一日目 福岡県飯塚市 視察内容 e-ZUKA トライバレー構想について 4 月 14 日前震・16 日本震に襲われた熊本大地震から、1 ヶ月後の九州地方への視察であ ったため、両市に視察依頼を改めて確認したところ、視察のお引き受けをいただきました ので、建設産業委員会として目的達成のため職責を果たしてまいりました。 福岡県飯塚市概要 ・人口 130,362 人 福岡県 4 位 ・面積 214.13 ㎢ 福岡県 7 位 ・市制施行 昭和 7 年 1 月 20 日(平成 18 年 1 市 4 町合併) ・議員定数 28 人 江戸時代に長崎街道随一の宿場町として繁栄し、明治以降は石炭のまちとして発展して きたが、石炭産業の衰退後、大学や研究機関の誘致を積極的に展開してきました。具体的 には、近畿大学産業理工学部や九州工業大学情報工学部が誘致され、2002 年(平成 14 年) に「e-ZUKAトライバレー構想」を発表、2003 年に「飯塚市新産業創出ビジョン」を策 定し、知的資産を核とした新産業創出のため、産官学連携の推進、起業家の育成、ベンチ ャー企業支援、研究開発型企業の誘致などの施策を展開してきました。 そもそも企業が行って当然なことを、あえて行政が進んで関わり、バックアップを行う、 ということに感心を持ちました。 飯塚市は、本市の 10 倍の面積があり、現在、8 箇所もの工業団地を造成し、道路も 20 tトレーラーが通行できるよう整備され、理系の大学誘致の成功から、企業のみならず学 生が集うまちへと発展してきています。 また企業が大学の研究所で研究もでき、学生との交流も盛んで、かつ重視されており、 特に、その重点プロジェクトとして医工学の連携が推進されています。 さらに、企業誘致のために、市の職員(課長クラス)が 3 年間程、飯塚市から名古屋市 へ単身赴任され、熱意を持って自動車関連の企業誘致に努めたことは特筆すべきものと考 えます。その成功の要因として飯塚市には、理系の大学があり、ITに関連した企業誘致 が容易であったことが挙げられます。 本市においても、福祉・教育に関連した大学があることから、その分野に応じた企業誘 致を産学官一体となり検討する必要があると考えます。 二日目 福岡県朝倉市 視察内容 「老朽危険空き家の適正な管理に関する条例」制定の経緯と制定後の現状及び 今後の課題について 福岡県朝倉市概要 ・人口 55,199 人 福岡県 18 位 ・面積 246.71 ㎢ 福岡県 4 位 ・市制施行 昭和 18 年 3 月 20 日(平成 18 年 1 市 2 町合併) ・議員定数 18 人 条例制定前は、空き家問題の市の窓口が不明であり、 ・屋根のトタン等がはがれて風で飛散して危険 ・家屋倒壊の恐れがあるが、隣接する道路が通学路のため危険 ・損壊した家屋及び敷地内に小動物や害虫が発生 などの問題が発生してもどこに相談したらいいのかわからなかった。こういった問題を解 決するために平成 24 年 3 月に条例が制定されました。 条例制定後の空き家対策についての事務手順は以下のとおりです。 ①通報・相談 ②現地確認・審査 危険度判定を市職員建築士が行い、評点が 100 点以上のものを「老朽危険空き家」と認 定。 ③認定リスト登載⇒認定台帳作成 ④助言指導通知(状況確認) 電話又は面談にて、危険な状態である旨を所有者(相続人)に把握いただき、管理・解 体の必要性を促す。 ⑤財産放棄確認(家庭裁判所へ照会) ⑥勧告通知 配達記録郵便 ⑦命令通知 内容証明郵便 対応がない場合は、所有者の住所・氏名を公表する旨を文書で通知。 ⑧公表 庁舎掲示板およびホームページで公表 公表することにより、対象物件と所有者氏名住所を不動産業者へ公開可能となり、第三 者への所有権移転による解決も期待できる。 この中で解決例として、 ケース1 解体 助言通知により所有者が理解して自費解体。 ケース2 解体 協議により相続人が抵当権を整理して自費解体。 ケース3 和解 所有者の資金困難により解体が困難な建物について、周辺住民の協力で片付け 他、応急措置を施し、緊急時には周辺住民が対応することで和解。 ケース4 売却・解体 相続後の共有者の中で管理について話がまとまらず、建物が放置されたため老 朽化が進んでいる。話し合いを行ってもらい売却処分を不動産業者に依頼し、 売却のため解体。 ケース5 市民と協働 所有者が土地及び建物(抵当権の設定なし)の所有権を放棄し、建物の立地区 に寄付。地元区会長と地元議員による第三者への売却斡旋。購入者による解体 費用の負担が検討され、 (未解決であった問題が)地域が従来から望んでいた防 火水槽の設置用地(土地の公的活用)に決まり、地元区の費用負担により解体 後(地域環境整備事業活用)に市へ寄付され解決。 ※所有者が解体困難な空き家を解体する場合、地元区での公園・防災空地等の 利用など市への寄付を条件に町会に解体費用の補助を行えば、より解体が進 むと思いました。 ケース6 市民と協働 抵当権設定がある建物で相続人はすべて財産放棄の手続きを取っていて所有者 不在の状態であったため、地元区会長と地元議員の働きにより相続財産管理人 が決定。その後債権放棄が行われ相続財産管理人が裁判所の許可を受け地元区 会長へ解体承諾書を交付し、地元区の費用負担により解体を行い解決。 一方未解決例として、 ケース1 抵当権 相続人がすべて財産放棄しており、土地建物ともに抵当権が設定されている。 ケース2 相続人の不存在 登記簿謄本の住所地には家屋の登記が無い。戸籍を調査するが亡くなってから の期間が長く、廃棄されている。そのため相続人の確認が出来ない。 ケース3 転出先から失踪 登記簿謄本の住所地が市外のため、調査を依頼したが住所地に人の住居が確認 できない。そのためそれ以上の調査ができない。 ケース4 追跡困難 相続人が相続放棄者又は海外居住者であるため追跡困難。 ケース5 税情報 税務上の住所地は確認できても、登記簿謄本の住所地と一致しない。税データ が使用できないので助言通知ができない。 などがあげられていました。 更なる対策として、平成 27 年からは老朽危険空き家予備群にも力点も置き、空き家への 定住促進・住宅リフォーム補助を行っており、市民が快適に住み続けられる住環境の向上、 住宅の老朽化や空き家化軽減を図っています。具体的には、10 万円以上の費用を要する住 宅リフォーム工事をした場合は、その工事費の 10%(上限額 10 万円)の補助が受けられま す(市内に居住する 3 世代以上の同居又は近居世帯においては補助率 20%で限度額 30 万 円) 。 まとめとして、本市に先だって空き家対策に取り組み、193 件の情報提供を受け、そのう ち 30 件の老朽空き家の認定を行ったが、朝倉市では解体に対する補助の制度がないため、 資金不足者への支援はできていませんでした。本市においても解体への支援は要検討であ り課題であると感じられました。 一方、条例で定める「公表」を恐れ、話し合いに応じてくれることが多いので「公表」 を行うことは非常に有効と考えられます。また、課題の一つとして未解決事例にもありま したが、所有者が不明の場合の空き家については、対応に時間がかかり苦労されていまし た。所有者が不明で緊急安全代行措置しか執行できない状況でも、解体措置をとれる方法 の模索が必要というのが朝倉市の見解でした。 本市においても、おそらく同様に問題は充分起こり得ると考えられることから、先進市 である朝倉市の今後の対応を見守りながら対策を検討していくべきであろう。
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