6. 失業 マクロ経済学2(南山大学2015) 1 概要 1. 2. 3. 4. 5. 6. 今回のねらい 失業率と自然失業率 自然失業率の決定 失業の二つの原因 失業のパターン 確認問題 マクロ経済学2(南山大学2015) 2 1. 今回のねらい • 第4~5回では、GDPの理論的決定に ついて学んだ。 • 今回は失業の理論的決定について学 ぶ。 • 今回の狙いは – 失業の決定要因を理解する。 – 日本の を概観する。 マクロ経済学2(南山大学2015) 3 2. 失業率と自然失業率 • 労働力調査 – 15歳以上(米国では16歳以上)の世帯 員を、就業者(一般会社員等)、失業者 (求職者等)、非労働力(学生、年金生活 者等)に分類。 • 就業者+失業者=労働力人口 • 労働力人口のうちの失業者の比率。 マクロ経済学2(南山大学2015) 4 2010年7月の労働力配分 4459 40% 6246 57% 341 3% (単位:万人) 就業者数 完全失業者 非労働力人口 出所:統計局(http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htm#hyo_2) マクロ経済学2(南山大学2015) 5 1953M1 1955M6 1957M11 1960M4 1962M9 1965M2 1967M7 1969M12 1972M5 1974M10 1977M3 1979M8 1982M1 1984M6 1986M11 1989M4 1991M9 1994M2 1996M7 1998M12 2001M5 2003M10 2006M3 2008M8 (万人) 労働力の変遷 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 0 就業者数 完全失業者 非労働力人口 出所:統計局(http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htm#hyo_2) マクロ経済学2(南山大学2015) 6 1953M1 1955M8 1958M3 1960M10 1963M5 1965M12 1968M7 1971M2 1973M9 1976M4 1978M11 1981M6 1984M1 1986M8 1989M3 1991M10 1994M5 1996M12 1999M7 2002M2 2004M9 2007M4 2009M11 完全失業者数(万人) 400 350 300 250 4 200 3 150 2 100 50 0 マクロ経済学2(南山大学2015) 完全失業率(%) 失業者数と失業率 6 5 1 0 完全失業率 完全失業者 出所:統計局(http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htm#hyo_2) 7 失業率の国際比較 14.0 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 米国 ユーロ圏 日本 中国 2008 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 1980 0.0 韓国 出所:世界銀行(http://data.worldbank.org/) マクロ経済学2(南山大学2015) 8 自然失業率とは? • 経済が (「定常状 態」と呼ぶ)における失業率。 • 端的には、短期的な変動を除いた失業率 のトレンド的な推移に対応している。 • ここでは、テキストに従い、失業率の前後 各120ヶ月(10年)の平均値として自然失業 率を算出している。 マクロ経済学2(南山大学2015) 9 1953M1 1955M5 1957M9 1960M1 1962M5 1964M9 1967M1 1969M5 1971M9 1974M1 1976M5 1978M9 1981M1 1983M5 1985M9 1988M1 1990M5 1992M9 1995M1 1997M5 1999M9 2002M1 2004M5 2006M9 2009M1 失業率と自然失業率 6 5 4 3 2 1 0 完全失業率 自然失業率 以降、長期的な趨勢である自然失業率の決定について考える。短期的な 変動についてはまた後の講義で扱う。 マクロ経済学2(南山大学2015) 10 3. 自然失業率の決定 • L:労働力、E:就業者数、U:失業者数、s: 就業者の離職率、f:失業者の就職率。 • L=E+U。失業率=U/L。 • 定常状態(自然失業率が一定とするデータでは 安定的)では、新たに就職する人の数(fU)= 新たに失業する人の数(sE)であるはず。 fU sE :自然失業率の決定式 マクロ経済学2(南山大学2015) 11 例と政策的示唆 • 例:離職率1%(s=0.01)、 自然失業率 s f s 。 0 .01 0 .2 0 .01 0 .05 – 自然失業率は約5%。 • 自然失業率を下げるには、離職率を下げるか、就 職率を上げるかせねばならない。 – 離職率と就職率の調整が失業率対応の鍵。 • そもそもなぜ失業が発生するのか? マクロ経済学2(南山大学2015) 12 4. 失業の二つの原因 • 求人と求職のミスマッチ – 企業:求める人材となかなか出会えない、 家計:求める仕事となかなか出会えない。 – 摩擦的失業の発生。 • 賃金の硬直性 – 労働の需給が一致するまで賃金が調整 されない。 – 。 マクロ経済学2(南山大学2015) 13 4.1 求人と求職の • 適切な職、適切な人材を探すには時間を 要する。出会えるまでは失業が発生。 • 例 – A社の内定が出たが、本当はB社に入りたい。 内定を辞退し、将来B社に挑戦。当面は失業。 – ガソリン車から電気自動車への需要変化。自 動車企業が機械部門を縮小。労働者が失業。 – キャリアアップを目指して勤め先を退社。 マクロ経済学2(南山大学2015) 14 公共政策と • 職業安定所 – マッチングを促進し、就職率を高める。 • 職業訓練プログラム – 需要の高い技術を指導、就職率を高める。 • 失業保険 – 失業した際、勤務時給与の6割程度が支給さ れる(ケースはまちまち)。 – 「失業しても大丈夫」とのモラルハザードを助 長し、失業を増大させる可能性もある。 マクロ経済学2(南山大学2015) 15 4.2 賃金の • 第4回の講義で見た労働需給の図では、 実質賃金が需給に応じて伸縮的に動くこと が仮定されていた。 – 現実には賃金(例えばバイトの時給)はそれほ どすぐに変化しない。 • 実質賃金が限界生産性と異なる水準に留 まっているとき、待機失業が発生する。 マクロ経済学2(南山大学2015) 16 賃金硬直性による失業の発生 労働供給 W 待機失業 高止まりした 市場賃金 均衡賃金 労働需要 0 L 市場賃金が均衡賃金に比べて高止まりすることで失業が発生。 マクロ経済学2(南山大学2015) 17 賃金硬直性の原因(3つの例) • 最低賃金法 – 使用者が労働者に最低限支払わねばならない賃金水 準を定めた法。 – 愛知県732円、東京都:789円、大阪府779円。 • 労働組合の独占的交渉力 – 労働組合の賃上げ交渉が賃金の低下を妨げる。 • – 高い賃金を与えることで労働者の生産性を向上させる。 – 労働の超過供給があっても、賃金水準が高止まりする。 マクロ経済学2(南山大学2015) 18 5. 失業のパターン • 日本の失業パターンについて、以 下4つの軸でデータを概観する。 – 男女別失業者数 – 年齢別失業者数 – 理由別失業者数 – 世帯主との マクロ経済学2(南山大学2015) 19 男女別失業者数(2010年7月) 130 38% 210 62% (単位:万人) 男性 女性 出所:統計局(http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htm#hyo_2) マクロ経済学2(南山大学2015) 20 1953M1 1955M6 1957M11 1960M4 1962M9 1965M2 1967M7 1969M12 1972M5 1974M10 1977M3 1979M8 1982M1 1984M6 1986M11 1989M4 1991M9 1994M2 1996M7 1998M12 2001M5 2003M10 2006M3 2008M8 (万人) 男女別失業者数(長期時系列) 250 200 150 100 50 0 男性 女性 マクロ経済学2(南山大学2015) 21 年齢別失業者数(2010年7月) 15 4% 50 15% 69 20% 81 24% 58 17% 67 20% (単位:万人) 15~24 25~34 35~44 45~54 マクロ経済学2(南山大学2015) 55~64 65~ 22 1970M1 1971M9 1973M5 1975M1 1976M9 1978M5 1980M1 1981M9 1983M5 1985M1 1986M9 1988M5 1990M1 1991M9 1993M5 1995M1 1996M9 1998M5 2000M1 2001M9 2003M5 2005M1 2006M9 2008M5 2010M1 (万人) 年齢別失業者数(長期時系列) 120 100 80 60 40 20 0 15~24 25~34 35~44 45~54 マクロ経済学2(南山大学2015) 55~64 65~ 23 理由別失業者数(2010年7月) 39 12% 26 8% 37 11% 17 5% 108 32% 107 32% (単位:万人) 定年又は雇用契約の満了 自発的離職 収入を得る必要が生じたから 勤め先や事業の都合 学卒未就職者 その他 マクロ経済学2(南山大学2015) 24 定年又は雇用契約の満了 自発的離職 収入を得る必要が生じたから マクロ経済学2(南山大学2015) 2010M5 2009M1 2009M7 2009M2 2008M9 2008M4 2007M1 2007M6 2007M1 2006M8 2006M3 2005M1 2005M5 2004M1 2004M7 2004M2 2003M9 2003M4 2002M1 2002M6 2002M1 理由別失業者数(長期時系列) (万人) 140 120 100 80 60 40 20 0 勤め先や事業の都合 学卒未就職者 その他 25 世帯主との続柄別失業者数 (2010年7月) 51 15% 88 26% 42 12% 157 47% (単位:万人) 世帯主 世帯主の配偶者 その他の家族 マクロ経済学2(南山大学2015) 単身世帯 26 1968M1 1969M1 1971M7 1973M4 1975M1 1976M1 1978M7 1980M4 1982M1 1983M1 1985M7 1987M4 1989M1 1990M1 1992M7 1994M4 1996M1 1997M1 1999M7 2001M4 2003M1 2004M1 2006M7 2008M4 2010M1 (万人) 世帯主との続柄別失業者数(長 期時系列) 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 世帯主 世帯主の配偶者 その他の家族 マクロ経済学2(南山大学2015) 単身世帯 27 6. 確認問題 1. 労働力人口の定義を書け。 2. 自然失業率の定義を答えよ。 3. 離職率が1%、就職率が20%の時の、自 然失業率の理論値を求めよ。 4. 失業の二つの原因について説明せよ。 5. 賃金硬直性による失業の発生メカニズム について、図を用いて説明せよ。 マクロ経済学2(南山大学2015) 28
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