第14回 開放経済下の総需要(1) マクロ経済学2(南山大学2015) 1 概要 1. 2. 3. 4. 5. 今回のねらい マンデル=フレミング・モデル 為替相場制度 変動為替レート制のMFモデル 要約 マクロ経済学2(南山大学2015) 2 1. 今回のねらい • 前回までの講義では短期均衡分析の総需要 側である、IS-LMモデルおよびAD曲線ついて 学んだ。 • AD曲線は需要者が納得する物価と所得の組 み合わせの軌跡。 • 今回の狙いは – について理解する。 – (変動相場制下の)マンデル=フレミング・モデル について理解する。 マクロ経済学2(南山大学2015) 3 2. マンデル=フレミング・モデル • マンデル=フレミング・モデルとは – 開放経済版IS-LMモデル – IS*曲線とLM*曲線。 • 短期分析のモデルに開放経済の影響を 取り入れたモデル。 – 価格が硬直的。 – 完全な資本移動、小国開放経済。 マクロ経済学2(南山大学2015) 4 IS*曲線とLM*曲線 • – 小国開放経済における財市場の需給を均衡させ る名目為替レートと所得の組み合わせの軌跡。 • LM*曲線 – 小国開放経済における貨幣市場の需給を均衡さ せる名目為替レートと所得の組み合わせの軌跡。 • IS*曲線とLM*曲線の交点 – 小国開放経済における財・貨幣市場を同時均衡 させる名目為替レートと所得の組み合わせ。 マクロ経済学2(南山大学2015) 5 2-1. IS*曲線 • IS*曲線 – 小国開放経済における財市場の需給を均衡させ る名目為替レートと所得の組み合わせの軌跡。 • 小国開放経済における財市場需給均衡 • 財市場の均衡条件を名目為替レートと所得 の関係として変形すれば、IS*曲線が得られる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 6 財市場とIS*曲線 • 小国開放経済における財市場均衡 Y C I G NX • 消費関数、投資関数、純輸出関数 C C 0 c (Y T ) I I 0 vr NX NX 0 j , eP マクロ経済学2(南山大学2015) * P 7 小国開放経済における金利の決定 • 閉鎖経済のもとでは「財市場を均衡させるよ うに金利が決定する」と学んだ。 • 小国開放経済 – (完全な資本移動を仮定) – 自国は世界経済に対して非常に小さく、自国金 利は世界金利に一致する。 • 自国金利( r )は常に世界金利( r )一致。 マクロ経済学2(南山大学2015) 8 IS*曲線の導出 Y C I G NX Y C 0 c (Y T ) I 0 vr G NX 0 j e P e P (1 c ) jP * Y P jP * P * ( C 0 cT I 0 vr G NX 0 ) IS*曲線:e-Y平面で右上がりの曲線 マクロ経済学2(南山大学2015) 9 の図による理解 e (純輸出関数) E (ケインジアンの交差図) E Y r NX (e ) e1 p E1 p E0 e↑ e0 0 NX 0 NX 1 NX 0 マクロ経済学2(南山大学2015) Y0 Y1 Y 10 IS*曲線 e IS e1 e0 0 Y0 Y1 Y e-Y平面で右上がりのIS*曲線が得られる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 11 2-2. LM*曲線 • LM*曲線 – 小国開放経済における貨幣市場の需給を均衡さ せる名目為替レートと所得の組み合わせの軌跡。 • 小国開放経済における貨幣市場需給均衡 • 貨幣市場の均衡条件を名目為替レートと所 得の関係として変形すれば、LM*曲線が得ら れる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 12 貨幣市場とLM*曲線 • 小国開放経済における貨幣市場均衡 M P s L (Y , r ) • 貨幣需要関数 L (Y , r ) L0 kY lr マクロ経済学2(南山大学2015) 13 LM*曲線の導出 M M s s P L (Y , r ) P L0 kY lr LM*曲線:e-Y平面で垂線 マクロ経済学2(南山大学2015) 14 LM*曲線導出の図による理解 r (LM曲線と世界金利) LM r Y 0 マクロ経済学2(南山大学2015) 15 e LM 0 Y e-Y平面で垂直なLM*曲線が得られる。 マクロ経済学2(南山大学2015) 16 マンデル=フレミング・モデル e LM IS 均衡為替レート 0 Y マクロ経済学2(南山大学2015) 17 3. 為替相場制度 • 変動相場制度 – 為替相場が経済状態の変化に対応して自由に 変動する制度。 – 日本、米国、ユーロ圏等。 • – 特定の通貨等に対して為替相場を固定する制度。 – マレイシア、アラブ首長国連邦、ネパール等。 MFモデルでは異なる為替相場制度の分析が可能。 マクロ経済学2(南山大学2015) 18 為替相場制度の分類 自由変動(35) 変 動 相 場 制 度 ハードペッグ(48) 管 理 フ ロ ー ト 制 度 B B C ル ー ル バ ス ケ ッ ト ・ ペ ッ グ ド ル ・ ペ ッ グ カ ド 通 レ ル 貨 ン 化 同 シ 盟 ー ・ ボ ー ド ()内は国の数(http://www.imf.org/external/np/mfd/er/2004/eng/1204.htmを参照) マクロ経済学2(南山大学2015) 19 4. 変動為替レート制のMFモデル • 変動為替レート制を採用する小国開放経済 について分析を行う。 • 財政拡大、金融緩和、輸入規制の効果を見 る。 • 固定為替レート制については次回取り扱う。 マクロ経済学2(南山大学2015) 20 財政拡大の効果 • IS*曲線 e P (1 c ) jP * Y P jP * ( C 0 cT I 0 vr G NX 0 ) * ( C 0 cT I 0 vr G NX 0 ) • e P (1 c ) jP * Y P jP マクロ経済学2(南山大学2015) 21 財政拡大とIS*曲線のシフト e LM IS 1 IS 2 0 Y 名目為替レート下落(自国通貨高)、所得不変 マクロ経済学2(南山大学2015) 22 変動相場制下の財政拡大効果 • 自国通貨高、 。 – 閉鎖経済では財政拡大に伴い所得が増大。 – この違いはなぜ生まれるか? • 自国通貨高→純輸出減少→所得不変。 – – – – 財政拡大、自国金利上昇圧力が発生。 自国への資本流入(自国金利=外国金利)。 自国通貨高、純輸出減少(財政拡大効果を相殺)。 所得は不変。 • 閉鎖経済と異なり、小国開放経済で投資は不変。 自国通貨高が純輸出を減少させている。 マクロ経済学2(南山大学2015) 23 金融緩和の効果 • LM*曲線 s 1M Y L 0 lr k P • 金融緩和 s 1M Y L 0 lr k P マクロ経済学2(南山大学2015) 24 金融緩和と LM*曲線のシフト e LM 1 LM 2 0 IS Y 名目為替レート上昇(自国通貨安)、 マクロ経済学2(南山大学2015) 25 変動相場制下の金融緩和効果 • 自国通貨安、所得増大。 – 閉鎖経済同様、金融緩和に伴い所得が増大。 – 影響経路は閉鎖経済と異なる。 • 自国通貨安→純輸出増大→所得増大。 – – – – 金融緩和、自国金利下落圧力が発生。 外国への資本流出(自国金利=外国金利)。 自国通貨安、純輸出増大(金融緩和効果を増幅)。 所得は増大。 • 閉鎖経済と異なり、ここでも投資は不変。自国通 貨安が純輸出を増大させている。 マクロ経済学2(南山大学2015) 26 • IS*曲線 e P (1 c ) jP * Y P jP * ( C 0 cT I 0 vr G NX 0 ) * ( C 0 cT I 0 vr G NX 0 ) • 輸入規制 e P (1 c ) jP * Y P jP マクロ経済学2(南山大学2015) 27 輸入規制とIS*曲線のシフト e LM IS 1 IS 2 0 Y 名目為替レート下落(自国通貨高)、所得不変 マクロ経済学2(南山大学2015) 28 変動相場制下の輸入規制効果 • 自国通貨高、所得不変。 • 自国通貨高→純輸出減少→所得不変。 – 輸入規制が計画支出を増大させ、自国金利上昇 圧力が発生。 – 自国への資本流入(自国金利=外国金利)。 – 自国通貨高、純輸出減少(輸入規制効果を相殺)。 – 所得は不変。 • 輸入規制に伴う自国通貨高と純輸出減少が、 輸入規制の影響を完全に相殺。 マクロ経済学2(南山大学2015) 29 変動相場制下の政策効果 • 財政拡大 – 自国通貨高、所得不変。 – 閉鎖経済では所得増大。 • 金融緩和 – 自国通貨安、所得増大。 – 閉鎖経済の所得増大幅より大きい。 • 輸入規制 – 自国通貨高、所得・純輸出不変。 マクロ経済学2(南山大学2015) 30 5. 確認問題 1. IS*曲線を数学的に導出せよ。 2. 変動相場制において財政拡大が名目為替レートに 与える影響について、MFモデルの図を用いて説明 せよ。 3. 変動相場制において金融緩和が名目為替レートに 与える影響について、MFモデルの図を用いて説明 せよ。 4. 変動相場制において輸入規制が名目為替レートに 与える影響について、MFモデルの図を用いて説明 せよ。 マクロ経済学2(南山大学2015) 31
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