（株）市場経済研究所 2015 年 5 月 25 日（月） Market Economy Research Institute Ltd. 週刊レポートマーケットα <第 109 号> （株）資源・食糧問題研究所代表柴田明夫天然ガス、価格低迷で消費量は増加か天然ガス価格は 4 月にかけて続落したものの、5 月に入って原油価格の上昇を受け、やや持ち直した。ヘンリーハブ・スポット価格は、4 月上旬の 100 万 BTU（英熱量単位）＝ 2.55 ドルから 5 月中旬には 2.94 ドルまで上昇した（グラフ参照）。 4 月からは在庫積み増し期に入った。EIA（米エネルギー情報局）が 5 月に発表した STEO（短期エネルギー見通し）によれば、 5 月 1 日時点での天然ガス商業在庫は 1,786 Bcf（ 10 億立方フィート）で 3 月末の 1,470Bcf から 21％増加し、前年同期比では 71％増加した。 EIA は、今年 10 月末までには同在庫は 3,890Bcf へと 3 月末から 2,420Bcf 積み増しされるとみている。ちなみに、この在庫水準は過去 2 番目に多いものである。産業用、電力用が増大へ EIA は、 2015 年の天然ガス消費量を日量平均 76.9Bcf と予測、前月の見通しを 0.1Bcf 上方修正した。ガス価格の低迷を受けて産業および発電向け需要が拡大するとの見方だ。天然ガス生産量は、 2014 年の日量 74.7Bcf から 2015 年同 79.2Bcf へと拡大する見通しだ。なお、 EIA は 2015 年のヘンリーハブ・スポット価格を 2.93 ドル、2016 年を 3.32 ドルと予測。4 月時点の予想からそれぞれ 0.14 ドル、0.13 ドル下方修正した。これは潤沢な 2015 年の天然ガス生産量および在庫量が上値を抑えるためだ。原油価格に底入れ感一方、原油価格に底入れ感が出てきた。WTI 原油は、4 月から 5 月前半にかけて一時 1 バレル =60 ドル前後で推移、年初来の高値圏で推移している（グラフ参照）。ただ、供給は潤沢で、米国の原油在庫も過去最高水準にあり、供給過剰が解消されたわけではない。 IEA（国際エネルギー機関）によると、OPEC（石油輸出国機構）の 4 月の産油量は日量 3,121 万バレルで年初から同 140 万バレル以上増加し、2012 年 9 月以来最も高い水準となった。イラン、イラクが増産し、サウジアラビアの生産量も 3 月以降同 1,000 万バレルを超え過去最高水準にある。米原油在庫は 5 月に入って減少したものの、15 日時点の在庫量は 4 億 8,220 万バレルと過去最高水準にあることには変わりがない。需給改善見込み投機筋が買い潤沢な供給にもかかわらず、原油価格が上向いてきたのは、昨年来の原油安によりアジアでの需要が増加する一方、非 OPEC の原油供給が鈍化したため、投機筋が需給改善を見込んで買いを入れているからだ。 IEA は 5 月のレポートで、 2015 年の世界石油需要を日量 9,360 万バレルと予想、昨年から 7 万バレル引き上げた。 1 また、直ちに米シェールオイルの生産が急減するともいえない。生産性向上によりシェールオイルの生産コストも急速に低下しているためだ。 6 月 5 日に開催される OPEC 総会では、減産は見送られる（日量 3000 万バレルの目標生産枠は維持）公算が大きい。ドル/バレル W T原I 油＆天然ガス価格ドル/ 1 万B 0 0t u 1 2 0 1 0 . 0 0 0 1 1 0 9 . 0 0 0 1 0 0 8 . 0 0 0 90 7 . 0 0 0 80 70 6 . 0 0 0 60 5 . 0 0 0 50 4 . 0 0 0 40 3 . 0 0 0 30 2 . 0 0 0 1 5 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 . 0 0 0 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 0 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 0 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 0 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 0 2 3 4 5 0 1 . 0 0 0 1 4 NY天然ガス（右目盛） 1 3 10 1 2 W T原 I 油 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 20 (出所 )NYMEX 《執筆者紹介》柴田明夫（しばたあきお）資源・食糧問題研究所代表 1976 年東京大学農学部卒。同年丸紅入社。鉄鋼第一本部、調査部等を経て、2002 年に丸紅経済研究所主席研究員。同副所長を経て、2006 年同所長。2010 年同代表。2011 年に資源・食糧問題研究所を設立、代表に就任。＜主な著書＞『食料争奪』（日本経済新聞出版社）、『水戦争』（角川 SSC 新書）。【免責事項】「週刊レポートマーケットα」（以下、本情報と略記）は、株式会社市場経済研究所が提供する一定の条件の下で執筆者が作成したレポートです。利用者は、本情報を利用者ご自身でのみご覧いただくものとし、ご自身の判断と責任においてご利用ください。本情報は一定の情報を提供するものに過ぎず、特定の銘柄、金融商品､商品価格などについての投資・購買に関する助言や勧誘を目的としたものではありません。また、市場経済研究所は、投資助言・代理業を一切行っておりません。利用者は、本情報に関して、第三者への提供や再配信、再配布、独自に加工すること、複写もしくは加工・印刷したものを第三者に譲渡または使用させることはできません。また、本情報のウェブページへのリンクは禁止します。その他、市場経済研究所が適当でないと判断する行為をした場合には、利用を停止させて頂くことがあります。本情報の利用にあたり、利用者が故意または過失により、市場経済研究所および当該執筆者に対して、何らかの損害を与えた場合には、市場経済研究所等は損害賠償請求をすることがあります。 2