーはどのようにこの変化に挑み、取り組んでいるのか。
コマツの製品をお使いのユーザーの方々をレポートしてご紹介いたします。
今回は、金属加工で 60 年を超える実績、スチール製品の OEM で豊富な
実績を持ち、ユーザーから確固たる信頼を得られている、奈良県香芝市の
株式会社一ノ坪製作所様にお話をお伺いしました。
Vol. 128
鋼製家具・事務機器用ラックの製造
株式会社 一ノ坪製作所
本 社 工 場 〒639-0264 奈良県香芝市今泉625番地 TEL.0745-76-3181 FAX.0745-76-3187
三 重 工 場 〒518-1322 三重県伊賀市玉滝10005番地 TEL.0595-42-1891(代) FAX.0595-42-1890
設 立 1958(昭和33)年 代表取締役社長 一ノ坪 英二 資本金 4,500万円 従業員数 67名
ホームページ http://www.ichinotsubo.co.jp/
代表取締役社長
創業からの経緯をお聞かせ下さい。
弊社は、1948(昭和23)年に大阪市にて創
業、1958(昭和33)年に法人設立致しました。
1973(昭和48)年に、ここ奈良県香芝市に
工場を新設しました。
その後も様々な設備を充実させ、設計か
らプレス・板金・溶接・塗装まで全て社内
で、材料から完成品までの一貫生産を行っ
てまいりました。
創業当初は自転車のフレームや製図台の
製造を手掛けていたのですが、製図台をき
っかけに昭和51年頃から大手メーカー様と
お取り引きをさせて頂けるようになり
ました。
当時、昇降機構付学習机のメカ部材で業
務も拡大し、様々なスチール製家具の製造
を手掛けてまいりました。
一ノ坪 英二
氏
弊社が板金加工を本格的に手掛けるよう
になった頃、日本はバブル期を迎えていて、
当時ニューオフィスと呼ばれたホワイト基
調のオフィス机を大量生産することとなり、
1990(平成2)年に三重県伊賀市に三重工場
を新設することとなりました。それぞれの
工場を案件によって使い分けるとともに、
天災等不意のアクシデントがあっても「誠
実、実直なモノづくりで、品質、納期とも
にお客様に満足していただく」「何があっ
てもお客様との約束は守る」という創業時
より掲げてきた一ノ坪スピリッツを貫き通
すための取り組みの一環となっています。
ISO9001、14001の認証取得に加え、粉体
塗装機等の最新の製造システムも積極的に
導入し、高い品質と環境に配慮した体制で
お客様のご要望にお応えしております。
KOMATSU COMMUNICATION REPORT
『わかりやすい
モノづくりの追求』
KTS-Net
進化はここから生まれる。
自由な発想と豊かな創造力を発揮し、最良の品質とサービスを追求した
モノづくり。工場では徹底した品質管理と原価低減意識を持ち社員一丸
となって仕事に取り組んでいる。
さらに顧客の信頼に応えるための積極的な技術革新も推進している。
取締役
製造部長
戎谷 献児
氏
KOMATSU COMMUNICATION REPORT
安全活動についてお聞かせ下さい。
弊社では 2008年から「ラクラク・リズミ
カルな正味作業」というスローガンを掲げ
様々な活動を行っています。ラクラクとは
安全、リズミカルは品質、正味作業は効率
を表しています。安全を追求し、品質を追
求すれば、必然的に効率は良くなります。
不安全行動・不安全状態を無くしたラク
ラク=安全な作業を行い、決めたルールを
守ったリズミカルな定常作業で不良率を
減らし品質の向上が図れれば、無駄を排除
した付加価値を高める作業が行えるのです。
社内に掲げられているスローガン。
その一環として、弊社では「ハインリッ
ヒの法則」を応用した労働災害防止対策を
行っています。1件の重傷事故の裏には29
件の軽傷事故、300件のヒヤリハットが隠
されています。不安全行動・不安全状態と
いった気がかり事項を無くし、ヒヤリハッ
トを減らせれば、重大な事故を未然に防げ
るのです。この法則を品質にも応用してみ
ると、1件のクレームに対して29件の前工
程不良、300件の工程内不良、その根源に
不安全状態および不安全行動が判明。予防
処置として、品質の不安全状態・不安全行
動を無くせれば、不良及びクレームをゼロ
にすることが出来るのです。
工場では、納期短縮・品質向上・安全配慮の様々な
工夫がされている。
生産されている製品および御社の特徴を
お聞かせ下さい。
材料から完成品まで、一貫した生産を行
っていることが、弊社の最も大きな特徴と
言えます。設計からプレス・板金・溶接・
塗装・組み立てと全ての工程を内製化する
ことでスピードアップを計り、納期・品質
ともにお客様に満足していただけるモノづ
くりを行っております。
設計からプレス・板金・溶接・塗装・組立まで一貫した
生産が行われている。
弊社ではオフィス机に関して、天板から
下の部分、構造体となるフレームや、外装
脚を設計・製造しています。
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鋼製家具・事務機器用ラックの製造
株式会社 一ノ坪製作所
三重工場
レーザー加工機、タレットパンチングプ
レス、サーボプレスブレーキ、3次元CAD、
粉体塗装機、サーボプレス等、世の中の要
求・仕事の変化とともにそれに伴った設備
の導入を行ってきました。設備が変わるこ
とによって内製化が進み、仕事がよりスム
ーズに流れるようになり、スピードを身に
付けることができました。3次元CADによ
って製品の形状を分かりやすく伝えること
ができ、粉体塗装機の導入では塗装不良が
従来の10分の1以下と大幅な不良率の削減
を図ることが出来ました。また、レーザー
加工機を使い溶接治具等も社内で製造する
ようになり、品質の向上やコスト面のメリ
ットも出るようになりました。
このように最新設備の導入は、新たなニ
ーズに応じた必要性があるとともに、様々
なメリットを生み出すものでもあるのです。
工場内の工程表を液晶モニターで表示。自社で設計開発
したモニターラックを使用。
環境に配慮して導入した粉体塗装機。塗装不良を従来の
10分の1以下に削減することが出来た。
KOMATSU COMMUNICATION REPORT
最新設備の導入を積極的に行われている
ようですが。
オフィス家具のスチール部品加工を手掛
けている会社では、殆ど板金加工を中心と
していますが、弊社では、創業当初自転車
のフレームを手掛けていたことから、板金
に加え、パイプ加工の製造も数多く手掛け
ています。そのため、ラック等の構造体の
加工が得意との評価を頂いております。
他にもコピー機ラックの製造や、シーリ
ングライト取付部品の塗装、液晶モニター
ラックやリクライニングチェア内部の機構
設計・試作・加工といった設計開発品、省
エネ蛍光灯用の高反射板、高反射材料によ
る水銀灯省エネ反射板といった新たな取り
組み等、様々な加工を手掛けています。
また、同期梱包という弊社独特の生産方
法を行っています。塗装はコンベア式なの
ですが、そのスピードに合わせて組立等の
後工程を同期化しているのです。仕掛かり
がゼロになり、従来生じていた様々な無駄
を省いています。
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鋼製家具・事務機器用ラックの製造
サーボプレスのご感想をお聞かせ下さい。
長さ2600mm程のパイプに孔あけ加工を
する製品を受注したことが、サーボプレス
を導入するきっかけになりました。
高精度・高品質の孔あけ加工ができるの
はもちろん、加工音の静かさに驚きました。
メカプレス3台を一度にサーボプレスへ入
れ替えたため、その効果ははっきりと実感
できました。近隣への配慮、そして従業員
に対しての作業環境の向上、双方を考慮し、
サーボプレスに入れ替えて良かったと実感
しております。金型への負担もかなり削減
できているのではないでしょうか。
思い通りの動きができるフリーモーショ
ン等、サーボならではの特徴を活かし、今
後も様々な加工に挑戦して行きたいと考え
ております。
これからの日本の製造業は、まだまだ先
が見えません。お客様の生産拠点が海外に
移されることもあるでしょうし、日本国内
での需要も大きく変わってくるでしょう。
このような状況下で生き残って
行くには、生産性及び技術的に
お客様のご要望に、より迅速に
お応えして行くことが重要だと
考えております。
株式会社 一ノ坪製作所
また、自社開発した製品の提案も積極的
に行っていきたいと考えております。
モノづくりを行っていく上で、品質は最
重要視しなければなりません。その上で、
わかりやすいモノづくりをすることが大切
だと思うのです。わかりやすいモノづくり
をすることが、結果的に納期を短縮し、品
質の向上にもつながります。
私どもは、今後も技術・改善に切磋琢磨
し、プロセスが明確なモノづくりを続けて
まいります。
3台同時に入れ替えられたコマツACサーボプレスH1F。
今後の更なる活躍が期待される。