栄養摂取のタイミングの違いが筋力トレーニングの効果に及ぼす影響 扇本 春平 (競技スポーツ学科 トレーニング・健康コース) 指導教員 武田 哲子 キーワード:筋力トレーニング,たんぱく質,摂取タイミング 1. 緒 言 トレーニング直後は筋たんぱく質合成 が 盛 んに 行 わ れ る こ と か ら,近 年 で は トレ ーニング直後にたんぱく質と糖質を摂取 することが筋肥大や最大挙上重量の向上, 疲 労 回復 に 望 ま し い と さ れ てい る .し かし 摂取したたんぱく質が筋たんぱく質合成 に 使 用さ れ る ま で に は 30min 程 度か か る と 考 えら れ て い る.本 研 究 では ト レ ー ニ ン グ中にたんぱく質と糖質を摂取すること で 素 早く 体 内 に た ん ぱ く 質 を吸 収 し ,筋た んぱく質合成により効果的に使用するこ と が でき る と 仮 説 を 立 て,ト レ ー ニ ン グ時 の栄養摂取タイミングの違いが筋力トレ ーニングの効果に影響を及ぼすかを明ら か に する こ と を 目 的 と し た . 2. 方 法 対 象 は跳 躍 選 手 男 子 12 名( 年 齢 19.6± 1.4 歳 ) と し , 筋 力 測 定 , 運 動 能 力 測 定 , 筋 周 径 ,体組 成 ,血 糖 値 の 測定 お よ び 食 物 摂 取 頻度 調 査 を 行 っ た .筋 力 測 定は ,ハ イ ク リ ーン ,ハ イ ス ナ ッ チ ,ハ ー フス ク ワ ッ ト ,ベ ン チプ レ ス と し ,摂 取 タ イミ ン グ の 異 な る 2 群 を 比 較 した . 3. 結 果 お よび 考 察 ス ク ワッ ト の 最 大 挙 上 重 量 の経 時 的 変 化 を 比較 す る と ,運 動 中 摂 取群 に 実 験 開 始 前 か ら 8 週 目 間 に 有意 な 増 加が み と め ら れ た( p< 0.05)( 図 1).一 方 で ,ハ イ ス ナ ッ チの 最 大 挙 上 重 量 の 経 時的 変 化 を 比 較 す ると ,運 動 後摂 取 群 に 実験 開 始 前 か ら 4 週 目 と 8 週 目 間に 有 意 な 増加 が み と め ら れ た ( p < 0.05)( 図 2). 運 動 中 摂 取 群 , 運 動 後摂 取 群 と も に 筋 力 が 向上 し ,運 動中 摂 取 群と 運 動 後 摂 取 群 の 筋 力向 上 に 群 間 差 は みら れ な か っ た.ト レ ーニ ン グ 中 ま た は 直 後に た ん ぱ く 質 と 糖 質 を速 や か に 摂 取 す るこ と で イ ン ス リ ン 分 泌が 増 加 し ,筋 た ん ぱく 質 合 成 の 増 大 や コ ルチ ゾ ー ル 低 下 に よる 筋 た ん ぱ く 分 解 が 抑制 さ れ ,筋力 向 上 に成 果 を も た ら し た と 考 え ら れ る が , 群 間 差が み ら れ な か っ た.そ の 要 因 と して 運 動 中摂 取 群 と 運 動 後 摂 取 群の 摂 取 タ イ ミ ン グの ず れ が 約 1 時 間 と いう 短 い 時 間 だ っ たこ と が 影 響 し,運 動 中摂 取 群 と 運 動 後 摂 取群 の 栄 養 摂 取 タ イ ミ ング の 違 い が 顕 著 に表 れ な か っ た 可 能 性 が 考 え ら れ る . *:p<0.05 図 1 栄養摂取タイミングの違いによるスクワ ットの最大挙上重量の経時的変化 *:p<0.05 図 2 栄養摂取タイミングの違いによるハイスナッチの最 大挙上重量の経時的変化量 の 経 時 的 変 化 4. ま と め 筋力測定において運動中摂取群と運動 後摂取群の筋力向上に群間差はみられな か っ た .この こ と か ら ,ト レ ー ニン グ 時 の 栄養摂取には運動中および運動後どちら も同様に筋力向上に効果的なタイミング で あ ると 示 唆 さ れ た.今 後 は両 方 の タ イ ミ ン グ で摂 取 す る な ど,さ ら に効 果 的 な 摂 取 方 法 につ い て 検 討 す る 必 要 があ る . 引 用 ・参 考 文 献 Okamura,K et al.,(1997): Effect of amino acid and glucose administration during postexercise recovery on protein kinetics in dogs . Am.J . Physiol., 272, E1023-E1030
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