超多収生産や周年生産を実現するための環境制御技術の開発 超多収

超多収生産や周年生産を実現するための環境制御技術の開発
超多収生産や周年生産を実現するための環境制御技術の開発
いちごの生産現場では、高齢化や後継者の不足などによる生産規模縮小への懸念や資材費等の値上げ等
による生産コストの増加など、様々な課題を抱えています。このため、いちご研究所では「いちご王国と
ちぎ」の更なる発展に向け、促成栽培、周年栽培において 12t/10a 以上の生産量を安定的に確保するための
環境制御技術の確立に取り組んでいます。
(1) 日中の炭酸ガス長時間施用による増収効果
日中の温室内の温度を 27 ℃一定とし、6 時~ 16 時まで炭酸ガス濃度を
CO2早朝施用
1000ppm に維持する(CO 2長時間施用)ことにより、株当たりの可販果収量は慣
CO2長時間施用
0
10月
11月
12月
500
1月 2月
1000
3月 4月
1500
5月
図1.CO2長時間施用が収量に及ぼす影響(g/株)
行(CO 2早朝施用)に比べ 15 %ほど増収(図 1)することが明らかになりました。
注.本試験での長時間施用区は、日中の温度をヒートポンプにより気温を 27 ℃に制
御しました。
マルチ
(2) 少量培地多植栽培システムによる単収の向上
栽植本数
単収
収量比
(本/10a) (kg/10a)
(%)
株当たりの培地量が栃木農試方式閉鎖型養液栽培システム(慣行)
栽培システム
の 1/6 の量でいちごの栽培が可能な少量培地多植栽培法(図 2)を新
閉鎖型養液栽
培システム
7000
6692
100
少量培地多植
栽培システム
7150
9300
10850
6056
7728
8647
90
115
129
たに開発し、その生産性を検討したところ、その増収効果は最大で
慣行比 123 %となりました(表 1)。
(3) 周年栽培下における四季成り性いちご品種の生育特性の解明
2500
2000
)
500
(
収
量
g
/
株
1500
潅水チューブ
表1.少量培地多植栽培の生産性
底面培地
電熱線
防根シート
ラブマット
育苗培地
図2.少量培地多植栽培
ベンチの概要
四季成り性いちごを用いた周年どり栽培の実用性と可能性を検討するため、
4月定植
6月定植
周年栽培条件下におけるなつおとめの生産力について検討した結果、夏秋期
8月定植
においては定植時期が早いほど収量性が増し、秋冬期以降においては定植時
1000
期と収量性に大きな差は認められないことが明らかになりました(図 3)。
注.本試験では、日長条件を 16 時間とし、7 月から 10 月初旬及び翌年 7 月中旬から
0
5月 7月
9月 11月 1月
3月
5月
7月
栽培終了までの期間は地下水によるクラウン部冷却処理を行いました。
図3.周年栽培時おけるなつおとめの収量の推移
今後は、以下の研究を進め、生産現場に適応できる環境制御技術の構築に取り組む予定です。
局所的環境制御技術の検討
クラウン部温度制御技術の確立
CO 2の局所施用技術の確立
光環境制御技術の検討
夏秋期、秋冬期それぞれに適し
開放系での日中長時間施用が可
LED や 光反 射 資材 の効 率的 、効
たクラウン部温度制御法を明らか
能となる効率的な局所施用法の確
果的な利用方法を検討し、光合成
にし、連続収穫と果実品質の向上
立を目指すとともに、施用濃度の
促進技術や花成・草勢安定技術へ
・安定化を図ります。
最適化を図ります。
の適用を図ります。
新たな環境制御技術による超多収生産・周年安定生産技術の確立と実用性評価
上記の検討結果を踏まえ、生産現場への新たな環境制御技術の適用を図ります。併せて、クラウド環境モニ
ターにより収集した環境データと生体情報との相関解析などにより、生育予測型の環境制御法を検討します。