4. 国民所得:どこから来てどこへ行くの か(1) マクロ経済学2(南山大学2015) 1 概要 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 今回のねらい 長期と短期 経済諸部門の相互関係 供給の決定 生産関数の典型的仮定 企業の利潤最大化行動 完全競争市場における企業利潤 確認問題 マクロ経済学2(南山大学2015) 2 1. 今回のねらい • 第2~3回の講義では、GDP、消費者 物価指数、失業とは何かについて学 んだ。 • 今回から数回を使って、これら3つの データが理論的にどう決定されるかを 考える。 マクロ経済学2(南山大学2015) 3 1. 今回のねらい • 第4~5回の講義では需要と供給の均 衡を通じた、GDPの決定について学 ぶ。 • 特に今回の狙いは – 経済全体の相互関係をつかむ。 – マクロ経済の供給について理解する。 – ただし、テキスト第6章の範囲までは、価 格が伸縮的な長期の経済について学ぶ。 マクロ経済学2(南山大学2015) 4 2. 長期と短期 • 前期の では価格が自由に動 く世界について学んだ(はず)。 – 現実にはモノの価格は需給の変化を受けてそ んなにすぐ動くだろうか? – 例:需要の増える夏でもコーラの価格は冬とそ う変わらない。 • 実は、価格が伸縮的か硬直的かによって 経済政策の効果など、大きく異なってくる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 5 の価格伸縮性 • 長期と短期で価格の伸縮性は異なる。 – 長期:価格は伸縮的(古典派的な経済) – 短期:価格は硬直的(ケインズ的な経済) と考えて良いだろう。 • 本講義ではテキスト第6章の範囲まで、価 格が伸縮的な長期の経済について学ぶ。 • 短期の経済に入るときは改めてこの点に 触れる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 6 3. 経済諸部門の相互関係 • 需要や供給などの細かいことを学ぶ 前に、まず我々のいる経済を俯瞰し、 様々な経済主体の相互関係について イメージを持っておく。 マクロ経済学2(南山大学2015) 7 経済における貨幣のフロー循環図 所得 民間貯蓄 生産要素市場 要素費用支払い 金融市場 政府赤字 家計 企業 投資 租税 政府 政府購入 消費 財・サービス市場 マクロ経済学2(南山大学2015) 企業収入 8 経済主体と市場 • 「経済= の動き」と言われる ことがある。 • 前スライドの図を見ると、経済主体同士が ヒトの市場(要素市場、図では労働市場と 一致)、モノの市場(財・サービス市場)、カ ネの市場(金融市場)でつながれているこ とが分かる。 • 経済主体を市場がつなぐことでマクロ経済 が成り立っている。 マクロ経済学2(南山大学2015) 9 4. 供給の決定 • 財・サービスの総生産(供給)は何に よって決まるか? – 生産要素の投入量 – 企業の持つ生産技術 • 生産要素:資本や労働等で製品を作 る。 • :一定の生産要素を使って どれだけの生産量を実現できるか。 マクロ経済学2(南山大学2015) 10 生産要素 • 生産要素とは、財の生産に必要な投 入物のこと。 – 最も一般的なものは資本(K)と労働(L)。 – 中間財なども考えられるが、ここでは省 略。 • 経済に存在する資本と労働: K 、 L – K K 、L L のとき、資本と労働は マクロ経済学2(南山大学2015) 11 生産技術 • 生産技術とは、生産要素を製品に作 りかえる企業の技術のこと (input→output)。 • 経済学ではこれを以下のような生産 関数を用いて表現する。 コブ・ダグラス型生産関数: Y F ( K , L ) AK L1 マクロ経済学2(南山大学2015) 12 要素完全利用の例 • 仮に経済の資本と労働がすべて使わ れており、K K 、 L L であるとする。 このときの生産量は、 Y F (K , L ) Y よくある例で言えば: マクロ経済学2(南山大学2015) 13 三面等価と生産・所得の一致 所得 要素市場 分配面 要素費用支払い 一致! Yは所得とし 民間貯蓄 て解釈できる。 金融市場 政府赤字 家計 企業 投資 租税 政府 政府購入 消費 財・サービス市場 マクロ経済学2(南山大学2015) 生産面 企業収入 14 5. 生産関数の典型的仮定 • 規模に関する収穫一定 – すべての要素投入量をz倍にすると、生 産量もz倍になる。 • 限界生産力逓減 – 生産要素を一単位追加的に増やしたと きの生産量増分は、要素投入を増やす たび、段々小さくなる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 15 規模に関する収穫一定 • すべての要素投入量をz倍にすると、生産量もz 倍になる。 zY F ( zK , zL ) • よくある例( Y F ( K , L ) AK L1 )で言えば、 F ( zK , zL ) A ( zK ) ( zL ) 1 zAK L 1 zY マクロ経済学2(南山大学2015) 16 限界生産力逓減 • 生産要素を一単位追加的に増やした ときの生産量増分は、要素投入を増 やすたび、段々小さくなる。 • コピー機の例 – コピー機一台+労働者一人:多くのコ ピーが可能。 – :混雑して二 人目の生産力は一人目よりも低くなる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 17 限界生産力逓減 Y Y F (K , L) F ( K ,2) F ( K , 2 ) F ( K ,1) F ( K ,1) F ( K ,1) 0 1 2 L F ( K , 2 ) F ( K ,1) F ( K ,1) :要素投入↑⇒生産量の増大幅↓ マクロ経済学2(南山大学2015) 18 微分としての限界生産力 Y Y F (K , L) F ( K , L1 ) 0 限界生産力=生産関数の接線の傾き L1 L マクロ経済学2(南山大学2015) 19 6. 企業の利潤最大化行動 • 企業は利潤を最大化するように、生産要 素の投入量を決定する。 • 生産物価格を P 、賃金を W 、資本レンタ ル料を R とすれば、利潤は PY WL RK で表される。 • ここで、 の仮定を置き、企業に とって W 、 R は所与の価格であるとする。 マクロ経済学2(南山大学2015) 20 競争企業の仮定と要素価格決定 P 競争企業の仮定 財供給 財需要 均衡価格 0 Y W 労働供給 • 一企業が非常に小さい • 一企業の行動は市場の需 給に影響なし • 一企業の行動は市場価格 に影響なし(プライステイ カー) 労働需要 均衡賃金 0 L L マクロ経済学2(南山大学2015) 21 企業の利潤最大化行動 • 利潤は PF ( K , L ) WL RK 。 • を最大化するように企業は L と K を決 定する。一階条件は、 K P F ( K , L ) K R 0, K L P F ( K , L ) L W 0 労働の限界生産力(MPL, Marginal Product of Labor) 資本の限界生産力(MPK, Marginal Product of Capital) F ( K , L ) R P , F ( K , L ) L マクロ経済学2(南山大学2015) W P 22 「限界生産力=実質要素価格」の意味 • 「限界生産力>実質要素価格」のとき – 要素投入を増やせば、コスト以上に売上を増やすこと が出来る(要素投入を増やせば利潤が増える)。 – 「限界生産力=実質要素価格」まで要素投入を増やす。 • 「限界生産力<実質要素価格」のとき – 要素投入を減らせば、売上の低下以上にコストを減ら すことが出来る(要素投入を減らせば利潤が増える)。 – 「限界生産力=実質要素価格」まで要素投入を減らす。 が最適な要素投入条件 マクロ経済学2(南山大学2015) 23 7. 完全競争市場における企業利潤 • 生産要素はその限界生産力に等しいだけの実 質要素費用を受取る。 MPK R P , MPL W P • Y F ( K , L ) だけの生産が行なわれるときの、資 本・労働それぞれの実質受取り総額は以下。 MPK K , MPL L これらは企業にとっての マクロ経済学2(南山大学2015) 24 企業の利潤 • 企業の実質利潤は以下。 企業利潤 Y ( MPL L MPK K ) • オイラーの定理 – 生産関数Fが規模に関して収穫一定のとき、 Y F ( K , L ) MPL L MPK K or Y ( MPL L MPK K ) 0 ここで考える企業の利潤はゼロ!! マクロ経済学2(南山大学2015) 25 参考)オイラーの定理の例 1 Y AK L MPK AK 1 1 , MPL (1 ) AK L L 1 MPK K AK L 1 , MPL L (1 ) AK L 1 MPK K MPL L AK L マクロ経済学2(南山大学2015) Y 26 なぜ企業利潤がゼロになるのか? • ここで置いている三つの仮定が鍵 – 収穫一定の生産関数 – 企業の利潤最大化行動 – 競争的市場 • 競争的市場では、利潤が稼げる限り 企業が参入を繰り返す。結果、利潤 はゼロとなる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 27 8. 確認問題 1. コブ・ダグラス型生産関数が、規模に関する収 穫一定を満たすことを示せ。 2. コブ・ダグラス型生産関数が、限界生産力逓減 法則を満たすことを示せ。 3. 価格をP、生産関数をF(K,L)、賃金をW、資本レ ンタル率をRとして、企業の利潤最大化条件を 導出せよ。 4. 完全競争市場&規模に関する収穫一定の生産 関数の場合において、企業利潤がゼロになるこ とを示せ。 マクロ経済学2(南山大学2015) 28
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