木杭密打ちによる河川堤体の対液状化強化 地盤工学研究室 研究の背景と目的 天野 賢志 河 川堤 防の 多く は、 転圧 不足部 と緩 い砂 地盤 が未 改良 のま まの 部分 を内 蔵しており、耐震性の強化が急がれる。それに は法尻地盤をセメント混合処理や締固め砂杭で 強化して、堤防基礎を水平に拘束する工法が採 られている。本研究では、堤体法先部に間伐木 杭を密に打設し、砂地盤の密度増加と杭の曲げ 剛性による耐震性の強化を図る工法を提案し、 その効果を調べる。間 伐材を用いるのは、植 空圧 (間隙流体圧送) 林地の荒廃を防ぎ、か つ植林地に生物相の多 空圧 (バルブ開閉) 様性を回復させると共 に、保水性の向上を図 るためである。 実験方法 傾斜計 間隙流体用 タンク 実験装置の概観を図-1 に示す。 図-2 のように、模型砂層の左右両端は、変 天端沈下計 形が単純せん断的になるように、下端がヒン ジで上端を互いにつないだ透水性の可動壁に なっている。堤体は長方形断面のアルミ棒を バルブ 連結したものを用い、天端部にて沈下量を測 透水パイプ 定する。底面応力分布は、原型換算で天端幅 2m、高さ 3m で,法勾配 1:1 の砂堤体のもの 図-1 実験装置の概観 を再現している。 地盤には豊浦砂(D max =0.425mm、ρ dmax =1.65g/cm 3 、 アルミ棒 積層堤体 L つなぎ材 C ρ dmin =1.36g/cm 3 )を用い、容器を横倒しにして、 60 乾燥状態での空中落下法により、Dr=20%に緩く 作製する。模型杭はφ3mm、長さ 80mm(原型換 40 可動壁 1:1 ヒンジ R=2560 算φ150mm、長さ 4m)のアルミ棒を用い、位置 80 40 決めのガイド板を用いて手で圧入する。間隙流体 には、変形中の非排水状態を満足するため、粘性 を水の 50 倍に調節した HDMC 溶液を用いる。 間隙水圧計 452 砂地盤 ( ) 模型は実物の 1/50 を想定しており、これを 50G 模型杭 ヒンジ 図-2 供試体の構成 の遠心加速度場において、左右に繰り返し傾斜さ 水平震度 せ、静的震度法に基づく水平力による変形を観 察した。まず 50G遠心場で、空気圧により間 0.2 左傾斜 隙流体タンクから左右隔壁の外側へ粘性溶液を 流し込み、砂地盤を飽和させる。粘性溶液は隔 壁のフィルターを通って、また底面に設置した 500 0 時間 (s) 1000 右傾斜 -0.2 通水パイプの容器中央の開孔部から砂層に浸透 する。供試体の傾斜は、水平→左傾斜→水平→ 右傾斜→水平を 1 波とし、これを 5 波 表-1 実験条件(各要因の変化範囲) 繰り返す(図-3)。1 波に要する時間 は約 85 秒である。変形の観察は、格 堤体 子状に配した色砂、および素麺の写真 から読み取る。 実 験 は 、 表 -1 に 示 す 条 件 の 組 み 合 図-3 傾斜による水平震度 砂 アルミ 基礎地盤 間隙流体の 杭条件 Dr(%) 打設間隔 列数 粘性(mm2/s) 20 1(水) なし 30 9mm(3D) × 9 50 40 12mm(4D) × 7 200 50 18mm(6D) × 5 わせで行った。 Key Words:液状化、間伐木杭、遠心力模型実験、静的震度法 実験結果と考察 変形量 は 0.5 波 目(左 傾斜) が最も 大きく 、傾斜 を繰り 返す内 に変形 の増 分は徐 々に小さ くなって いく。0.5 波目で単 純せん断 的に左に 変形し、 1 波目で は隔壁は ほぼ 直立に戻っている。その後も変形は左側のみで、左右対称には進まない。変形は 3 波目程度ま で続く。 図-4 に、 各条件での 0.5 波目 の変形の様子を 、傾斜前の状態と 併せて示す。隔壁 の横方法 への変位から、砂地盤の単純せん断変形の大き さを比較すると、杭の打設間隔が密になるほど 変形が抑えられる事が確認できる。 傾斜終了時の変形は、杭なし条件に 基礎地盤のDr 20% (1 )杭なし 比べ杭あり条件では 、堤体の沈下とそれ に伴う基礎地盤が左 右に押し広げられる 変形は小さい。しか し、杭条件による違 いは明確には見られない。 沈下量も、供試体変形と同じく、徐々 改良範囲内のDr 31% (2 )6D×5 に小さくなっていく 。ほとんどの実験条 件で、大きな沈下は 1 波目までに終了し、 そ の 後 は な だ ら か に 進 ん で い く 。 図 -5 に杭打設後の改良範囲内の Dr と、傾斜 段階ごとの天端沈下 量の関係を示す。供 (3 )4D×7 45% 試体変形と同様に、 杭の打設間隔が狭ま り、改良範囲内の密度が上がるにつれて、 沈下量も抑えられている。 図 -6 に 、傾 斜 中 の 間 隙 水 圧の 変 化 を 示す。どちらにも短 時間での急激なピー (4 )3D×9 66% クが見られるが、傾 斜の変化との一致は 見られない。傾斜を 繰り返す内に、ピー クは低く、時間的な 変動は小さくなる。 杭の有無で比較する と、杭なしの方がピ 図-4 ークの最大値は大きく、発生回数も多く、 2波目、3 波目にも生じる。これらのピ ーク は、砂の 構造破 壊の際 の、過剰 間隙 0.5 水圧を捉えていると考えられる。 0.4 結論 背面側 C B A 左 右 0.3 に大きく貢献している事が確認できた。 0.2 14 沈下量(mm) 10 8 6 4 2 20 杭なし 30 40 50 Dr(%) 60 6D 4D 3D 杭の打設間隔 (D=3mm) 図-5 堤体沈下量 A B C 0.4 0.3 0.2 左傾斜 0.1 右傾斜 70 0 0.2 0 -0.2 kh 0 (1)杭なし 0.5 間隙水圧(kgf/cm2 ) 0.5波沈下量 1.0波沈下量 最終沈下量 12 A C B ガラス面側 以上の結果から、杭打設による 基礎地盤の密度増加 が、地盤変形の拘束 0. 5波目での供試体変形 0 100 200 300 経過時間(sec) 杭なし(3D×9) 図-6 間隙水圧の変化 400 500
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