コルゲートホーンアンテナの位相中心の計算

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コルゲートホーンアンテナの位相中心の計算
位相中心は測定が難しく、数値計算でも細心の注意が必要です。位相中心の位置は、偏波やスキャン角度の
方向、開口幅などに依存します。本資料では線形な垂直偏波のコルゲートホーンアンテナを計算した例をご
紹介します。CST MW STUDIO(CST MWS)で作成したホーンアンテナモデルを図 1 に示します(断面)。
励起方向、H 面、E 面も図中に示します。
図 1:CST MW STUDIO モデル。励起ポート、H 面と E 面
意味のある結果を得るためには設定を正確に行う必要があります。電界の偏波は E 面にあります。電界の phi
成分の 3D 表示(図2右)を見ると、この成分が水平方向のスキャン方向(この場合は H 面)にあることが
確認できます。CST MWS でこれに該当する位相中心計算の設定を図 2 左に示します。これとは異なり E 面
スキャンを選択する場合は E-theta 成分を選択します。E 面スキャンと H 面スキャンの位相中心は異なります
から注意が必要です。
図 2:電磁界と H 面スキャン方向の設定
CST MWS の遠方界ポストプロセスでは、位相は 3D 空間で、
もしくは特定パスに沿う形でプロットされます。
位相中心の計算は、遠方界計算の原点が変更可能であるという事実に基づきます。つまり位相中心計算機能
を使用して、求められた位相中心に、遠方界の中心を合わせることができます。今回の場合、位相の偏角は
所定の開口角度でやや平らな形を示しています。遠方界の中心は図 3 に示す 3 箇所に置き換えられます。1
つは位相中心に、他の 2 つはそこから伝播の z 軸上にそれぞれホーンの全長の+/-5%の位置になります。
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図 3: 3 箇所で位相変化を観測
上記のように遠方界中心が移動した場合の、それぞれの電界の 3D 位相プロットを図 4 に示します。水平の
スキャン方向における位相変化は中央の図が最小となっています。H 面で見ると位相の変化は一層明確にな
ります(図 5)。位相の傾斜は、シミュレーションでは位相中心の再配置の指標として、測定のセットアップ
ではアンテナの移動の指標として用いられます。
図 4 最適化された位相中心より、左から +5%、0%、-5%位置での 3D 位相プロット
図 5:H 面方向の位相変化
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位相中心の位置は開口角度によって変わります。図 6 に示すように、開口部が小さければ変化も小さくなり
ます。なお、通常 H 面と E 面とで位相中心の評価は異なります。これとは別に、位相中心の計算の精度を測
る上で標準偏差も基準となります(図 7)。
図 6: 開口角と位相中心の移動との関係
図 7:開口角が小さければ標準偏差も小さい
測定との比較:
Kathrein Werk KG(独:Rosenheim)による測定が行われました。中心周波数から+/-2%の 2 つの周波数におい
て位相中心を測定しました。偏極は E 面です。アンテナを H 面で回転(azimuthal)し、電磁界の大きさと位
相を記録しました。スキャン角度に対する位相傾斜によって、アンテナをその伝搬軸に沿って僅かに動かし
て再測定するのを、位相が平坦になるまで繰り返しました。実際の位相中心の位置を図 8 に、中心周波数の
波長において測定した結果とシミュレーション結果を図 9 に示します。(Measurement data with courtesy and
permission of Kathrein KG, Rosenheim, Germany)
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図 8:コルゲートホーンアンテナの実際の位相中心
図 9:2 つの周波数における偏差 – 位相中心は周波数により異なる
.
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