フォトニック結晶のシミュレーション

COMPUTER SIMULATION TECHNOLOGY
フォトニック結晶のシミュレーション
フォトニック結晶は、光の進み方に作用するように設計された周期構造です。この作用は、周期的な半導体
結晶が電子の動きに及ぼす作用に似ています。特定周波数のもとでは構造内を伝搬するモードが存在しない
という特性は、低損失ウェイブガイドや全方向型ミラーのようなユニークな光学現象となって現れます。波
動伝搬が不可となるスペクトル領域を「オプティカルバンドギャップ」と呼びます。この物理現象は回折を
基本現象とし、そのためフォトニック結晶構造の格子定数は電磁波の半波長に等しい長さとする必要があり
ます。解析した 1 次元周期構造を図 1 に示します。シミュレーションは、CST MW STUDIO(CST MWS)の
時間領域ソルバーを使用して行いました。
図 1:1 次元周期構造
屈折率 3.4 の GaAS を材質とするロッドの長さは約 180 nm 、隣り合うロッドの間隔は 約 760 nm です。この
結晶モデルでは、まず平面波の伝搬を模擬するシミュレーションを行いました。
図 2:アレイの 1 列
境界条件と対称条件を適切に設定することにより、図 2 に示す 1 列のモデルから周期構造の結果が得られま
す。この場合はウェイブガイドポートで励起を定義します。磁気および電気対称条件の設定により、励起モ
ードは垂直入射の平面波となります。
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図 3:伝搬 vs 波長
構造内の伝搬を図 3 に示します。波長 1400 nm と 2200 nm の間の周波数帯は伝搬ゼロです。このバンドギャ
ップ領域では波動の伝搬は不可となります。
図 4:伝搬:バンドギャップより低い周波数
バンドギャップ領域とそれ以外の周波数における垂直入射平面波の伝搬を図 4∼6 に示します。
図 5:伝搬:バンドギャップ領域内の周波数
図 6:伝搬:バンドギャップより高い周波数
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シミュレーションから得たフォトニックバンドギャップの情報は光学部品設計に応用することができます。
上記構造を周期的に配列した PBG 構造を図 7 に示します。線欠陥のある構造を、バンドギャップ周波数の電
磁波で励起しています。電磁波は線欠陥部分を伝搬します。
図 7:線欠陥のあるフォトニック結晶
最後に、ベント欠陥のあるフォトニック結晶の伝搬を図 8 に示します。上記と同様に時間調和信号を使用し、
バンドギャップ内の周波数で励起したため、伝搬は欠陥部に沿って湾曲しています。
図 8:ベント欠陥のあるフォトニック結晶
まとめ:
CST MW STUDIO の時間領域ソルバーでフォトニック結晶のモデリングとシミュレーションを行い、モデル
の有用性を示しました。周波数領域ソルバーと固有モードソルバーでも周期的境界条件を使用してフォトニ
ック結晶の一般的な特性を表現することができます。
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