環境保全米の栽培目標と栽培基準 案

環境保全米の栽培目標と
栽培基準
1.環境保全米の栽培目標
1)環境保全米の立脚点
① 農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学肥料や化学農薬の低減を基
本とし、土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、農業生
産に起因する環境への負荷をできる限り低減した栽培をめざす。
② 農地の維持・保全を図り、環境保全の役割を担う生産者の経営確立をめざす。
③ 食の安全・安心を追求する米作りをめざす。
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「みやぎの環境保全米宣言」を実現するため、環境保全米栽培技術のレベルアップ
をめざす。
2.環境保全米の栽培基準
「特別栽培農産物に係る新表示ガイドライン」が示す特別農産物の要件である「節
減対象農薬の使用回数が慣行レベルの5割以下、化学肥料の窒素成分量が慣行レベ
ルの5割以下」を基準とする。
3.環境保全米の栽培方法の基本
まず地力の増強を図る。無駄な初期生育を抑制して光や風の通りがよく、病害虫
が発生し難い丈夫な稲体を育てる。そして肥料切れが始まる最高分げつ期をできる
限り後にずらして生育の停滞期間を短くし、生育後半の栄養不足と水不足を防いで
根と茎葉の活力を維持して登熟の良化を図り、適期に収穫する。具体的には以下の
ことに配慮する。
1)土づくり
完熟した堆肥の施用が基本である。生わらを施用する場合は分解を促進するため、
秋口に浅く鋤き込む。必要に応じて土づくり肥料も施用する。
2)播種・育苗
①種もみは、比重選をした後温湯消毒(うるちは60℃、10分)を行う。直ちに
浸種(催芽)に入らない場合はよく乾燥して保存する。温湯消毒後種もみを十分
に乾燥しないで保存すると、種もみの内部で生き残ったばか苗病菌が、表面および
周囲にまん延する危険性がある。ばか苗病の多発が懸念される地域などでは生物農
薬を併用する。
②播種量は、催芽もみで120g/箱(中苗)以下にし、出芽揃いの後は28℃以上
にしないよう留意する。
③播種時期は田植え時期から逆算して決める。
④育苗箱に施用する窒素肥料も化学肥料の上限3.5kgに含まれるので、上限を
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超えないよう注意する。
3)本田の基肥および追肥
①基肥
近年基肥のみの施用が多くなり、基肥量が多過ぎる傾向が見られるので、基肥
量は過繁茂にしないように加減する。
(a)基肥窒素の目安は、速効性の化学肥料の場合は3kg/10a、有機質肥料
は4~5kgであるが、地力によって加減する。基肥窒素は流亡しやすいので、
施用時期は田植え前1週間程度とする。
(b) 有機質肥料の使い方
環境保全米では化学肥料の窒素施用量は3.5kg以下なので、不足分は有機
質肥料で補う。有機質肥料は種類によって分解速度が異なり、肥効の出方に
差があるので、肥料の特徴を十分理解して施用する。
②追肥
(a)基肥窒素は最高分げつ期までにほぼ吸収し尽くされるので、その後の中・後
期の活力を維持する上で追肥は極めて重要である。
追肥は速効性の化学肥料が使いやすい。有機質肥料を使う場合は、肥効の発
現までに7日から10日を要する肥料が多いので早めに施用する。
(b) 追肥の時期と量
ひとめぼれの窒素追肥は、幼穂形成期に1~1.5kg/10a、減数分裂期に1~
1.5㎏/10a、 ササニシキは減数分裂期のみ1.5kg/10a を目安とし、生育と葉
色をみて加減する。
③基肥一発型肥料の使い方
基肥一発型肥料は稲の生育に合わせて基肥と追肥の肥効が発現するように作ら
れているが、肥効は気温の影響を受けて稲の生育とずれることもあるので、使い
方には注意が必要である。基肥と追肥を一回で施用するので、総施用量が不足し
ないように注意する。窒素の流亡を防ぎ、肥効が稲の生育とずれないように施用
時期は田植え前1週間を目安とする。生育中・後期の肥効を発揮させるためには、
過繁茂で倒伏することのないように、田植時期と栽植密度に注意する。肥効が早
まって肥切れになり、追肥が必要になる場合もあるので、稲の生育状況や葉色の
推移をよく観察する。
4)田植
①田植時期:県北部平坦地帯は5月15日から20日、県南部平坦地帯は5月20
日から25日を目安とする。
②栽植株数:18.5株/㎡(約60株/坪)を目安とする。
③株当り植付苗数は3~4本とする。
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5)雑草防除
①秋耕、代かき回数、深水管理や機械的除草などの農薬に依存しない抑草・除草方
法をできるだけ取り入れて、農薬成分数を減らす努力をする。
②除草剤を使用する場合は、草種に合った剤の選択、耐性雑草を出現させないため
の使い方、水管理など除草剤の効果を高める使い方に配慮する。
6)本田における水管理と中干し
①灌漑水深を調節することで水の持つ機能を利用する。
(a)株当たり植付苗数が多い場合過繁茂になりやすいので、深水管理で分げつを抑
制し、太茎の倒伏し難い稲を育てる。
(b)深水は抑草対策にもなるので、必要茎数を確保した後も落水しない。
(c)活着後は茎数確保のため浅水にする習慣が見られるが、株当り植付苗数が多い
今日の稲作では過剰分げつの原因になり、一方、除草剤の効果を弱めるだけ
でなく、雑草の出芽と生育を促進するので要注意である。
(d)低温対策としての深水は、前歴深水と危険期深水を合わせると効果が高まる。
②中干し
(a)黒泥土壌や泥炭土壌で、田んぼがわき、根腐れが起きるところでは5日~7日
度中干を実施する。
(b)有機質肥料を長年施用すると、いわゆるトロトロ層が発達し、登熟中期以降に
倒伏しやすくなることがあるので、地固めの意味で落水して土を固める。
③落水時期
登熟不良を防ぐためには出穂30日から35日後が望ましい。
排水の効果を上げるためには溝切り(作溝)の効果が大きい。
7)病害虫防除
➀病害虫が発生し難い生育環境づくりと健康な稲体づくりを基本とする。
栽植密度、1 株植付本数の適正化により早期の過繁茂を避けるとともに、害虫の
発生源となる畦畔雑草の刈取りに努める。イネドロオイムシやイネミズゾウムシ
は、葉齢の進んだ丈夫な苗の移植で被害を軽減できる。
②殺菌剤、殺虫剤は必要最小限にとどめる。箱処理剤を使用する場合は水田昆虫
等を死滅させない剤を選定する。
➂近年多用されているネオニコチノイド系・フィプロニル系農薬は昆虫には効き、
脊椎動物には安全と宣伝され、有機リン剤に代わる殺虫剤として広く使われてい
る。しかし、浸透性、残効性、神経毒性があり、特に脳関門が未発達な20歳未
満の子供が薬剤に触れたり、体内に取り込むと脳神経系を犯す危険のあることが
脳神経科学の研究者によって指摘されている。ヒトと環境にやさしい安全・安心
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の視点から使用薬剤の点検が肝要である。
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