第65回税理士試験 相続税法 模範解答(理論)

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第65回税理士試験
相続税法
第一問(理論)解答
〔表示内容の説明〕
配
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難易度:
・・・ 絶対得点すべき内容(易)
・・・ 取れると差がつく
(中)
・・・ 得点不要
(難)
問1(予想配点25点)
1
相続税の申告書の作成に当たって注意しなければならない相続税に関する規定
⑴
概要
遺産が未分割の場合に留意すべき事項は、課税価格の計算及び不適用となる規定の取扱いである。
⑵
未分割遺産に対する課税 4
相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は更正若しくは決定をする場合において,
その相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは,その
分割されていない財産については,各共同相続人又は包括受遺者が民法(寄与分を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に
従ってその財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。
⑶
配偶者に対する相続税額の軽減の不適用 3
相続税の期限内申告書の提出期限(以下「申告期限」という。)までに,相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相
続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない場合における配偶者に対する相続税額の軽減の規定については,その分割されて
いない財産は,配偶者に係る課税価格の計算の基礎とされる財産に含まれないものとする。
⑷
小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の不適用 2
小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の規定は,申告期限までに共同相続人又は包括受遺者によって分割されて
いない特例対象宅地等については適用しない。
2
分割された場合の相続税の課税上の取扱い
⑴
概要
遺産が分割された場合の相続税の課税上の取扱いは、次のとおりとなる。
⑵
遺産が分割された場合の相続税の課税価格 2
上記1⑵の後においてその財産の分割があり,その共同相続人又は包括受遺者がその分割により取得した財産に係る課税価格がそ
の相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなった場合においては,その分割により取得した財産に係
る課税価格を基礎として,納税義務者において申告書を提出し,若しくは更正の請求をし,又は税務署長において更正若しくは決定
をすることを妨げない。
⑶
配偶者に対する相続税額の軽減の適用 2
上記1⑶の分割されていない財産が申告期限から3年以内(その期間が経過するまでの間にその財産が分割されなかったことにつ
き,その相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他一定のやむを得ない事情がある場合において納税地の所轄税務署長の承
認を受けたときは,その財産の分割ができることとなった日として一定の日の翌日から4月以内。以下同じ。)に分割された場合には,
その分割された財産については,配偶者に対する相続税額の軽減の規定の適用を受けることができる。
⑷
小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用 2
上記1⑷の分割されていない特例対象宅地等が申告期限から3年以内に分割された場合には,その分割されたその特例対象宅地等
については,小規模宅地等の課税価格計算の特例の適用を受けることができる。
⑴
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3
分割された場合の申告等の特則規定の手続き
⑴
概要
遺産が分割された場合には,次の相続税の申告手続きによる是正を行うことができる。
⑵
相続税の期限後申告 2
相続税の期限内申告書の提出期限後において下記⑷①に掲げる事由が生じたために新たに相続税の期限内申告書を提出すべき要件
に該当することとなった者は,期限後申告書を提出することができる。
⑶
相続税の修正申告 2
相続税の期限内申告書又はその申告書に係る期限後申告書を提出した者(相続税について決定を受けた者を含む。)は,下記⑷①に
掲げる事由が生じたため既に確定した相続税額に不足を生じた場合には,修正申告書を提出することができる。
⑷
相続税の更正の請求 6
相続税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は,次のいずれかに該当する事由によりその申告又は決定に係る課税価格
及び相続税額が過大となったときは,それぞれの事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に限り,納税地の所轄税務署長に
対し,その課税価格及び相続税額につき更正の請求をすることができる。
①
未分割財産について民法(寄与分を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていた場合にお
いて,その後その財産の分割が行われ,共同相続人又は包括受遺者がその分割により取得した財産に係る課税価格がその相続分又
は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったこと。
②
相続税の申告期限までに分割されていない財産が,その申告期限から3年以内に分割されたことにより,その分割が行われた
以後において配偶者に対する相続税額の軽減の規定を適用して計算した相続税額が,その時前において同規定を適用して計算した
相続税額と異なることとなったこと。(①に該当する場合を除く。)
③
相続税の申告期限までに分割されていない特例対象宅地等が,その申告期限から3年以内に分割されたことにより,その分割が
行われた以後において小規模宅地等の課税価格の特例を適用して計算した相続税額が,その時前において同規定を適用して計算し
た相続税額と異なることとなったこと。(①に該当する場合を除く。)
⑵
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問2(予想配点25点)
⑴
「教育資金の非課税」についての概要 5
①
内容
一定期間内に,個人(教育資金管理契約を締結する日において30歳未満のものに限る。以下「受贈者」という。)が,次の②に掲げ
る財産を取得し,それぞれに掲げる要件を満たした場合には,その財産の価額のうち 1,500万円までの金額(既にこの規定の適用を
受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には,その算入しなかった金額を控除した残額)に相当する部分の価額に
ついては,贈与税の課税価格に算入しない。
②
適用要件
イ
ロ
その直系尊属と受託者との間の教育資金管理契約に基づき信託受益権を取得した場合
その直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を教育資金管理契約に基づき銀行等の営業所等において預金若しくは貯
金として預入をした場合
ハ
教育資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭又はこれに類するものとして一定のもの(以
下「金銭等」という。)で金融商品取引業者の営業所等において有価証券を購入した場合
⑵
教育資金の非課税の適用を初めて受ける際の手続について 3
教育資金の非課税の規定は,その適用を受けようとする受贈者が教育資金非課税申告書をその教育資金非課税申告書に記載した取扱
金融機関の営業所等を経由し,信託がされる日,預金若しくは貯金の預入をする日又は有価証券を購入する日までに,その受贈者の納
税地の所轄税務署長に提出した場合に限り,適用する。
なお,教育資金非課税申告書とは,教育資金の非課税の規定の適用を受けようとする旨,受贈者の氏名及び住所又は居所その他一定
の事項を記載した申告書をいう。
⑶
祖母Xからの金銭の贈与について教育資金の非課税の適用を受けるための手続と注意しなければならない点について
①
教育資金の非課税の適用を受けるための手続について
イ
概要
教育資金の非課税の適用を受けるための手続は、追加教育資金非課税申告書の提出である。
ロ
内容 3
受贈者が既に教育資金非課税申告書を提出している場合(その教育資金非課税申告書に記載された金額が 1,500万円に満たない
場合に限る。)において,その教育資金非課税申告書に係る教育資金管理契約に基づき,その受贈者が新たにその直系尊属からの書
面による贈与により取得した金銭を銀行等の営業所等において預金若しくは貯金として預入をしたときは,その受贈者は,追加教
育資金非課税申告書をその教育資金非課税申告書を提出した取扱金融機関の営業所等を経由し,預金若しくは貯金の預入をする日
までに,その受贈者の納税地の所轄税務署長に提出した場合に限り,教育資金の非課税の適用を受けることができる。
なお,追加教育資金非課税申告書とは,新たに取得した金銭の価額について教育資金の非課税の適用を受けようとする旨その他
一定の事項を記載した申告書をいう。
②
注意しなければならない点について 3
(下線部の解答1つにつき 1)
教育資金の非課税の規定に係る非課税金額 1,500万円については,受贈者単位で適用されるため,Zは総額で 1,500万円まで教育
資金の非課税の適用を受けることができる。
従って,祖父Yからの平成26年中に贈与を受けた金銭 1,000万円について教育資金の非課税の適用を受けているため,祖母Xから
の贈与により取得した金銭の額のうち 500万円については教育資金の非課税の適用を受けることができ,非課税金額を超過する 200
万円については,教育資金の非課税の適用を受けることができず,贈与税の課税対象となり,贈与税が課される。
また,祖母Xからの贈与に係る教育資金の非課税の適用については,祖父Yからの贈与に係る教育資金の非課税の適用に係る取扱
金融機関の営業所等が同一でなければならない。
⑷
領収書等の提出期限について 4
教育資金の非課税の適用を受ける受贈者は,選択した次の払出し方法の区分に応じそれぞれに定める日までに,教育資金の支払いに
充てた金銭に係る領収書等(他の贈与税の非課税の規定の適用を受けたものに係る一定の領収書等を除く。以下「領収書等」という。)
を取扱金融機関の営業書等に提出しなければならない。
①
教育資金の支払いに充てた金銭に相当する額を払い出す方法により専ら払出しを受ける場合
・・・ その領収書等に記載された支払年月日から1年を経過する日
②
上記①に掲げる場合以外の場合
・・・ その領収書等に記載された支払年月日の属する年の翌年3月15日
⑶
(無断複写・転載を禁ず)
⑸
教育資金管理契約の終了事由と終了したときにおける贈与税の課税上の取扱いについて
①
教育資金管理契約の終了及びその事由 3
教育資金管理契約は,次に掲げる事由の区分に応じそれぞれに定める日のいずれか早い日に終了するものとする。
イ
受贈者が30歳に達したこと
・・・ その受贈者が30歳に達した日
ロ
受贈者が死亡したこと
・・・ その受贈者が死亡した日
ハ
教育資金管理契約に係る財産の価額が零となった場合において受贈者と取扱金融機関との間で教育資金管理契約を終了させる合
意があったこと
・・・ その教育資金管理契約が当該合意に基づき終了する日
②
終了したときにおける贈与税の課税上の取扱い 4
イ
内容
上記①イ又はハによりその教育資金管理契約が終了した場合においてその契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額(学校等
以外の者に対する教育資金については 500万円を限度とする。)を控除した残額があるときは,その残額については,その教育資金
管理契約に係る受贈者の上記①イ又はハに定める日の属する年の贈与税の課税価格に算入する。
ロ
受贈者が死亡した場合
上記①ロによりその教育資金管理契約が終了した場合には,その契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額に
ついては,贈与税の課税価格に算入しない。
⑷