3.非上場会社における株主分散の問題 ① 以下の3社の非上場会社のケースで、株主構成上の問題が大きい順に並べてみてください。 ひとそれぞれ、問題の前提が異なるとは思いますが、独断と偏見で考えてみてください。 いずれの会社も純資産が厚く、収益力も高い優良会社です。 【ケース1】 社長 (兄) 専務 (弟) 50% 50% A社 A社は現社長と現専務の兄弟で創 業した会社である。 社長と専務の年齢差はあまりない。 【ケース2】 親戚 社長 (10人) 40% 60% B社 B社の株主である社長の親戚10人は 、社長の兄弟、叔父及び従兄で、親、 配偶者、子及び孫は含まれていない。 © Central Village Corp. 2015 【ケース3】 社長 40% 従業員 (30人) 30% 取引先 (10社) 30% C社 大きな持株シェアを要する株主は社 長以外いない。従業員や取引先と の関係は良好。 1 3.非上場会社における株主分散の問題 ② 異論はあるかもしれませんが、我々の感覚で申し上げれば問題の大きな順に、「ケース1」、「ケース3」、「ケース 2」だと思います。 【ケース1】 兄弟2人で創業し、創業オーナーが二人いる状態です。 創業オーナーそれぞれの子が、次期後継者として、それぞれの親から自社株式を承継し、それぞれの子二人が 協力して共同経営すればよいのですが、かなり難しいのではないかと思います。 後継人事は、年齢、経験、専門性、能力、性格等様々な事情を斟酌することになると思いますが、リーダーシッ プをとる後継経営者は1人に絞られるはずです。 同族で事業承継が行われれば、経営者が50%のシェアを持ち、経営に関与しない株主が50%のシェアを持つ 可能性もあり、そうなると、経営に関与しない株主の権限が大きくなるため、ガバナンスが不安定になるリスクを 否めません。 【ケース3】 社長の持株比率は40%と、過半数に満たないものの、従業員株主で30%のシェアがありますし、株主である取 引先もビジネス上の関係が良好であれば、社長の経営判断に従うはずです。 最も株主が分散していて問題も多そうですが、経営のガバナンスという点では大きな問題はないと思います。 ただ、従業員や取引先とはいっても、他人ですので、経済環境が激変すれば、経営者との関係性も変わります。 また、株主総会の運営にも甘えは許されません。 特に従業員株主については、持株会を組成することを支援するなどして、想定外の株主分散に歯止めをかける 工夫も必要です。 【ケース2】 社長の持株比率が過半数を超えていて、同族株主のほとんどが少数株主のはずなので、経営のガバナンスと いう点では問題はないと思います。 社長以外の同族少数株主は、相続税や贈与税の負担をほとんどすることなく、株式を取得している可能性が高 いと思いますが、今後も同族少数株主において、多額の相続税の負担が発生する可能性がないかどうかについ て留意しなければなりません。 少数株主とはいえ非上場株式に対して多額の相続税が課されることになれば、納税資金を工面するために、株 式の買取要求などが出てくる可能性もあります。 © Central Village Corp. 2015 2
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