プロジェクト名 研究背景 研究目的 及び目標 成果概要 モバイル機器向けヒューマンインターフェース・デバイスの開発 (研究背景) 携帯電話等に代表される小型モバイル情報機器において、高機能化、多機能化 が進み、ゲーム・地図配信サービス等のコンテンツが充実してきた。これらを操作す るために複雑な指の動きが要求される。ストレス無く簡単、快適に操作でき複雑な入 力が可能なヒューマンインターフェース・デバイス(ポインティングデバイス)の要求が 高まってきている。 (研究目的及び目標) 従来のスイッチ方式では、複雑で微妙な指先の動きをコントロールが困難であった が、本プロジェクト開発デバイスは、指の押圧力を360°全方向に対応する X 軸と Y 軸の 2 軸成分出力として取出すことができ、様々な機器の入力デバイスとしてストレ スなく快適な操作を可能とする。 本プロジェクトでは、次のような成果を得ることができた。 1. 機構部の設計・試作 従来のデバイスはスイッチを配置したもので ON/OFF 動作のみであったが、本プロ ジェクト開発では、センサ内部に「基板上の電極」および「導電シリコンゴム」を構成 しキーベースを介して、シリコンゴムに力が印加されるとゴムの変形により電極間距 離の変化に伴い静電容量の変化を検出する構造を設計した。信頼性評価および解 析の結果、2次試作及び3次試作では部品点数の減少、工程時間の削減、信頼性 向上を考慮した構造とし、再設計を行い構造の簡素化、組立ての効率化を図った。 2. 機構部の特性評価・解析 機構部の主要部材であり、本デバイスのキーマテリアルである導電ゴムについ て、低温までの動的粘弾性の測定を行った。その結果、-30℃以下では、急激に弾 性率増加し、硬くなるため、本デバイスの接点としては、使えなくなるものと思われた が、-20℃では室温の 2 倍程度の値であり、使用可能であることが分かった。 3. 信号処理部の設計と試作 プリント基板電極には、ニッケルメッキと金めっきが施されているが、電気的接触 状態を安定に保つためには、その厚みの管理が重要である。導電ゴムと接触する 部分におけるメッキ厚みを非破壊で測定し、その有効性を確認した。また、無電解メ ッキにおける温度および時間を制御することで、所定の膜厚が得られることも確認し た。さらに、高いセンサ感度を得るために、ソルダーレジストに代わる誘電体複合材 料を検討した。エポキシ樹脂とチタン酸バリウムを用いて比誘電率が4~30の材料 が得られた。2次試作では電極部のレジストをなくしレジスト厚ムラによる静電容量 のバラつきを解消することができた。また、ゲイン設定を 0Ω抵抗からジャンバーに 変更する事により基板上の部品点数の削減を図った。 4. 機構部と信号処理部の組立て 1次試作では、接着剤のキュアの関係から組立てに 1 日かかっていたが、2、3次 試作では、構造の変更に伴う部品点数や組立工程の低減により、組立て時間を数 十分と大幅に短縮することができた。 5. 完成品の評価と信頼性試験 マイクロフォーカスX線を試料に照射し、コンピュータを利用したデジタル処理によ って、ミクロンオーダーの高分解能で透過画像および断面画像を高速で作成、記録 する機能を有するマイクロX線CT装置を用いて、非破壊でポインティングデバイスの 組み立て状態の確認を行った。図1は、昨年度の1次試作品および今年度の2次試 作品の断面図を示す。各部品および導電ゴムの組み立て状態を観察することがで 1 きた。導電ゴムは、中心付近でやや折れ曲がって収納されているが、対向電極上で は所定の形状であり、これにより正常に動作していることがわかった。またプリント 基板の Cu 配線とクリップドームも観察された。 1次試作 2次試作 図1 マイクロX線CT断面図 収縮の小さいエポキシ樹脂に試料を包埋し、低速でダメージを与えないように切 断後研磨することによって、正確な断面形状を観察し、比較することも行った。 信頼性試験は、①低 温 放 置 試 験 (-25℃ 240h)、②高 温 放 置 試 験 (85℃ 240 h)、③温度サイクル試験(-20℃(30min)←→+85℃(30min)を 20 サイクル)の 3種 類 を実 行 した。試 験 後 、外 観 に異 常 は見 られず、感 度 出 力 電 圧 及 び零 点 出力電圧変化は、基準状態で測定された初期値に対し、目標範囲以内である ことを確認 した。また、完成品の評価・信頼性試験では、昨年度開発された信頼性 試験装置を活用して「センターSW打鍵耐久試験」及び「ローリング耐久試験」を実 施した。その結果、目標範囲以内であることを確認した。 6. 検査装置の設計・作製 ポインティングデバイスの性能を計測評価する装置(自動測定装置及び温度特性 評価用治具も設計・製作した。これらの装置を用い、上記の性能評価及び信頼性試 験を実施することが出来た。 連絡窓口 財団法人富山県新世紀産業機構 連絡先 TEL 076-444-5636 FAX 076-444-5630 (担当:中川 2 章)
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