(様式 3)若手研究者支援研究費 平成 2 7年 4月 3 0日 琉球大学 学長大城肇殿 所属部局・職工学部・助教 氏 名神谷大介 ー 鈴 平成 26年度研究ブρロジェクト支援事業(若手研究者支援研究費) 研究実績報告書 このことについて、以下のとおり報告いたします。 ①研究課題 興観光地域における河川の水資源と生態資源の持続性に係るコンフリクトアセスメン 島l ト まず,研究全体の概要を示す.沖縄本島二級河川を対象として、空間的には地域社会 全体を考えるレベルと 1 ¥ 可)Iを対象とするレベルの 2階層を対象とし、それぞれにおけ る社会および生態システム内における水資源と生態資源に関するコンフリクトの構造を 明らかにする。その上で、各階層内における社会システムと生態システムとのコンフリ クトを構造化する。社会システムにおいて生活者属性による価値の非対称性、生態シス テムにおいては水資源開発による影響評価とモニタリング・再生手法、について調査・ 分析を行い、潜在的コンフリクトのアセスメント技術として統合化する。 上述の内容に関し,特に本申請では,①水資源・生態資源のコンフリクトの構造化, ②河川の広域的健全性評価,③観光振興による渇水リスク評価を行う.①では,渇水リ スク、生態リスクおよび社会的コンフリクトの構成要因を、生活者参加・連携と水循環 ②研究の概要 を媒介変数として、社会経済システム・生態システムおよびこれらの相互関係を社会生 態システムとして整理し、持続可能性・環境容量概念の下で構造化する。②では,各河 川流域の土地利用等を用いて河川の類型化を行った上で、魚類の出現ノ屯ターンと対応さ せながら空間分布モデルを作成し、各流域が潜在的に保持し得る魚類相を推定する。潜 在的な魚類分布と実際との差異、外来種の出現状況、河川横断構造物の設置状況等を対 応させ、河川の健全度評価を行う。そして、河川工学と生態学を繋ぐことにより、保全 優先度もしくは再生優先度を検討する。③では,観光用水量の明確化および観光客数増 加・人口増加等の社会の変化を考慮した沖縄本島における渇水リスク評価を行う.すな わち,社会システムの変化を内部化したリスクアセスメントを行う. 114 ③研究成果の概要 本研究助成では、上記①ベI Dに対して以下の事項を行った。 ①水資源・生態資源のコンフリクトの構造化 各市町村水道担当者および過去の水資源開発等の経緯を調査することにより、沖縄における水資源・水環 境にかかる構造を図− 1のようにモデル化した。沖縄において水環境を含めた自然環境は観光資源であり、観 光振興は地域活性化につながる。しかしながら、③で示すように、観光産業は水多消費産業であり、水資源 開発等の対応を行わなければ渇水リスクは増加する。ダム開発を行えば直接的に自然環境へインパクトを与 え、海水淡水化を行えば公営企業である水道事業では水道料金の値上げにつながる。これは観光にかかわら ない住民にも負担を強いることになる。また、沖縄本島は北水南調の構造になっており、、中南部の観光振興 のために北部の自然観光資源を収奪する可能性がある。これらのコンフリクトをアセスメントおよびマネジ メントするためには、観光資源価値、水資源価値等の価値評価モデルを構築する必要があり、この部分につ いては現在調査中である。 観光資源 汚染酋破壊 、 自然環境 フ ー を ‘ イ」 か給水制限 | 地域振興「、山林破壊 水需要増加+渇水リスク斗今ダム開発 _Jr 沿 岸 埋 立 l十 海 水 淡 水 化 + 水 道 料 金 負 担 J!L | l テ汚水増加一一一寸. •, ト十水環境汚染 廃水処理不足」 一一一一ーへ 地域社会 経済活性化 r 負担感・不公平感 、『 図 − 1水資源・水環境にかかる問題の構造化 ②河川|の広域的健全性評価 河川本来の姿に戻すことが再生目標の 1つであり、その姿と現在の姿のかい離度を表現することが健全性 を表す 1つの尺度として考えられる Q この考えの下、地形・地質情報を基にした河川の類型化を行い、同類 型内における在来魚種・外来魚種の出現種数により河川改変および水質の影響を検討した。具体的には、河 川縦断勾配を経済学で用いられるジニ件数を援用して指標化し、その他標高差、流域面積等の変数を用い、 多変量解析による河川の類型化を行った。その上で、水質調査を基にした河川類型化を用いることにより、 在来・外来魚種の分布状況を考察した。この結果の一部を表− uこ示す。さらに、河川横断構造物調査結果を GISデータベースとして構築し、他の指標と比較することにより、下流域で急勾配になっている河川に横断 構造物を設置することにより、外来魚種にとって生,息しやすい環境を作り出している可能性を示した。 表ぺ 各類型化と出現魚類種数の関係 ~I 悪い 良い 在来 川一一一仙一日一日 2/4 一 幻一位一山一日 M 一一制一初一日 −9uM t4 。 円 一 4 外来 ω 一一川一ω ω | 外来 | 在来 ③観光振興による渇水リスク評価 沖縄本島における水需要を、生活用水、工業用水、基地用水、観光用水に分類し、各水需要予測モデルを 構築した。特に観光用水については観光客数増加シナリオを適用し、過去の少雨年における水需給バランス 2に示す。 この結果は観光客数 1000万人および人口増加は人口問題研究 の評価を行った。結果の一例を図− 所の予測結果を用いている。海水淡水化施設をフノレ稼働させたとしても、給水制限が回避できないことが示 された。なお、昨年度より運用されている金武ダムは考慮できていないため、今後はこの効果も評価に加え ることとする。 園 開 海淡水進水量(実績) ーーー貯水量( 需要量のみ変化) 1 00000 一一ー貯水量(実績) 一 貯水量(需要量降水特性ヂ) 80000 20 60000 40 40000 60 20000 。 1 0 0 0月 ll 月1 2月 l 月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 1 図− 2水需給バランス評価結果 ④研究成果の公表、あるいはその準備状況 1 )沖縄本島における 河川|自然再生に関する 基礎的分析、平成 26年度沖縄ブロック国土交通研究会、 2014 2)沖縄本島における河川|の自然再生計画のための河川 | の分類と評価、平成 26年度土木学会沖縄会研究発表 会 、 2014 5 3 ) 自然再生事業のための河川類型化に関する基礎的考察、平成 26年度土木学会西部支部研究発表会、 201 )沖縄県二級河川奥川 における自然再生とその評価、水工学論文集、 2015 (査読有) 4 5 )沖縄島二級河川の自然再生計画における目標設定のための河川 | 類型化と課題に関する考察、土木学会論 文集 G (環境) 、 2015 (査読有・投稿中) その他、水資源関係については現在土木学会論文集に向けて準備を行っている。 ⑤科学研究費等の申請に向けた準備状況 今年度は(公益財団法人)河川|整備基金に 「 沖縄本島億首川におけるマングローブ林の再生 ・管理を支え る情報共有システムの構築」というテーマで共同研究者として申請した。 本研究の枠組みは共同研究が必要で、あり、上記課題に対しても、徳島大学、山口大学、総合地球環境学研 究所等と連携した研究となっている。今後も、研究代表・分担含め、科研費やその他の財団への申請を継続 的に行ってし、く予定である。 3/4 ⑥今後の研究の展開、展望 本研究において、個別要素研究が進められた。今後は上述したように、金武ダムおよび沖縄県の人口増加 政策を反映した渇水リスク評価を行う予定である。また、水資源と生態系のコンフリクトに関しては、詳細 な調査・分析を億首川において実施しており、これを継続して行う予定である。この内容については、既に 研究助成を申請しているとともに、金武町役場等との連携も行っている。 また、水資源と観光資源としての価値評価については、経済学を専門とする研究者との連携を調整してお り 、 CVMおよびコンジョイント分析を用いた価値評価モデ、ルの構築を進めている。 *上記について、概ね 4ページ程度にまとめてください。また、別途関連する資料類(論文別刷など)が あれば添付してください。 ⑦実支出額の使用内訳 物品費 合計 円 1 , 1 9 6 , 0 0 0 円 5 1 4 , 0 7 4 円 4 6 3 , 0 2 8 4/4 その他 謝金等 旅費 。 円 円 2 1 8 , 8 9 8
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