第16回 総供給 マクロ経済学2(南山大学2015) 1 概要 1. 2. 3. 4. 5. 6. 今回のねらい AS曲線 AD-ASモデル インフレ・失業とフィリップス曲線 短期と長期のフィリップス曲線 要約 マクロ経済学2(南山大学2015) 2 1. 今回のねらい • ここまでの講義では短期分析フレームの需要 側について学び、AD曲線の具体的導出を 行った。 • 特にここ数回の講義ではマンデル=フレミン グ・モデルを用いて、小国開放経済の需要決 定について学んだ。 • 今回の狙いは – について理解する。 – AD-AS分析について理解する。 – フィリップス曲線について理解する。 マクロ経済学2(南山大学2015) 3 2. AS曲線 • 以前扱った長期と短期のAS曲線 – 長期:Y-P平面で垂直なLRAS(生産量一定)。 – 短期:Y-P平面で水平なLRAS(物価一定)。 • 以前に扱った短期ASは物価一定の極端なケース。 現実には物価は緩慢に調整される。 – 右上がりの短期AS曲線がより一般的。 Y Y (P P ) e • ここでは硬直賃金モデルを用いて右上がりの短期 AS曲線を導出する。 マクロ経済学2(南山大学2015) 4 • 名目賃金が硬直的。 • 労働は企業が需要する分だけ雇用される。 • 企業の生産技術は生産関数によって記述さ れる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 5 労働需要関数と生産関数 • 労働需要関数 W L L P , L () (W P ) 0 • 生産関数 Y Y ( L ), Y ( ) L 0 マクロ経済学2(南山大学2015) 6 実質賃金の決定 • 労働者と企業の賃金交渉 – 目標実質賃金 と期待物価水準 P e をもとに、名 目賃金水準を交渉により決定。 W P e • 実質賃金の決定 – 実際の物価と期待物価が乖離したときに実質賃 金が目標実質賃金から乖離する。 マクロ経済学2(南山大学2015) 7 AS曲線の導出 L (労働需要) L (生産関数) 0 Y1 L2 L1 0 W P2 W P1 W P マクロ経済学2(南山大学2015) Y Y2 8 AS曲線の導出 P P2 P1 0 Y1 Y2 マクロ経済学2(南山大学2015) Y 9 短期と長期のAS曲線 P LRAS SRAS : Y Y ( P P ) e SRAS ( P P ) Y 0 マクロ経済学2(南山大学2015) 10 3. AD-ASモデル • – AD曲線:需要者が需要したいと考える物価 Pと生産量Yの組み合わせの軌跡。 – AS曲線:供給者が供給をしたいと考える物 価Pと生産量Yの組み合わせの軌跡。 – ADとASの交点:需要者と供給者の両方が 満足する物価Pと生産量Yの組み合わせ。 マクロ経済学2(南山大学2015) 11 AD-ASモデル P 需要者と供給者を満足させるPと Yの組み合わせ AS AD Y 0 マクロ経済学2(南山大学2015) 12 3-1. 財政・金融政策の効果 • IS-LMモデルにおける財政・金融政策 – – 金融緩和:LM右シフト • AD-ASモデルにおける財政・金融政策 – AD曲線:IS-LMモデルから導出 – 財政・金融政策はAD曲線への影響を通じて、Yと Pを変化させる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 13 財政拡大の効果 r LM 2 ( P P2 ) G↑ LM 1 ( P P1 ) IS IS 0 Y2 Y2 Y1 マクロ経済学2(南山大学2015) Y1 Y 14 財政拡大の効果 P G↑ AS AD’ AD Y 0 マクロ経済学2(南山大学2015) 15 金融緩和の効果 r LM 2 ( P P2 ) M↑ 0 Y2 Y2 L M 2 Y1 マクロ経済学2(南山大学2015) LM 1 ( P P1 ) M↑ L M 1 Y1 Y 16 金融緩和の効果 P M↑ AS AD’ AD Y 0 マクロ経済学2(南山大学2015) 17 3-2. 「短期均衡→長期均衡」の調整 P LRAS SRAS2 P3 P3 SRAS1 e C P2 P2 P1 P1e e B A AD1 0 Y3 Y1 Y AD2 Y2 Y 長期的な物価の上昇により、長期均衡へ収束。 マクロ経済学2(南山大学2015) 18 • 短期均衡から長期均衡への調整過程 短期的に生産が増大。 物価が徐々に上昇し、生産も徐々に減少。 長期的に生産は完全雇用水準に収束。 • 短期的な価格硬直性の存在によって、短期 均衡と長期均衡が乖離。 マクロ経済学2(南山大学2015) 19 4. インフレ・失業とフィリップス曲線 • インフレ率と失業率 – インフレ率=物価の変化率。 – 失業率=労働力人口に占める失業者の割合。 • フィリップス曲線 – 1950年代末にA.W. Phillipsがイギリスのデータを用い て観察した、名目賃金上昇率と失業率の間のマイナ スの相関関係。 – 名目賃金上昇率とインフレ率に密接な正の相関があ るため、インフレ率と失業率の間のマイナス相関(物 価版フィリップス曲線)としても認識されている。 – 一般に短期的にはこうした関係が見られる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 20 (1981年~2009年) 6.0 5.0 CPIインフレ率(%) 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 -1.0 -2.0 失業率(%) 出所:統計局(http://www.e-stat.go.jp/)データより作成 マクロ経済学2(南山大学2015) 21 AD-AS分析とフィリップス曲線 • AD-AS分析 – 景気刺激策(AD曲線が右シフト)を通じて物価上 昇(インフレの発生)、景気過熱(失業の減少)が 発生。 – インフレと失業の負の相関を示唆。 • フィリップス曲線 – インフレと失業の負の相関を示唆。 • AD-AS分析とフィリップス曲線は同一のマクロ 経済の考えを表現している。 マクロ経済学2(南山大学2015) 22 AD-AS曲線で見る P LRAS SRAS2 SRAS1 C B A AD1 AD2 Y 0 短期的なインフレ・失業のトレードオフ、長期的な完全雇用を示唆。 マクロ経済学2(南山大学2015) 23 AS曲線を用いたフィリップス曲線の導出 • 短期AS曲線 Y Y (P P ) PP e e • 供給ショック を追加 PP e 1 1 (Y Y ) (Y Y ) • 両辺から P1 を差し引く ( P P1 ) ( P P1 ) e 1 マクロ経済学2(南山大学2015) (Y Y ) 24 AS曲線を用いたフィリップス曲線の導出 • インフレ率を用いて書き換え e • 1 (Y Y ) (第3回参照) – 「失業率が上昇すると、労働力が減って生産(実質GDP) が減る」とするアーサー・オークンの仮説。 1 (Y Y ) ( u u ) n • 両式より以下のフィリップス曲線が得られる e (u u n ) マクロ経済学2(南山大学2015) 25 フィリップス曲線 e (u u n ) u 0 u-π平面で右下がりのフィリップス曲線。 マクロ経済学2(南山大学2015) 26 5. 短期と長期のフィリップス曲線 • – インフレの発生時、家計が「自分の名目賃金のみ が上昇した」と錯覚して消費を増やす現象。 – 短期的に期待インフレ率と実際のインフレ率が乖 離。 • 短期的には貨幣錯覚が存在し、長期的には 貨幣錯覚が解消されるとする。 • 短期と長期のフィリップス曲線が異なる形状 をとる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 27 貨幣錯覚とフィリップスカーブ • インフレ発生( 長期フィリップスカーブ uu n 1 1 e 1 e 0 e 1 )。 • 貨幣錯覚により消費・生産 増大。 • 失業減少( u n u1 )。 • 期待インフレ率修正 e ( 1 1 )。 • 生産減少、失業増大。 0e 0 a 短期フィリップスカーブ e (u u n ) 0 u1 u0 u n u マクロ経済学2(南山大学2015) 28 長期と短期のフィリップス曲線 • 短期フィリップス曲線 – 短期的に貨幣錯覚が存在。 – インフレと失業の間にトレードオフが発生する。 – 右下がりのフィリップス曲線。 • – 長期的に貨幣錯覚が解消。 – 失業率は自然失業率水準に収束。 – 垂直なフィリップス曲線。 マクロ経済学2(南山大学2015) 29 6. 確認問題 • 図を使ってAS曲線を導出せよ。 • 金融緩和が所得と価格に与える影響につい て、AD-ASモデルの図を用いて説明せよ。 • フィリップス曲線とは何か、言葉で説明せよ。 • AS曲線を用いてフィリップス曲線を数学的に 導出せよ。 • 貨幣錯覚とは何か、言葉で説明せよ。 マクロ経済学2(南山大学2015) 30
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