Vol. 121

KTS-Net
進化はここから生まれる。
激動する時代、メーカーはどのようにこの変化に挑み、取り組んでいるのか。
コマツの製品をお使いのユーザーの方々をレポートしてご紹介いたします。
今回は、「ものづくり日本大賞・内閣総理大臣賞」受賞をはじめ、科学技術
分野の文部科学大臣表彰、厚生労働大臣表彰・卓越した技術者「現代の名工」
等、金型・プレス加工で様々な賞を総なめにされている、群馬県高崎市の
石関プレシジョン株式会社様に、お話をお伺いしました。
Vol. 121 精密プレス金型/精密プレス加工/精密プレス部品
石関プレシジョン株式会社
本 社
本 社 〒222-0001 群馬県高崎市箕郷町矢原2177番地1 TEL. 027-371-5758(代) FAX. 027-371-5986
設 立 2002(平成14)年 2月 代表取締役社長 石関 誠二 資本金 1,000万円 従業員数 18名 ホームページ http://www.i-precision.co.jp
『お客様の夢を実現させる。
』
弊社は、それまで務めていた石関工範の
会長を辞任し、2002(平成14)年2月に設立
した、まだ比較的新しい会社です。
私は、昭和41年に地元、高崎氏の群馬県
立高崎工業高校を卒業後、父が創業した石
関工範にプレス工として入社以来、今日に
至るまで長年この世界でやってまいりまし
た。また、その傍ら、30代前半までは国際
A級ライセンスを取得してカーレースに熱
中していたのですが、マシンの整備も自ら
手掛ける等、もともとモノづくりといった
ものが大好きなのです。
プレス金型の設計・製造はもちろんのこ
と、興味を持ったらメッキ加工なども自分
で習得していました。当時の職人さん達は
懇切丁寧に教えてはくれませんから、全て
独学です。CADを使った設計も自分で勉強
しました。
石関工範では、棒材の外径をミクロン単
位で測定する「はさみゲージ」といった工
具などを作っていたため、精密加工の基礎
は十二分に鍛えられました。
このような下地をもとに、研究・開発に
代表取締役社長
石関 誠二
氏
重きを置いたプレス金型の設計・製造・プ
レス加工を請け負う「石関プレシジョン」
を創業いたしました。
お客様から「こういう部品を作れないか」
といったご要望をよく受けます。どれも非
常に精密な部品ばかりなのですが、それは、
お客様がより高度な、より小さな商品を作
ろうとする「夢」の一部なのです。その夢
の実現をお手伝いできるのが、私たちの仕
事なのです。ですから「出来ません」とは
簡単には言えません。出来る方法をとこと
ん考えるのです。これは、カーレースで学
んだ「レースも仕事もハプニングは付き物。
それでも様々な角度から対応策を考えて、
最善を尽くせば結果につながる」といった
経験が活かされていると思います。
今後も、常により良い部品を作りたいと
いう強い意識を持ち、工夫と技術の向上に
取り組んでまいります。
KOMATSU COMMUNICATION REPORT
創業から今日に至るまでの経緯についてお聞かせ下さい。
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進化はここから生まれる。
自由な発想と豊かな創造力を発揮し、卓越した技術力を持つエンジニア集団。
工場では徹底した品質管理と原価低減意識を持ち社員全員が一丸となって仕事
に取り組んでいる。
さらにメーカーの信頼に応えるための積極的な技術革新も推進している。
KOMATSU COMMUNICATION REPORT
●御社の特徴をご紹介下さい。
弊社では、金型の設計・試作・製作から
プレス加工、そして後加工まで、一貫した
生産を行っております。
金型の製作におきましては、発注先の設
計担当者から「このような機能と品質の部
品が欲しい」というご希望を伺い、それに
対して弊社から、加工方法や部品に持たせ
る機能・形状などをご提案させて頂き、金
型を完成させております。
精密プレス加工では、曲げ・抜き・絞り
はもちろん、多列高速絞り・深絞り・角絞
り・リードフレーム加工等といった、あら
ゆるプレス加工技術を網羅しております。
弊社では、社員ひとり一人が「自分自身
の手で、世界一の製品をつくろう」という
高い意識を持ち、日々励んでおります。
様々な工夫と技術の向上を図り、研究開発
した製品が多々あります。
例えば、LED電球の根元に使われる金属
部分の部品なのですが、複雑に波打つ円す
い形の部品を一枚の金属板からプレス機で
作れないないかと、大手電機メーカー様か
らご依頼がありました。従来、同様の部品
はダイキャストで造られていたのですが、
プレスなら重さは約10分の1になりますし、
材料費も当然抑えることができます。今ま
でに無い形状で難しい挑戦でしたが、成功
することができ、市販が開始されました。
他の大手メーカー様からは、燃料電池に
使う細かい網状の部品のご要望もありまし
た。国内30社に対して同様の試作依頼を出
されたようですが、「やれる」と答えたの
は弊社を含めて3社のみであったそうです。
その中から、実際の試作を弊社に任せて頂
くこととなったのです。プレス加工につき
ものの「バリ」もメーカー様のご要望通り
防ぐことが出来ました。この部品を使った
製品も近々販売開始されるとのことです。
品質には特に気を配っております。月産
1,000万個の製品を3年間納めていたのです
が、クレームがゼロであったため、お客様
から、無検査指定工場に認定されたという
こともあります。
●御社で製造されている製品についてお聞
かせ下さい。
●「第3回ものづくり日本大賞の内閣総理
大臣賞」を今回受賞されたそうですが。
弊社では、世界一の製品をつくり、社会の
発展に貢献する」といった高い意識のもと、
弊社の「多列高速絞り加工」が今回、内閣
総理大臣賞の対象とさせて頂きました。
Vol. 121
精密プレス金型/精密プレス加工/精密プレス部品
石関プレシジョン株式会社
第3回ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞 受賞。
サーボプレスのご導入につきましてお聞
かせ下さい。
今までご紹介させて頂きました部品は全
て、弊社の技術力を詰め込んだ金型を使用
し、メカプレスで製造したものですが、今
後の更なる高みを目指すため、研究開発の
新たな設備として、2010年の1月にコマツの
サーボプレスH1F60を導入しました。
開発する品物に対して、従来の単純な動
きのメカプレスとは違ったサーボプレス特
有のモーションを活用することによって、
如何に良いモノが出来るかを試したかった
のです。
使用してみた所、やはり、加工や金型に
合わせて色々なモーションを変えられると
いうことがサーボプレスの最も良い点であ
ると改めて実感しました。
また、加工精度の高さも実感しておりま
す。特に、弊社が導入したサーボプレスは
O型フレームのため、口開きの心配もなく、
金型精度を維持するためには欠かせません。
今後のさらなる活躍が期待されるサーボプレスH1F60
KOMATSU COMMUNICATION REPORT
絞り加工を一回だけでなく、数段階に分
けて連続プレスして複雑かつ精密な部品を
大量生産する高速絞り加工です。
原材料の帯鋼に一列にプレスするよりも
同時に三列に打ち出せば生産効率は単純に
三倍アップしますが、真ん中の列と両脇の
列では条件が違ってきますから、そこに工
夫をこらしたのです。
原材料の廃棄部分を最小にして、加工精
度と強度を保つような配置をする必要もあ
りますし、その他にも、高品質と100%の
歩留まを保証する様々なアイディアとこれ
まで培ってまいりました技術を詰め込みま
した。
この技術で製造した部品の代表的なもの
としましては、国内外で販売されている充
電式ニッケル水素電池のプラス極部分に使
われています。
Vol. 121
精密プレス金型/精密プレス加工/精密プレス部品
石関プレシジョン株式会社
やはり昨今、日本のモノづくりというも
のが、どんどん海外へ移って行ってしまっ
ていることが心配です。
日本の製造業に携わる人達は、皆、技術
やノウハウを持っていると思うので、それ
を如何に活かして行くかが、日本でのモノ
作りを残して行くかの今後の課題であると
思います。
弊社では、企画室長である私の息子が、
群馬大学や産業技術センターと共同で技術
開発を推進したりしていますが、このよう
に自分では分からないことは外から情報を
仕入れたり、協力して行くのもひとつの方
法だと思っております。
また、仕事をしていく上で、これをしろ
と強制するのではなく、一人一人が自ら考
えて、生まれ持った才能を活かして行くこ
とが大切だと思っております。
社員一人一人が高い意識を持ち、知恵を
“絞り”
、世界一の製品づくりを目指し、今
後もお客様の夢の実現に貢献し続けて行き
たいと思っております。
モノづくりに対して、一人一人が高い意識を持たれている社員の
皆様。(前列一番右が石関社長様)
創業以来、実に様々な賞を受賞。技術の高さを物語る。