7.事業の承継と財産の承継のジレンマ ①

7.事業の承継と財産の承継のジレンマ ①
社長
(弟)
社長
の姉
30%
70%
A社
(単位:億円)
負債
20
資産
100
純資産
80
A社社長の家族と財産の状況
 A社は創業60年の会社で現社長の父が創業し、現社長は20
年前に、創業者である父の死亡により、社長に就任した
 社長70歳、母親は他界、姉78歳(子は長女1人)
 社長の家族構成:長男40歳、長女38歳、次男35歳
 社長の配偶者は他界、長男と次男は結婚して配偶者と子がい
る、長女は離婚していて子が1人いる、社長は長女親子と同居
、長男は音楽の道に進んだ。
 事業承継者候補:次男(A社の取締役営業本部長)
 自社株式の評価:発行済株式の評価総額80億円(類似業種評
価総額100億円)
 社長の財産64億円
• 自社株式:56億円
• 自宅:2億円
• 金融資産:5億円
【A社社長の大命題】
1.長男への円滑な事業承継と長男を次期トップにしたA社のガバナンスの安定
2.「争続」にはしない、「円満な相続」のプラン策定
3.創業家の家族である姉家族と現社長の長男と長女に対する経済的メリットの供給
© Central Village Corp. 2015
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7.事業の承継と財産の承継のジレンマ ②
企業オーナーにとっての自社株式は、経営の安定に不可欠な経営資源であると同時に、企業オーナーに相続が
発生すれば法定相続人が承継する権利を持つ資産でもあります。
企業オーナーは心血を注いだ自分の会社の行末を案じ、事業を承継してくれる子に対する感謝と期待の念を持つ
ことは当然ですが、世話になった兄弟や事業を承継しない子に対しても、経済的なメリットを享受してもらいたいと
思うのも人情です。
会社が成長すると、企業オーナーの財産構成の中で、自社株式のウエイトが高まります。
事業の後継者に対する事業承継を優先させれば、すべての子に対して平等に資産を承継させられません。
平等な資産承継を優先させれば、事業承継が劣後し、経営のガバナンスが不安定になります。
はたして、A社社長の大命題に応える解はあるか?
結論を申し上げれば、第三者から示すことができる明確な解はありません。
A社社長が所有する自社株式は、事業の後継者である次男にその全てを承継させることを第一とし、他の子たち
の経済的なメリットと次男の税負担をどのように解決していくか・・・・・と考えるのか?
事業に関与しない子に対しても、ある程度自社株式を承継させ、経済的なメリットも会社から得ることを前提として
、事業の後継者の経営権をいかに安定させていくか・・・・・と考えるのか?
全てを解決できるスキームはありませんが、A社社長が、自分自身の「思い」と会社の「将来像」に向き合い、優先
順位をきめれば、選択できるスキームは絞られるはずです。
「事業承継と財産承継」をテーマとして、その利害関係者である家族や経営幹部と議論を重ねることは現実的では
ありません。経営者にとって、なかなかつらい仕事ですが、逃げる訳にもいきません。
種類株式、資産管理会社、従業員持株会、自己株式取得・・・等、それなりにスキーム案は考えられますが、スキ
ーム重視の検討はお勧めしません。
まずは、経営者の考え(理屈)や思い(情緒)に従って、優先順位とスケジュールを整理することが重要です。
他社の事例を検討するにあたっては、当該他社の経営者がどのような思いで当該スキームを実行に移されたの
かということを理解いただきたいと思います。
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