5.経営幹部に対する事業承継の課題 ① オーナー経営者が望む事業承継者候補として、オーナー経営者と苦楽をともにし、会社の歴史と理念を共有し ている経営幹部が上がることがよくあります。 しかし、オーナー経営者の希望に反して、経営幹部が事業承継できるケースは多くありません。 経営幹部が事業を承継することを困難にしている原因を以下にあげます。 1.財務的な問題 ① 事業承継者が有利子負債の個人保証を引き継がなければならない ② オーナー経営者が引退するにあたり、引退後の生活に必要なまとまったキャッシュが必要 ③ 事業承継者はオーナーから株式を買い取る資金力に乏しい ④ 会社には、オーナーに退職金を支払う財務的な余力がない 2.後継者の問題 ① オーナー経営者が考えるほど、経営幹部の会社とオーナーに対するロイヤリティーは高くない ② 中小・中堅企業の経営幹部には、技術・製造、営業・企画、人事・総務、経理・財務等の広範囲にわた って管理できる人材が少ない。 ③ 後継者の専門性をカバーできる、他の経営幹部人材が少ない 3.オーナー経営者の問題 ① 会社の財務状態を無視した退職金や自社株式の買取を希望する ② 後継者候補の経営方針が、オーナー経営者の経営方針と異なることを一切受け入れられない ③ 過度に、引退後も会社に対する影響力を残し続ける ④ オーナー経営者は、会社の現状及び事業承継のスケジュールとスキームについて後継者に十分な 説明をせず、相互理解がされていない 上記に挙げた問題を生じさせずに、事業承継を円滑に進めるためポイントは何か? 次ページに整理いたします。 © Central Village Corp. 2015 1 5.経営幹部に対する事業承継の課題 ② 【経営幹部に対する事業承継を成功させるポイント】 1.オーナー経営者が経済的に豊かになる オーナー経営者は、後継者に事業を承継した後、しばらくは後見人として後継者を支えることになります。 しかし、後継者が社内外に認められ、新体制が固まれば、前経営者は静かに身を引くべきです。 当然、会社からの収入はなくなります。前経営者には会社との直接的な関係が切れても、第二の人生を 豊かに暮らせる経済的な基盤が必要です。 「貧すれば鈍す」、後継者を大所高所から陰で支えるために、まず、経営者が豊かでなければなりません。 2.会社の財務体質を強化する 後継者にとって、過去の借入金の債務保証を引き継ぐことは大きな負担です。 また、オーナー経営者に対して十分な退職金を支払ったり、オーナー経営者から自社株式を買い取る資 金を負担するためには、会社の財務状態が健全であることが必須です。 事業承継を進めようとする段階では、ほぼ無借金の財務状態(手元の現預金で、有利子負債をいつでも 完済できるレベル)であるべきだと思います。 3.現状と事業承継計画を後継者と共有する 非上場会社では、決算書はブラックボックスになっていることが少なくありません。 まず、後継者候補に会社の財務状態を理解させることが必要です。 次に、どのようなスケジュールとスキームで後継者候補に経営権と自社株式を承継するかを理解させるこ とが必要です。 後継者候補の立場に立てば、現状の問題点を把握した上で、自分が背負う責任、経済的負担及びリスク の全体像を把握できなければ、オーナー経営者を信頼して覚悟を決めることができません。 4.後継者を支える経営体制を構築する 創業オーナーは、創業期に資金調達に奔走し、税務調査で冷や汗を流し、設備投資を決断し、人事制度 が確立されていない中で昇給昇進を決めてきました。 創業オーナーの能力は、会社を創業する経験がなければ身に付きません。 後継者候補が不得手な分野の人材を、意識的に充実させ、後継者候補の覚悟が決まった後は、他の幹 部とも事業承継計画を共有し、複数の幹部で課題解決をしていく体制が必要です。 © Central Village Corp. 2015 2
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