第2問解説

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受験番号
局
名
番
号
平成 23 年度論文式本試験解答・企業法・第2問
第 2 問 答案用紙
(企 業 法)
評
点
(注)解答は,この答案用紙1枚で行うこと。
1
問1
分配可能額による制限の趣旨
株式会社においては、株主が有限責任しか負わず(104 条)、会社財産以外に会社債権者の債権の担保
となるものがない。この観点から、会社債権者に対する弁済に先立って有限責任を享受する株主に対し
会社財産を払い戻して、会社債権者を害することがないよう、分配可能額がなければ剰余金の配当をす
ることができないとしている(461 条 1 項)
。
2(1) 株主の責任
株主は、乙会社に対し、違法配当であることについて善意である場合を含め、交付を受けた金銭の
返還をする債務を負担する(462 条 1 項柱書き)
。取締役からの株主に対する求償が悪意の株主に限定
されているが(463 条 1 項)、これは、自ら違法な配当に関与した業務執行者等が善意の株主に求償す
るのは不当であると考えて、求償の相手方を悪意の株主に限定したものにすぎない。
(2) 代表取締役Aの責任
Aは、乙会社に対し、分配した1億円の支払義務を負担する(462 条 1 項、2 項)。会社が多数の株
主に対し返還請求をするのは事実上困難であるから、違法配当に関与した取締役等に支払責任を課し
たのである。取締役等が、自分が職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときはこの
支払義務を免れるが(462 条 2 項)
、Aは自ら計算書類を粉飾したので、この免除規定は適用し得ない。
(3) 監査役Bの責任
監査役について 462 条の適用はないが、監査役は、職務上、取締役の職務執行を監査し、監査報告
を作成しなければならず(381 条 1 項)、この任務を懈怠した場合には、会社に生じた損害を賠償する
責任を負う(423 条 1 項)
。Bは、分配可能額が 1000 万円足らずであったのに、これを1億円も水増
しした計算書類について、適正意見を付けたのであるから、任務を懈怠した可能性が強い。従って、
乙会社がBの任務懈怠を立証した場合には、監査役は職務懈怠責任として、会社に対し、これによっ
て生じた損害の賠償債務を負担する。
問2
会社の役員は、会社に対し任務を負担するにすぎないから、第三者に対しては、本来、不法行為の
要件を満たさない限り、責任を負わないはずのところ、役員の職務執行の適正を期し、第三者の保護を図
るべく、第三者に対する権利侵害や故意・過失を問わずに、賠償責任を負わせることとしている(429 条 1
項)。更に、一定の重要な書類に虚偽の記載をしたときは、立証責任を転換し、役員が注意を怠らなかった
ことを立証しない限り、責任を免れないとしている。
本件では、Aは計算書類を粉飾したものであるから 429 条 2 項 1 号ロに基づき、Bは監査報告に事実に
反する記載をしたものであるから同項 3 号に基づき、注意を怠らなかったことを立証しない限り、Xに対
し、これらの虚偽記載を信頼したことによって投資をし、回収不能となった金額について、賠償責任を負
う。
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平成 23 年度論文式本試験解答・企業法・第2問
第 2 問
全体講評
分配可能額による配当制限及び役員の対第三者責任を問う基礎的な問題である。
(1)違法配当を受領した株主は、その善意悪意と関係なく会社に対し返還義務を負うこと、(2)違法配当
額の回収を確実なものとならしめるために業務執行者に返還責任を課していることが 462 条に規定されて
いる。同条に監査役の責任が規定されていないが、違法配当について任務懈怠がある場合には 423 条の責
任が生ずることはいうまでもない。
役員の対第三者責任については、法的責任論を丁寧に論述することまでは求められていないであろう。
簡潔に記した上で、本問の場合、429 条 2 項による責任追及が可能であることに言及することが必要であ
る。
合格ライン
問2
がやや難しいので、合格ラインは 6 割程度とみる。
以
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上