土砂災害警戒区域のための災害実態に基づく移動可能土砂量算定手法

土砂災害警
警戒区域の
のための災害
害実態に基 づく移動可
可能土砂量算
算定手法の
の検討につい
いて
○
○花岡正明
(一財)砂防フ ロンティア整備
備推進機構 牧野裕至・西
牧
西真佐人・内山
山均志・村上治
治
長野県砂防課
課 田中秀基
基*・細川容宏
1.はじめに
に
土砂災害警
警戒区域設定
定(以下「区域設定」)のため
め基本的事項
項である流出土
土砂量の算出
出において、侵
侵食深・侵食幅
幅
の想定は重要
要な課題である
る。筆者らは昨
昨年度土砂災
災害が発生した
た長野県南木
木曽町梨子沢川
川などにおい
いて、災害前後
後
の LP 計測デ
データから侵食
食形状の実態を把握し、より
り適正な想定基
基準等を算出
出する手法を検
検討した。
2. 研究手法
法
(1) 現行の移
移動可能土砂
砂量の設定手法と課題
算出手法は、「土石流対策
区域設定の
のための流出
出土砂量は移動
動可能土砂量
量による傾向が
があり、移動可
可能土砂量の算
策
指針」に記載
載された既往土
土石流災害に
における侵食事
事例を参考に、侵食深・侵食
食幅を現地調
調査で推定・確
確認して、一般
般
に谷次
次数毎に標準的
的な横断形状
状を想定する。
。また長野県
県は「基礎調査
査
技術基
基準(案)」(平成
成 15 年度策
策定)において
て、既往の渓流
流カルテの「渓
渓
床状況
況調査」データ
タを統計処理に
により地質特性
性に応じた県内標準値を算
算
面積が設定さ
定し、地
地質及び地域
域別に谷次数
数毎の侵食断面
されており、そ
そ
れらに 区域長を
乗じて土砂量を
算出して
ている。
これら
らの侵食形
状は主
主に平常時
における現地
地調査結果によ
よって想定され
れており、災害
害時の実態
と差違が見ら
られ、また谷次
次数は使用する地形図縮尺
尺や精度に
よっては同じ
じ谷次数でもそ
それらの規模に
に著しいばら つきが生じ
る。図-1 に土
土石流の発生
生した渓流にお
おける基礎調査
査で想定さ
れた侵食
可能断面
積と、災
害時の実
際の侵食
形状を示
したが、
侵食深・侵食
食
図-2 代表断面
面の位置と集水
水面積
幅に著しい
い相違がみられる。
(2) 侵食形
形状の把握手法
法と移動可能
能土砂量算出手法の検討
土砂災害
害が発生した長
長野県南木曽
曽町梨子沢川などにおいて
て、
災害前の LP 計測データ
タが存在し、侵
侵食実態を形状
状及び量的に
に
把握できた。
。その際、まず
ず従来から手法
法として、標準
準的な横断形
形
状を谷次数毎等に比較し
したが、横断面
面の測線の位
位置を少しずら
ら
しだけでも横
横断形状が大きく相違するこ
ことが見うけら
られ、標準的な
な
横断線の設定が難しかっ
った(図-2)。そ
そこで流路区間
間毎に LP 計
測で測定・算
算出した平均的
的な侵食深・平
平均的な侵食
食幅等により侵
侵食形状を把握
握し、集水面積
積など侵食に
に関わる要因と
と
の相関を整理
理し、統計的な
な分析により新
新たな目安を考
考察し、従来の
の基準値と対比した。
3.LP 計測による災害実態に基づ
づく侵食形状
状の把握と移
移動可能土砂
砂量算出手法
法の検討
(1) 流路単元
元における LP
L 計測による
る流出土砂量
量の計測と平均的な侵食深
深・幅の分析
①河道
道の分割:ま
まず谷次数区分
分図を作成し
し、主流路及び
び
土石流が
が発生・流下し
した流路につい
いて、谷の合流部で河道を
を
分割し、河
河道が長い場
場合は概ね 1100m間隔で流
流路単元に分
分
割した。つ
つぎに対策施
施設の影響区 間・主要支川
川合流地点・深
深
掘れ区間
間については、
、平均値が過
過大となる可能
能性があるため
め、
対象区間
間から除外した
た。
②分割
割した河道単元
元毎に、航空 LP 計測の災害前後の 2 時
期の横断
断図における相
相違およびオ
オルソ写真を参
参考に侵食範
範
囲を計測
測したのち河道
道延長で除し
し、平均侵食幅
幅を求めた。さ
さ
らにそれ
れらで流出土砂
砂量を除して平
平均侵食深を
を算出した(図
図
-3 参照)。
③河道
道単元の諸元
元 (集水面積::分割した河道
道の集水面積
積、
河道延長
長、勾配等)を計
計測した。以上
上のデータを
をもとに、侵
侵
食形状と
と集水面積との散布図を作
作成した(図
図-4)
。
図-4
集
集水面積と平均
均侵食深・侵
侵食幅の関係
(2) 移動可能
能土砂量に関
関わる侵食深・侵食幅等と
と侵食に関わ
わる要
因との相関分
分析と土砂量
量算出手法の検討
図-4 から
ら侵食幅は、侵
侵食深や侵食
食可能断面積に
に比べ、集水
水面積
との関イメー
ージ図連性が
が高い傾向とな
なった。これは
は侵食深が場
場の条
件(基岩までの深さ等)によ
よる影響が考
考えられる。こ こで侵食深と侵
食幅の平均値・中央値・最頻値・90%包含値
値・最大値などを
似直線が平均
均値を表す式
式と仮定し、その傾きを一定
算出し、近似
としたまま最
最大値等を通
通る直線を作
作成し、種々
々の設定基準
準の考察がで
でき、基準が
が決まれば図-5 のように
に
図-4 から侵食深・侵食幅
幅を読み取り区間長と乗
乗じた土砂量
量を積み上げ
げることがで
できる。
4.おわりに
に
当該手法は
は、地質区別と渓流の流域
域規模から侵食
食基準値を算
算出する手法で
であり、有効性
性が高いと考え
えられる。今回
回
は花崗岩地域
域が主であった
たが、全国で今後、土石流
流災害が発生し
した場合は、災
災害実績デー
ータを蓄積し、実態に基づく
く
侵食深・侵食
食幅の設定手法
法の検討することができると
と考えられる。
さらに土石
石流災害が発生
生し想定して
ていた土砂災害
害警戒区域と
と大きく相違す
する影響が生じ
じた渓流における詳細な実
実
態調査として
て、①対象土砂
砂量:侵食深、侵食幅の設定
定手法。②流
流下状況:流下
下痕跡調査によ
よる実績の土
土石流ピーク流
流
量、ハイドログ
グラフ等の推定
定。③流下方向の検討④大
大きな支川を有
有する流域に
における主渓流
流の設定を実施する必要が
が
あると考えられ
れる。
謝辞 LP 計
計測データ及び
び調査報告書
書をご提供いた
ただいた国土交
交通省多治見
見砂防国道事
事務所及び太田
田川河川事務
務
所にご指導い
いただいた広島
島大学海掘教
教授にお礼申し
し上げます。
*現 国
国交省 富士川
川砂防事務所
所