第3回講義 - Faculty Server, Faculty of Economics, Keio

マクロ経済学初級I
第7回講義
生産性、総生産、雇用
生産性、総生産、雇用の
講義の目的
• 何が総生産の主要な決定要因かを理解す
る。→生産関数を理解する
• 労働の需要と供給の決定要因を理解する。
• 古典派の労働市場均衡モデルを理解する。
講義項目
• 7.1 生産関数:
経済はどれだけの生産物を産出できるか?
• 7.2 労働需要
生産者たちはどれだけ労働力を需要するか?
• 7.3 労働供給
労働者たちはどれだけ労働力を供給するか?
• 7.4 労働市場の均衡
生産関数
生産要素
• 資本
• 労働力
• その他(資源、土地、エネルギー)
• 生産要素の生産性は技術と生産活動の経
営に依存して決まる.
生産関数
• Y=A・F(K, L)
K:資本投入量 L:労働投入量
Y:総生産量
A:総生産性(Total Factor Productivity)
を表す外生変数(パラメター)
コブ-ダグラス型生産関数 Y=A・K0.7 L0.3
資本の限界生産力
• 資本の限界生産力
(marginal product of capital: MPK)
資本投入量を追加的に1単位増やしたときに
生産量がどれだけ増えるかを表す数値。
⊿K単位資本投入を増やしたときに、⊿Y単位生
産量が増えるなら、資本の限界生産力は
⊿Y/⊿K
という比率で表せる。
労働の限界生産力
• 労働の限界生産力
(marginal product of labor: MPL)
労働投入量を追加的に1単位増やしたときに
生産量がどれだけ増えるかを表す数値。
⊿L単位労働投入を増やしたときに、
⊿Y単位生産量が増えるなら、
労働の限界生産力は
⊿Y/⊿L
という比率で表せる。
生産関数の形状について仮定
仮定
• 限界生産力は正である。
• 限界生産力は逓減する。
生産関数: 資本投入量と生産量の関係
Y
Y=A・F(K, L)
Y2
Y1
K
K1
K2
資本の限界生産力
Y
Y=A・F(K, L)
ΔK
ΔY
ΔY
ΔK
K
K1
K2
生産関数: 労働投入量と生産量の関係
Y
Y=A・F(K, L)
Y2
Y1
L
L1
L2
労働の限界生産力
Y
Y=A・F(K, L)
ΔL
ΔY
ΔY
ΔL
L
L1
L2
労働の限界生産力
MPL
ΔY/ΔL
L
L1
L2
供給ショック
• 供給ショックは、一定量の生産要素投入の
もとでの生産量を変化させる。
• 正のショック(生産量を増大する)と負の
ショック(生産量を減少させる)がある。
• 正のショック:発明、良い天候など。
• 負のショック:悪天候、災害、石油などの天
然資源価格の上昇、規制の導入など。
労働の限界生産力を低下させる負の供給ショック
Y
Y=A・F(K, L)
L
労働の限界生産力を低下させる負の供給ショック
MPL
ΔY/ΔL
L
L1
L2
7.2 労働需要
問い
• 労働投入量 はどのように決まるのか?
• 労働の需要と供給で決まる。
• Q1.労働の需要はどのようにきまるのか?
• Q2.労働の供給はどのようにきまるのか?
Q1:企業はどれだけの労働力を
雇いたいか?
•
•
•
•
•
仮定
資本の投入量は一定とする。
労働者は皆同様の行動をとるとする。
労働市場は競争的である
企業は利潤最大化する。
答え
• 労働の限界生産力が実質賃金に等しくな
るまで労働力を雇う。[限界原理]
•
MPL=W/P
が成立するような労働投入量L*を選ぶ。
P:生産物価格(名目)
W:名目賃金
W/P:実質賃金
労働需要量の決定
限界生産力(MPL)の大きさが
実質賃金(W/P)と等しくなるような
労働投入量L*を決定するのが
利潤最大化にかなう。
MPL
ΔY/ΔL
W/P
L
L*
総労働需要
• 総労働需要は企業の労働需要を全ての企
業についてたしあわせたものである。
• 労働の限界生産力に影響をあたえる供給
ショックが総労働需要に影響をあたえる。
労働供給
労働供給は
労働者個人が決定する。
• 個人が労働と余暇の時間配分を決めた結
果、個人の労働供給量が決まる。
• そして、総労働供給は個人の労働供給量
を全ての労働者についてたしたものだ。
労働と余暇のトレードオフ
• 労働者の効用(満足度)は労働時間と余暇
時間の双方に依存する。
• 追加的にもう一単位時間働くことの費用
(苦痛)と便益(賃金収入獲得)を比較して
働くかどうかを決める。
• [限界原理] 労働の限界便益(実質賃金)
が労働の限界不効用(苦痛)と等しくなると
ころまで働く(労働を供給する)。
実質賃金と労働供給の関係
• 実質賃金の上昇は労働供給に対して
代替効果と
所得効果をもたらす。
• 代替効果:実質賃金の上昇は労働の余暇
に対する相対価格の上昇であるので、個
人は余暇を減らし、労働供給量を増やす
誘因を持つ。
• 所得効果:実質賃金の上昇は個人に対し
て所得の増大をもたらす。所得が増大す
れば個人は労働時間をへらし、余暇を増
やす。⇒労働供給量の減少。
• 実質賃金の上昇があったとき、
[ケース1] 代替効果が所得効果を上回るな
らば労働供給量は増える。
[ケース2] 所得効果が代替効果を上回るな
らば労働供給量は減る。
純粋な代替効果
• 一時的な実質賃金の増大:
個人にとって、恒常的な所得の増大をもた
らすものではない、したがって、所得効果
ははたらかず、代替効果だけがはたらく。
個人は一時的な実質賃金の増大によって、
そのときの稼ぎを増やそうとして労働供給
を増やす。
純粋な所得効果
• 宝くじにあたる:
宝くじにあたった個人は、所得がふえること
になる。実質賃金は変化しなくても、これに
よってこの個人は労働時間を減らす。
長期的な実質賃金の上昇と
労働供給
• 長期的な実質賃金の上昇は
代替効果として労働供給量を増大させる働きを
もつが、
同時に所得増大にもつながるので、所得効果
として労働供給量を減少させる効果をもつ。
• 実質賃金が上昇が見込まれる期間がながけ
ればながいほど所得効果は大きい。⇒労働供
給量が減少する可能性がある。
実際の労働供給の観察結果
• 一時的な実質賃金の上昇に対して、労働
供給は増える。
• 恒常的な実質賃金の上昇は、労働供給を
減らす。
労働者の労働供給曲線
一時的な実質賃金の上昇に対して、労働供給は増える。
W/P
実質賃金
労働供給量
The workweek and real GDP per person
in 36 countries
総労働供給曲線
• 個人の労働供給量を全ての個人について
たしあわせたものが総労働供給量だ。
• 実質賃金とその実質賃金のもとでの総労
働供給量のくみあわせが総労働供給曲線
だ。
7.4 労働市場均衡
均衡:労働供給量と需要量が
一致すること
• 均衡において労働需給量が完全雇用の
雇用水準となる。 (Lf で表すことにする)
(Lfのfは完全雇用full employmentの頭文字だ)
•
また均衡実質賃金が定まる。
(w*で表すことにする)
実質賃金
総労働供給曲線
均衡実質
賃金 w*
総労働需要曲線
Lf
完全雇用雇用水準
完全雇用生産水準
•
Yf = A・F(K, Lf )
• 完全雇用労働量が投入されているときの
総生産量を完全雇用生産水準という。
( Yf であらわす)