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平成 22 年度自由貿易協定等情報調査分析検討事業
モンゴルにおける農林水産業と農林水産政策等の調査・分析
プロマーコンサルティング
6
モンゴルの水資源と水産業45
6.1
概況

水資源
モンゴルでは西部、北部に広がるモンゴル・アルタイ山脈やヘンティ山脈を源流とする
河川が流れている他、西部を中心に湖が点在している。河川は合計で 4,113 本あり、全長
は 6 万 7 千 km になる。代表的な河川はオルホン川、ヘルレン川、トゥール川等で、ウラ
ンバートル市を始めとする都市部に水を供給している他、農業、工業用水としても利用さ
れている。
また、100 ヘクタール以上の湖水面を持つ湖は 3,060 ヵ所あるが、草原地帯にある湖の
多くは塩水湖である。観光地として有名なモンゴル北西部のフブスグル湖は透明度の高い
淡水湖で、モンゴルの淡水資源の 74%を有しているとされる。
表 29 モンゴルの主要な河川
単位:km
名称
幹川の長さ
1,124
1,090
819
808
593
568
516
475
452
445
435
421
415
323
296
291
Orkhon
Kherlen
Tuul
Zavkhan
Selenge
Tes
Khovd
Eg
Ider
Delger
Ongi
Khanui
Chuluut
Yeroo
Onon
Kharaa
出所:NSO “Mongolia Statistical Yearbook 2009”
1)MNET ヒアリング
2)FAO AQUASTAT’s Country Profile of Mongolia
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表 30 モンゴルの主要な湖
単位:km2
名称
面積
Uvs
Khovsgol
Khar us
Khyargas
Buir
Khar
3,350
2,760
1,852
1,407
615
575
出所:NSO “Mongolia Statistical Yearbook 2009”
モンゴルでは温暖化による地表水の減尐、雨量の減尐、都市化による水需要の増加、鉱
物資源開発のための地下水資源の利用等により、近い将来水資源が枯渇すると危惧されて
いるが、適切な水資源管理のための制度的・組織的な枞組みはできていないのが現状であ
る。

水産業
モンゴルには水産業と言えるものはほとんどなく、いくつかの湖や河川で食用や観光用
として若干の漁業が行われているのみである。2009 年の水産業の総生産額は 17.5 百万ト
ゥグルグ(約 116 万円)とごくわずかである。
主要な漁場は西部のウーレグ湖、アチト湖、トルボ湖、バヤン湖及び東部のブイル湖で
ある。漁獲される主な魚はスズキ、鯉、フナ、マス、ナマズ等で、魚種別の統計はないが、
ウーレグ湖はほとんどが鯉、アチト湖では 8 割がキタカワヒメマス、ブイル湖では鯉が 6
割、バヤン湖は 7 割が鯉科の魚等となっている。
各県・湖では自然・観光省により漁獲の上限が定められている。2009 年の漁獲枞は全体
で 90 トンで、ブイル湖が 60 トン、バヤン湖が 10 トン、アチト湖が 10 トン、ウーレグ湖
とトルボ湖がそれぞれ 5 トンとなっている。ただ、実際には漁獲枞は満たしておらず、2009
年の漁獲高は全体で 56 トンで、ブイル湖が 32 トン、アチト湖が 13 トン、バヤン湖が 8
トン、ウーレグ湖が 3 トンであった。
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図 23 モンゴルの漁業地域
ウーレグ湖
アチト湖
トルボ湖
ブイル湖
バヤン湖
出所:Bogomolov.PL による地図を元にプロマー作成
6.2
水資源・水産業政策
モンゴルの水関連政策は水産業の促進というよりは水資源の保護と持続可能な管理に重
点が置かれている。モンゴルは 1995 年に「水に関する法(Law of Mongolia on Water)
」
46を策定し、2004
年にはこれを改正して河川の流域管理、水資源の保護や適正利用につい
て定めている。また、漁業に関する政策としては、2008 年に自然・観光大臣により出され
た「漁業用の魚種に関する繁殖計画」に係る通達があり、漁業資源を保護し、かつ適正に
利用すること、いくつかの湖において魚の研究を行い、目的に基づいて繁殖させること等
を定めている。さらに、モンゴル政府は 2007 年に「タイメン47保護に関する国家計画」を
策定し、希尐種となったタイメンを保護するため、密漁に対する対策を実施し、タイメン
が分布する水域の保全を行うこととしている。
6.3
水産分野の重要性と制約要因
モンゴルには水産業と呼べるようなものはほとんどなく、湖や川で漁獲された魚がその
46
47
http://www.miningmongolia.mn/download/water.pdf
サケ科の魚
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まま自然に冷凍されて市場やスーパーで売られている程度で、モンゴル経済における重要
性も低い。水産分野の発展を制約している要因としては以下が挙げられる。

水資源、漁業資源管理体制が未整備であること

水産業に関するノウハウ、技術の不足

コールドチェーン等のインフラの欠如
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