(株) 市場経済研究所 2015 年 2 月 9 日 ( 月 ) Market Economy Research Institute Ltd. 週刊レポート マーケットα <第 94 号> (株)伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲 原油、60ドル割れ続くは疑問 原 油 相 場 の 下 値 模 索 が 続 い て い る 。 NYMEX の Crude Futures の 先 物 期 近 価 格 は 、 引 け 値 ベ ー ス で 、1 月 28 日 に 1 バ レ ル 44.53 ド ル ま で 下 落 し た 後 、30 日 に 急 反 発 し 、 2 月 3 日 に は 53.05 ド ル ま で 上 昇 し た が 、4 日 に 48.45 ド ル に 反 落 、5 日 は 50.48 ド ル 、 6 日 は 51.69 ド ル と 騰 落 を 繰 り 返 し て い る 。 リグ減少も原油在庫増加 1 月末に急反発した際に材料視されたのは、米国の石油リグ(掘削設備)の稼働 基数の減少だった。石油リグの稼働減により原油生産量が減少し需給が引き締まる と み ら れ た の だ 。と こ ろ が 米 国 エ ネ ル ギ ー 省( EIA)が 2 月 4 日 に 発 表 し た 石 油 需 給 統計で、1 月末の米国の原油在庫が前週比で増加し過去最高の水準まで積み上がっ ていることが確認され、原油相場は再び値下がりした。 コ ス ト 面 か ら 考 え る と 、 40~50 ド ル 台 で 推 移 し 続 け る と は 思 え な い 。 60 ド ル を 割 り込んだ水準では、北米において近年急ピッチで開発が進められている シェールオ イル・ガスの開発が抑制され、生産が減少して供給調整が進むからだ。。 シェールガスの開発抑制へ 北米のシェールオイルの開発に関しては、原油価格と石油リグの稼働基数との相 関 性 か ら 、60~ 80 ド ル に 損 益 分 岐 点 が 存 在 し て い る ケ ー ス が 多 い と 推 察 さ れ る 。原 油 価 格 が 80 ド ル を 下 回 っ た の は 昨 年 11 月 で 、 そ の 頃 か ら 新 規 投 資 に ブ レ ー キ が か か り 始 め 、 12 月 下 旬 か ら 米 国 の 石 油 リ グ の 稼 働 基 数 が 減 少 し 始 め 、 1 月 末 の 稼 働 基 数 は 1140 と 昨 年 10 月 10 日 の ピ ー ク の 1609 に 比 べ る と 29% 減 少 し て い る (グ ラ フ 参 照 )。生 産 量 が 減 衰 し て い る 小 規 模 の リ グ か ら 停 止 が 広 が っ て い く の で 、こ の 比 率 で 減 産 し て は い な い が 、 原 油 価 格 が 低 迷 し 続 け る と 、 昨 年 10 月 ~ 11 月 に 日 量 900 万 バ レ ル を 超 え て い た ア メ リ カ の 原 油 生 産 量 が 日 量 500 万 バ レ ル 前 後 ま で 落 ち 込 む 可能性もある。シェール油田は、一般に規模が小さく減衰ペースが速いので、生産 量が減少するのにさほど時間がかからないと考えられる。 米国の原油、輸入増へ需給締まる アメリカの経済は比較的好調で、エネルギー消費は増加傾向で推移している。近 年、アメリカは、シェールオイル・ガスの増産に伴って原油及び天然ガスの 輸入量 を減らしていたが、原油安を受けて国内の開発にブレーキがかかる状態が続けば、 輸入量を増やさざるを得なくなり、国際需給が一気に引き締まろう。 1 グラフ U.S. Rig Count and Crude price Source: BAKER HUGHES, EIA 《執 筆 者 紹 介 》 伊 藤 敏 憲 (いとう としのり) 伊 藤 リサーチ・アンド・アドバイザリー代 表 取 締 役 。 1984 年 東 京 理 科 大 学 卒 。同 年 大 和 証 券 入 社 。同 年 に配 属 された大 和 証 券 経 済 研 究 所 (現 :大 和 総 研 )で、エネルギー産 業 等 の調 査 担 当 、素 材 ・エネルギー産 業 調 査 の統 括 、上 場 企 業 調 査 の 統 括 を歴 任 し、1999 年 退 社 。HSBC 証 券 、UBS 証 券 のシニアアナリストを経 て、2012 年 伊 藤 リ サーチ・アンド・アドバイザリー設 立 。現 在 、経 済 産 業 省 「総 合 資 源 エネルギー調 査 会 総 合 部 会 電 力 システム改 革 専 門 委 員 会 」、「原 油 価 格 研 究 会 」、日 本 証 券 アナリスト協 会 「運 営 委 員 会 」などの委 員 に就 任 中 。<主 な著 書 >「石 油 ・新 時 代 へ提 言 」(燃 料 油 脂 新 聞 社 ) 、「伊 藤 敏 憲 の提 言 」(月 刊 ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石 油 ネット)。 【免責事項】 「週刊レポート マーケットα」(以下、本情報と略記)は、株式会社市場経済研究所 が提供する一定の条件の下で執筆者が作成したレポートです。 利用者は、本情報を利用者ご自身でのみご覧いただくものとし、ご自身の判断と責任に おいてご利用ください。本情報は一定の情報を提供するものに過ぎず、特定の銘柄、金融 商 品 、商 品 価 格 な ど に つ い て の 投 資・購 買 に 関 す る 助 言 や 勧 誘 を 目 的 と し た も の で は あ り ま せん。また、市場経済研究所は、投資助言・代理業を一切行っておりません。 利用者は、本情報に関して、第三者への提供や再配信、再配布、独自に加工すること、 複写もしくは加工・印刷したものを第三者に譲渡または使用させることはできません。ま た、本情報のウェブページへのリンクは禁止します。その他、市場経済研究所が適当でな いと判断する行為をした場合には、利用を停止させて頂くことがあります。 本情報の利用にあたり、利用者が故意または過失により、市場経済研究所および当該執 筆者に対して、何らかの損害を与えた場合には、市場経済研究所等は損害賠償請求をする ことがあります。 2
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