平成 26年度研究フ。ロジェクト支援事業(女性研究者支援

(様式 3)女性研究者支援研究費
平成
27年 4月 30日
琉球大学
学長大城肇殿
所属部局・職熱帯生物園研究センター
ポスドク研究員
氏
名依藤実樹子
審
平成 26年度研究フ。ロジェクト支援事業(女性研究者支援研究費)
研究実績報告書
このことについて、以下のとおり報告いたします。
①研究課題
ウミウシに見出された特異なミトコンドリアゲノムの由来と進化の探索
軟体動物ウミウシ類には、遺伝子』情報を用いて系統進化関係を解析した際に、核遺伝
子とミトコンドリア遺伝子の解析結果が著しく異なる種が存在する。それらの種を調べ
たところ、ミトコンドリアゲノムに著しい塩基配列の違いが生じていることが明らかと
なった。本研究は、このウミウシ類の特異な進化パターンを示すミトゲノムの由来とそ
の進化を探るための、基礎的な知見を得ることを目的とする。
まず分類群の全体像を知るため、 DNAデータベースに登録されている軟体動物、特に
ウミウシの属する異偲亜綱のデータを調べ、どの分類群に特異なミトゲノムを持つ種が
②研究の概要
存在し、それらがどのような関係にあるのかを探る。次に、ゲノムの特徴の詳細を知る
ために、同属内にミトゲノムの著しい違いが見出されたムカデミノウミウシ種群をモデ
ルとして用いた実験を行う。この生物群には、現在 3種の隠蔽種が見つかっていること
から、 3種のミトコンドリアゲノムの全長配列を得て、その特徴を比較する。また、核
遺伝子とミトコンドリア遺伝子の遺伝型がどのような対応関係にあり、それぞれがどの
ような系統進化関係や集団構造を示すのかを、集団遺伝学的解析により調べる。さらに、
塩基配列の著しい違いは、偽遺伝子により生じている可能性があるため、組織学的解析
による細胞内での局在の確認および発現解析によって精査する。以上の解析により得ら
れた情報を総合し、ウミウシ類のミトゲノムの進化を探る基礎とする。
③研究成果の概要
I.DNAデータベースの探索結果
DNAデータベースに登録されているウミウシ類の塩基配列情報と、ミトコンドリアゲノムの全長配列情
報が得られている軟体動物の 情報を合わせて分子系統解析を行った。その結果、申請者が既に情報を得てい
J
1/4
るムカデミノウミウシ種群に加えて、裸鯨目後鯨類(狭義のウミウシ)に、遺伝子によって異なる系統関係
を示す種が見出 された(下図) 。従って、ミトコンドリアゲノムの特異な進化は、ムカデミノウミウシ種群
のみに起こっているものではなく、この分類群内で複数回起こったイベントに因る可能性が示唆された。ま
た、分子系統解析の結果、異偲亜綱内部の系統関係は、用いる遺伝子によって変化したことから、ミトコン
ドリアゲノムの大幅な変異は異鯨亜綱全体に生じているものと推測された。その中でもウミウシの属する後
偲類の系統学的な位置の変化が大きく、この分類群のミトコンドリアゲノムが最も大きな変異を経ているも
のと推測された。
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図 異偲E綱の系統関係
(
左)ミトコンドリア C
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6
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p)に基づく最尤樹、 (
右)ミトコンドリ
6
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R
N
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7
5
1b
p)に基づく最尤樹。ウミウシの属する後偲類を青で示し、狭義のウミウシである裸
ア1
偲目の種名に色を付けた。赤字はムカデミノウミウシ種群。外群には頭足類 (
タコ )とカサガイを用いた。赤
O!遺伝子の示す系統関係では単系統群にならない。また、青字で示
字で示したムカデミノウミウシ種群は、 C
e
n
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aの系統学的位置が、遺伝子によって大幅に異なっている 。
した裸偲目ウミウシのうち、 D
I
I
. ムカデミノウミウシ種群をモデ、ルとした実験
特異な進化を遂げているミトコンドリアゲノムの由来と進化を探索するために、同属内にミトゲノムの著
しい違いが見出されたムカデミノウミウシ種群をモデノレとして用いた実験を行った。
この属には、研究開始時に 3種の隠、蔽種が見つかっていたが、研究期間中に海外産のサンプルを入手し、
4種目の隠蔽種を発見した。核ゲノム(核リボソーム遺伝子 I
T
Sl領域)によって隠蔽種聞の系統関係を調
p距離)ずつだ、った。次いで、ミトコンドリアゲノムの比較のた
べたところ、各隠蔽種聞の違いは約 5% (
め、ミトゲノム全長配列の解読を試みた。2種は完了し、それらの遺伝子配置は一致していた。残り 2種は
部分配列が得られており、現在継続して解析している。4種全てで解読の済んだ遺伝子領域については分子
系統解析を行い、核遺伝子との分化の違いを調べた(上記分子系統樹は結果の一部
) 。核リボソーム遺伝子
においては、互いに非常に近しい系統群になったものの、ミトコンドリア遺伝子においては、単系統になっ
ても、他種裸鯨 目との遺伝的距離の方が近い結果や(上図右)、多系統になり、他の分類群と単系統群とな
る結果(上図左)などが得られた。今後は解析する個体数を増やし、核ゲノムとミトコンドリアゲノムの間
2/4
で遺伝的集団構造を比較する予定である。
核ゲノムとミトコンドリアゲノムの示す系統関係が著しく異なる場合、偽遺伝子を解析している可能性が
考えられる。この可能性を調べるには、解析している遺伝子がコードされている場所を特定することと、実
際に発現しているかを調べる必要がある。遺伝子のコード箇所を調べるために、ムカデミノウミウシ各隠蔽
種に対応する i
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加 h
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n用プローブの作成に着手し、サザンハイブリダイゼーションによってプロ
ープの有効性を検証する段階まで準備を進めることができた。来年度中には、ウミウシの組織を用いた本実
験を行える見通しである。遺伝子発現解析にも着手し、 1種については COi遺伝子の発現を確認した。プラ
イマーを再度検討し、残り 3種および、他の遺伝子についても解析を進める予定である。
④研究成果の公表、あるいはその準備状況
・本申請研究に関連した以下の論文を発表した。
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0
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・一部の成果について、学会発表を行った。
依藤実樹子、平野弥生「ムカデミノウミウシ種群の遺伝的・生態的多様性」日本プランクトン学会・日本
ベントス学会合同大会、 6B1145、広島大学、 2014年 9月(口頭)
・今後、現在継続中の研究成果と合わせて、国内外の学会並びに、国際学術誌における成果公表を行う予定
である。
⑤科学研究費等の申請に向けた準備状況
−平成 27年度分の科学研究費(若手 B)並びに日本学術振興会特別研究員を申請したが採択されなかった。
本研究成果を基に、今後も継続して申請する予定である。
−第 23回藤原ナチュラノレヒストリー振興財団学術研究助成を申請、採択された。平成 27年度はこれに
より研究を継続する。
泊 四IO
)平成 27年度共同利用を申請、採択された。
−追加試料採集のため、マリンパイオ共同推進機構(J
⑥今後の研究の展開、展望
・DNAデータベースを探索した結果、ムカデミノウミウシ種群以外にも特異な進化を遂げたミトコンドリ
アゲノムを持つ種が見つかったことから、これらの種についても野外調査時に試料採集を行った。今後、
傍証として比較解析に加える予定である。
・ムカデミノウミウシ種群の隠蔽種全てについてミトコンドリアゲノムの全長配列解読を完了させ、隠蔽種
間での比較、および軟体動物の中での系統進化関係を遺伝子ごとに調べることで、進化の道筋を探る。ま
た、ムカデミノウミウシについては、解析個体数を増やし、核ゲノムとミトコンドリアゲノムによる遺伝
的集団構造の比較から、種分化過程の推定から、ミトゲノムの進化を探る。
3/4
−研究期間中に得たムカデミノワミウシの追加試料について核遺伝子を解析する中で、隠蔽種間の雑種と考
えられる結果を示す個体があった。これとは別に、ミトコンドリアゲノムについても、 1遺伝子に対し 2
種類以上の塩基配列を持つ可能性が示唆された個体が存在し、そのような個体は、複数種が同所的に生息
する地点から多く見つかる傾向があった。これらの結果は、ムカデミノウミウシ種群の種分化に伴うゲノ
ムの変化過程を捉えたものか、種間の浸透性交雑やゲノムの水平転移などの生物感相互作用によるものと
予測される。本研究期間に、基礎的な知見を得るための準備がおおよそ整ったことから、これらの現象に
ついても詳細を明らかにする解析を進める予定である。
*上記について、概ね 4ページ程度にまとめてください。また、別途関連する資料類(論文別刷など)が
あれば添付してください。
⑦実支出額の使用内訳
合計
1
,
2
0
0
,
0
0
0円
物品費
7
3
8
,
5
6
3円
旅費
1
4
5
,
0
1
5円
414
謝金等
6
6
,
7
5
0円
その他
2
4
9
,
6
7
2円