レポート ペルー鉱業の現状 リマ事務所 所長 ペルーの経済成長率は5.8% (世界第35位、南米第2 位、2013年)であり、南米諸国の中でも順調に経済発 展を遂げている国の一つであるが、国民1人当たりの GDPは、6,541US$ ( 世界第88位、南米第7位)で、今後 も発展が期待される国である。 ペルーは、我が国の非鉄金属資源確保上、豪州やチ リと並び、最も重要な国の一つであり、同国の総輸出 額の約55%を銅精鉱等の鉱産物が占める鉱業国である。 2011年7月に誕生したHumala政権は、当初左派寄り の政策を打ち出し、資源ナショナリズムの嵐が到来す ることが懸念されたが、同大統領は、ペルーの発展の 鍵を握るのが鉱業であることをよく理解し、2011年9 月の鉱業ロイヤルティ法の改正、鉱業特別税及び鉱業 特別賦課金の導入により、社会プログラムへの投資に 充てる方向性を打ち出した。 また、ペルーで頻繁に発生する社会争議への対策と して、2011年末に先住民事前協議法を公布し、さらに 2012年4月に同法施行細則を公布し、先住民の権利保 護を政策に明確に組み入れたほか、鉱業等のプロジェ クトのうち、環境に対し重大な影響を及ぼすプロジェ クトについて必要とされる、詳細環境影響評価の審査 を行う独立機関である、持続的投資環境認証サービス 局設置法が2012年12月に公布された。 2012年8月には、投資額が48億US$と言われた、北 部Cajamarca州のMinas Conga金プロジェクトが反鉱業 運動により中断、2013年にはやはり北部のLambayeque 州のCañariaco銅プロジェクトで住民の反対運動によ り探鉱活動の一時中止を余儀なくされるなどしたが、 ペルー政府が2011年から取り組んでいる、近代的な鉱 業活動についての地域住民への啓蒙活動の取り組みも あり、2013年後半からは目立った大規模反鉱業運動も 発生せず、沈静化した状態が続き現在に至っている。 このように、社会発展と健全な鉱業活動の推進を図る 政策の中に置かれているペルー鉱業の現状を概観する。 1. ペルー鉱業の概要と位置づけ 1-1. ペルーの鉱山生産量の世界ランキング ペルーは多様な鉱物資源に恵まれた国であり、埋蔵 量では銀(世界第2位)、銅(同第3位)、亜鉛(同第3位) 、 鉛 (同4位) 、モリブデン (同第4位) 、錫及び金 (それぞ れ 同 第 9 位 )が 世 界 10 指 に 入 り(Mineral Commodity Summaries 2014、USGS)、これら鉱種については、世 界でも主要な生産国となっている。 写真1. ペルー第1の鉱山 Antamina銅・亜鉛鉱山 (写真提供:エネルギー鉱山省) 2015.3 金属資源レポート 49 (605) ペルー鉱業の現状 はじめに 岨中 真洋 レポート Antamina鉱山は、ペルー中部のAncash州に位置し、 2013年に約46万tの銅と約27万tの亜鉛を生産した。 (写 真提供:エネルギー鉱山省) 2013年のペルーの鉱山生産量は、エネルギー鉱山省 によると、銅が1,376千t (世界第3位)、亜鉛が1,351千t (同) 、銀が3,674t(同) 、錫が24千t (同)であり、モリブ デンも18千t(世界第4位)を生産した。 表1. ペルーの鉱山生産量と世界ランキング(2013年) ペルー鉱業の現状 2013 年 2013 年 ペルー 世界 世界シェア 生産量 (%) 2013 年 世界順位 ( )は 12 年順位 2012 年 ペルー 生産量 2013 年 ペルー 生産量 銅(千t) 1,298.8 1,375.6 5.9 18,293.9 7.5 3(3) 1 位:チリ(5,776) 、2 位:中国(1,707)、 4 位:米国(1,255) 亜鉛(千t) 1,281.3 1,351.3 5.5 13,720.4 9.8 3(3) 1 位:中国(5,392) 、2 位:豪州(1,523)、 4 位:インド(817) 1 位:中国(3,048) 、2 位:豪州(711)、 3 位:米国(340) 鉱種 増減 (%) 上位生産国 (2013 年) 鉛(千t) 249.2 266.5 6.9 5,598.9 4.8 4(4) 金(t) 161.5 151.5 -6.2 2,784.6 5.4 1 位:中国(428) 、2 位:豪州(265)、 6(6) 3 位:米国(228) 、4 位:ロシア(209)、 5 位:南ア(169) 銀(t) 3,480.9 3,674.3 5.6 25,925.2 14.2 3(3) 、 2 位:中国(3,906)、 1 位:メキシコ(5,277) 4 位:豪州(1,840) 錫(千t) 26.1 23.7 -9.2 327.3 7.2 3(3) 1 位:中国(149) 、 2 位:インドネシア(84)、 4 位:ボリビア(19) モリブデン (千t) 16.8 18.1 7.7 266.3 6.8 4(4) 1 位:中国(111) 、2 位:米国(61)、 3 位:チリ(39) 出典:エネルギー鉱山省 世界生産量及び世界順位:World Metal Statistics Yearbook 2014 1-2. ペルーの鉱山生産量の推移 ペルーでは、1990年代のFujimori政権下において推 進された鉱山民営化・外資導入促進政策により鉱業は 大きく成長した。 主要鉱種である銅の生産量は、この10年間で1.6倍 (2003年843千 t、2013年1,376千t)に 伸 び、2013年 は 2012年に対して5.9%生産量が伸び、2012年に引き続 き過去最高の生産量を記録した。 亜鉛は、生産量が過去最高であった2008年(1,603千t) には達しないものの、対2012年比で5.5%生産量が伸 び、2013年は1,351千tを生産した。 一方、金は、ペルー最大の金鉱山であるYanacocha 金鉱山 (Cajamarca州)の生産量低下の影響が大きく、 対2012年比で6.2%生産量が減少し、2013年は151tに留 まった。 図1. ペルーの銅、亜鉛、金の鉱山生産量の推移 50 2015.3 金属資源レポート (606) 出典:エネルギー鉱山省 レポート 1-3. ペルーの鉱産物輸出額の推移 ペルーの2013年の総輸出額は418億US$で、2011年 をピーク (463億US$)に減少に転じ、2012年の総輸出 額(456億US$) に対して8.4%の減少となった。 ペルー鉱業の現状 出典:国税庁(SUNAT) 出典:国税庁(SUNAT) 図2. ペルーの総輸出額の推移 図3. 鉱産物輸出額の内訳 ペルーの総輸出額のうち、鉱産物が占める割合は 2013年では55%を占めており、鉱業がペルー経済のけ ん引役であることには変わりがないものの、この比率 は、2010年で61%、2011年で59%、2012年で57%と下 降傾向にある。これは、わずかずつではあるが石油や 天然ガスの輸出額が増加していることに加え、金属鉱 業以外の輸出産業が相対的に成長してきた影響が数字 として表れているものと見ることが可能である。 鉱産物の輸出額は、2011年の274億US$をピークに 減少に転じ、金属価格の低下の影響から2012年には 263億US$に、2013年は230億US$となった。ペルーの 鉱産物の輸出額のうち重要なのは銅 (2013年98億US$) 及び金 (同78億US$)で、この2鉱種で鉱産物輸出額の 約77%を占め、この比率は、2011年以降大きな変化は 無い。 がペルーから輸入されており、第3位に豪州、第4位に カナダが続いた。 一方、2013年における日本の亜鉛精鉱輸入量は994 千tであったが、第1位の豪州 (295千t) 、第2位のボリ ビア(246千t) 、第3位の米国 (175千t)に次ぎペルーは 第4位の亜鉛精鉱輸入相手国で、155千t(対前年比20% 減)がペルーから輸入されており、第5位にメキシコ、 第6カナダが続いた。2011年以降、我が国はペルーか らの亜鉛精鉱輸入量が減少傾向にある (2010年284千t、 2011年226千t、2012年195千t、2013年155千t) 。 1-4. 我が国のペルーからの銅、亜鉛精鉱輸入量 ペルーは、我が国の精鉱輸入相手国として重要な位 置を占める。 2013年において、日本は4,992千tの銅精鉱を輸入 したが、第1位チリの2,408千tに次いでペルーは第2位 の銅精鉱輸入相手国であり、735千t (対前年比7.6%減) 2. ペルーの主要鉱山の生産量 2-1. 銅鉱山生産量 2013年のペルーの銅生産量は1,376千tであり、対前 年比6%増で、2012年に引き続き、過去最高を記録した。 2013年の世界の銅生産量は、2012年比で9.4%増加 して18,307千tとなり、ペルーの世界順位は、チリ、中 国に次いで世界第3位を保っている。ペルーの銅生産 量は、世界の生産量の伸びほどではないが、2009年か ら2011年にかけての銅生産量減少傾向は増加に転じた と言えるであろう。 2013年の銅の生産量を鉱山別にみると、ペルー最大 (t) 994.3千t ペルー 155.2千t 米国 174.5千t ボリビア 245.9千t 豪州 294.9千t 出典:財務省貿易統計 図4. 日本の銅精鉱輸入量 出典:財務省貿易統計 図5. 日本の亜鉛精鉱輸入量 2015.3 金属資源レポート 51 (607) レポート のAntamina銅・亜鉛鉱山は、拡張工事を完了、2012年 3月からフル生産を開始し、2013年も2012年に横並び の合計461千tを生産し、ペルーの銅の全生産量の1/3 を占めている。 次いで、第2位で現在拡張工事中のCerro Verde銅鉱 山 (Arequipa 州 )が 261 千 t、 第 3 位 の Cuajone 銅 鉱 山 (Moquegua州) が169千tを生産した。 Antapaccay銅 鉱 山 (Cisco州 )はGlencoreの 新 規 鉱 山 で、2012年11月に生産を開始し、2013年は、順調に生 産量を伸ばして151千tを生産し、ペルー第4位の銅鉱 山に成長した。そして、第5位にはToquepala銅鉱山が 139千tを生産した。 ペルーにおける銅の生産は、外資が操業する上記の 上位5鉱山が全体の86%を占めており、今後のペルー の銅の生産推移は、これら5鉱山の生産動向と、新規 開発プロジェクトの進捗が鍵を握っている。 ペルー鉱業の現状 表2. ペルー・上位10銅鉱山の生産量(2013年) 順 位 鉱山名 権益所有企業 2012 年 生産量 (t) 2013 年生産量(t) 合計 増減 精鉱 Sx-Ew 1 Antamina BHP Billiton:33.75%、 Glencore Xstrata:33.75%、 Teck Resources:22.5%、三菱商事 :10% 462,832 461,058 461,058 0 -0.4% 2 Cerro Verde Freeport McMoRan:53.6%、 Buenaventura:18.2%、 住友金属鉱山 :16.8%、住友商事 :4.2% 278,813 261,348 214,037 47,311 -6.3% 3 Cuajone Southern Copper(Grupo Mexico:80.9%) 161,732 168,585 168,585 4 Antapaccay Glencore Xstrata 5,027 151,187 138,999 12,188 2,907.5% 5 Toquepala Southern Copper(Grupo Mexico:80.9%) 149,379 139,095 110,695 28,400 6 Cerro Lindo Milpo(Votorantim:50.02%) 29,929 36,970 36,970 0 23.5% 7 Cerro Corona Gold Fields:98.5% 37,673 31,443 31,443 0 -16.5% 8 Colquijirca El Brocal(Bueneventura:53.24%) 24,000 27,894 27,894 0 16.2% 9 Cobriza Doe Run 20,258 19,578 19,578 0 -3.4% 20,887 18,431 18,431 0 -11.8% 1,190,530 1,315,589 1,227,690 87,899 10.5% 10 Condestable Iberian Minerals 計 その他 総計 108,231 60,052 58,293 0 4.2% -6.9% 1,759 -44.5% 1,298,761 1,375,641 1,285,983 89,658 5.9% 出典:エネルギー鉱山省 2-2. 亜鉛鉱山生産量 2013年のペルーの亜鉛の鉱山生産量は1,351千tとな り、2012年比で70千t(5.5%)の増加で、世界順位も中 国、オーストラリアに次ぎ、世界第3位と変化がなか っ た。 ペ ル ー に お け る 亜 鉛 の 生 産 量 は、2008年 の 1,603千tをピークに2011年まで減少傾向が続いてき たが、2012年、2013年と2年連続して増加した。 生産量を鉱山別にみると、ペルーの亜鉛生産量の 23%を占めるAntamina銅・亜鉛鉱山は、2012年は銅生 産に力点がおかれていたが、2013年は亜鉛生産量を46 千t (17%)伸ばした。ペルーの亜鉛生産量は、同鉱山 の生産動向に大きく左右される状況は変わらない。 2012年に引き続きペルー第2位の亜鉛生産量のCerro Lindo鉱山は、2013年の前半の選鉱場拡張工事により 亜鉛生産量を48千t(41.8%) と大きく伸ばした。 また、2012年にペルーの亜鉛鉱山のベスト10入りを 果たしたCatalina Huanca鉱山も2012年比で10%を超え る生産量の増加で国内第8位の亜鉛鉱山となっている。 亜鉛価格低迷のため一時休止していたIscaycruz亜鉛 52 2015.3 金属資源レポート (608) 図6. 銅鉱山の供給構造(上位5鉱山が占める割合) 出典:エネルギー鉱山省 鉱山 (Lima県)は2010年4月から生産を再開し、2011年 にはペルー第2位の亜鉛鉱山に返り咲いたが、鉱量の 減少により2013年も生産量は減少し、2008年レベルの 生産量(175千t/年)の約半分(84千t/年)であった。 亜鉛は、上位5鉱山が全体の生産量に占める割合は 55%と、中小鉱山が占める割合が銅と比較して高い。 また、近年は、新規で大規模な亜鉛鉱山の操業開始の ニュースが無い状況が続いている。 表3. ペルー・上位10亜鉛鉱山の生産量(2013年) 鉱山名 2012 年 2013 年 生産量 (t) 生産量 (t) 権益所有企業 増減 Antamina BHP Billiton:33.75%、Glencore Xstrata:33.75%、 Teck Resources:22.5%、三菱商事 :10% 269,989 315,802 17.0% 2 Cerro Lindo Milpo (Votorantim:50.06%) 114,038 161,740 41.8% 3 Chungar Volcan 99,217 104,634 5.5% 4 San Cristobal Volcan 87,848 83,682 -4.7% 5 Iscaycruz Glencore Xstrata:97% 87,617 81,539 -6.9% 6 El Porvenir Milpo (Votorantim:50.06%) 71,956 63,317 -12.0% 7 Atacocha Milpo (Votorantim:50.06%) 45,461 45,177 -0.6% 8 Catalina Huanca Iberian Minerals (98.73%) 38,670 42,732 10.5% 9 Andaychagua 37,463 36,538 -2.5% 10 Americana Volcan Casapalca 計 その他 総計 32,831 31,960 -2.7% 885,090 967,121 9.3% 396,192 384,152 -3.0% 1,281,282 1,351,273 5.5% 出典:エネルギー鉱山省 2-3. 金鉱山生産量 2013年の金の生産量は2012年と比較し、約10t減少 の151tとなり、過去最多の2005年 (208t)の73%まで 減少している。 2013年の金生産量を鉱山別にみると、2005年には 104tの 金 を 生 産 し た ペ ル ー 最 大 のYanacocha金 鉱 山 (Cajamarca州 )は、2012年 比 で10.2t (24.4 %)減 少 の 31.6tにとどまった。Yanacocha鉱山は、2012年8月に 反対運動によって中断したMinas Conga金プロジェクト と同一州、同一操業者 (Yanacocha社:Newmont51.35%、 Buenaventura社43.65%、IFC5%)による鉱山で、2013 年も反対運動の影響を受け、操業の中断があったとさ れている。 ま た、 第 2 位 の 生 産 量 の Lagunas Norte 鉱 山 (La Libertad州)、生産量第8位のOrcopampa鉱山 (Arequipa 州 )も 生 産 量 を そ れ ぞ れ2割、3割 落 と し て お り、 Orcopampa鉱山では生産体制の再編に着手している。 エネルギー鉱山省のデータで第3位の生産量のM. D.D.は、小規模事業者や零細規模事業者の集合である。 その生産量は、2011年には22.5tであったが、翌2012 年にはインフォーマル鉱業 (鉱業活動が認められる地 域内における、正規手続きを踏まずに行われる鉱業活 動)の合法化の過程での強制的な操業中断と、違法鉱 業(鉱業活動禁止地域内での鉱業活動) の取り締まりに よる影響で、2012年には生産量を11.4tまで落とした が、2013年は、合法化された鉱業事業者の増加により、 前年比35%増の15,4tまで生産量は回復した。 図7. 亜鉛鉱山の供給構造(上位5鉱山が占める割合) 出典:エネルギー鉱山省 2-4. 地金生産量 ペルーにはIlo (Moquegua州、銅)、Cajamarquilla (Lima 州、 銅・ 亜 鉛 )、La Oroya (Junín州、 銅・ 鉛・ 亜 鉛 )、 Funsur(Ica州、錫)の4か所の製錬所が存在する。 Soutern Copper社のIlo製錬所は前年比で30.6%生産 量を伸ばしているが、生産量拡張工事中で、年間生産 量を82万tに拡張するとしている。 米国Doe Run社が所有するLa Oroya製錬所は、2008 年には銅地金を54千t、亜鉛地金を43千t、鉛地金を 114千t生産していたが、資金繰りの悪化によって 2009年半ばから操業を停止していた。2010年末には債 権者会議で一旦会社清算を決定したが、ピークを過ぎ たとは言え依然金属価格が高く、環境対策プログラム を進めるとして、2012年7月末に銅、亜鉛の製錬再開 を発表、2012年9月に銅と亜鉛の製錬を再開した。そ の後2013年4月には債権者会議において清算手続きを 中止し、会社更生後にHuancavelica県のCobriza銅鉱山 とともに売却することが決定された。2013年は断続的 な生産にとどまった。 2015.3 金属資源レポート 53 (609) ペルー鉱業の現状 1 レポート 順 位 表4. ペルー・上位10金鉱山の生産量(2013年) レポート 順 位 鉱山名 2012 年 2013 年 生産量 (t) 生産量 (t) 権益所有企業 増減 ペルー鉱業の現状 1 Yanacocha Newmont:51.35%、Buenaventura:43.65%、IFC:5% 41,865 31,640 -24.4% 2 Lagunas Norte Barrick Gold 23,456 18,843 -19.7% 3 M.D.D Madre de Dios 11,412 15,398 34.9% 4 La Arena Rio Alto 6,214 6,564 5.6% 5 Horizonte-Curaubamba Consorcio Minero Horizonte 5,727 6,202 8.3% 6 Retamas Minera Aurifera Retamas 5,465 5,499 0.6% 7 Carolina Gold Fields 5,508 5,167 -6.2% 8 Orcopampa Buenaventura 7,417 5,024 -32.3% 9 Tucari Aruntani 5,531 4,915 -11.1% Coimolache 3,800 4,439 16.8% 116,395 103,691 -10.9% 45,150 47,795 5.9% 161,545 151,486 -6.2% 10 Tantahuatai 計 その他 総計 出典:エネルギー鉱山省 一方、Cajamarquilla製錬所では生産設備の拡張工事 の結果、亜鉛地金の生産量が2009年の140千tから 2011年 の313千 t へ と お よ そ2.2倍 の 増 産 を 達 成 し、 2012年に引き続き2013年も順調に操業は推移した。 図8. 金鉱山の供給構造 (上位5鉱山が占める割合) 出典:エネルギー鉱山省 表5. ペルーの地金生産量(2013年) 製錬所名 銅 権益所有企業 Ilo Southern Copper(Grupo Mexico) 203,865 266,260 La Oroya Doe Run Cajamarquilla Votorantim 合計 Cajamarquilla Votorantim 亜 La Oroya 鉛 合計 La Oroya 鉛 2013 年 2012 年 ペルー ペルー 生産量(t)生産量(t) Doe Run Doe Run 合計 Funsur 錫 Minsur 合計 ペルー 2013 年 比率 世界 生産量(t) (%) 増減 30.6% 1,934 493 -74.5% 4,320 5,039 16.6% 210,119 271,792 29.4% 315,893 326,171 3.3% 3,387 20,191 496.1% 319,280 346,362 8.5% 0 467 - 0 467 - 24,811 24,181 -2.5% 24,811 24,181 -2.5% 2013 年 主要生産国(千t) 1 位:中国(5,675.0) 2 位:日本(1,563.0) 3 位:チリ(1,358.3) 注)Sx-Ew 生産除く 16,947,900 1.6 12,891,000 1 位:中国(5,100.0) 2 位:韓国(886.0) 2.7 3 位:インド(788.0) 11,224,000 1 位:中国(5,100.0) 2 位:米国(1,248.0) 3 位:インド・韓国 0.0 (各 473.0) 353,400 1 位:中国(158.5) 2 位:インドネシア (63.0) 6.8 3 位:マレーシア(32.7) 出典:エネルギー鉱山省、ICSG Copper Bulletin April 2014、ILZSG Lead and Zinc Statistics April 2014、World Metal Statistics Yearbook 2014 注)①La Oroya製錬所は2009年半ばから生産停止、2012年一部生産再開 ②銅地金世界生産量は、Sx-Ew生産分(3,808.5千t)を除く 54 2015.3 金属資源レポート (610) 3. 今後の鉱山開発プロジェクト 一方、鉱業投資額の中で近年、特に2010 年以前と 比較して大きな比重を占めるのが、プラント設備・鉱 業機器、インフラ整備費、準備費及びその他の費用で ある。2011年付近の鉱業を取り巻く環境の変化として は、銅価格高騰(2011年2月最高値10,148US$/t) 、反鉱 業運動の激化がある。探鉱費の伸びの鈍化・減少と合 わせてみると、 資源ブームに乗じて探鉱活動が活発化、 鉱山開発のステージが全体的に進んだものの、反鉱業 運動や鉱山労働者の要求の高まり、環境対策費の増加 などの影響がここにも現れているように見える。 なお、準備費及びその他に含まれる費用の内訳は、 エネルギー鉱山省に対するヒアリングでも明瞭な回答 は得られなかったが、地元対策 (水道、学校・教育、 出典:エネルギー鉱山省 説明等)や環境影響評価等の費用が含まれるものとみ られる。また、今後、ペルー鉱業が成熟の度合いを深 めていくに従い、鉱山プロジェクトの奥地化等により、 インフラ整備費も増大していくことが予想される。 また、エネルギー鉱山省によると、非金属鉱業も含 め2014年10月現在で54件の鉱業プロジェクトが実施中 あるいは計画中であり、合計投資額は609億US$に上 る。 鉱業投資額の鉱種別では、銅プロジェクトが全体の 64%、金プロジェクトが13%、鉄プロジェクトが12% を 占 め、 ま た 国 別 で は 中 国 が 全 体 の23 %、 米 国 が 17%、カナダが15%、ペルーが10%、スイスが10%を 占める。 2015.3 金属資源レポート 55 (611) ペルー鉱業の現状 図9. 年間鉱業投資額の推移 レポート エネルギー鉱山省によると、ペルーの鉱業投資額は 過去最高を更新し続け、2013年は97.2億US$に達し、 2012年の85.0億US$に比べ14.4%の伸びを示し、2009 年から2013 年までの5 年間では3.4倍に増加している。 2013年に最も鉱業投資額が多かったのはApurimac州 (17.5億US$)で、以下Junín州 (15.1億US$) 、Arequipa州 (13.9億US$)、Cusco州 (11.7億US$) 、Ancash州 (7.4億 US$) と続いた。 鉱業投資額を企業毎に見ると、2013年に最も鉱業投 資額が多かったのはXstrata Las Bambas社(17.1億US$) で、 以 下、Chinalco Perú 社(11.9 億 US$) 、Cerro Verde 社(10.7 億 US$) 、Antapaccay 社 (6.3 億 US$) 、Antamina 社 (5.4億US$)と続いた。 2013年 の 鉱 業 投 資 額97.2億US$の う ち、 探 鉱 費 は 7.74億US$(8.0%)であり、近年は探鉱費の伸びは頭打 ち傾向にあったが、2013年は減少(前年比-14.5%)に 転じた。 表6. 今後の鉱山開発プロジェクトと投資額 レポート 鉱種 企業名 プロジェクト名 調査ステージ (生産開始予定年) 投資額 (百万 US$) ペルー鉱業の現状 Glencore Xstrata (2014 年 4 月、中国コンソーシアム買収決定) Las Bambas EIA 承認済(2016 or 2017) 6,031 Soc. Mra. Cerro Verde (Freeport McMoran/ Sumitomo) Cerro Verde 拡張工事中(2016) 4,600 CHINALCO Toromocho EIA 承認済 (2014) 3,500 CHINALCO Toromocho 拡張計画 (2016) 1,320 Anglo American/ Mitsubishi Quellaveco EIA 承認済(2019) 3,300 Antares Haquira 探鉱中(2019) 2,800 Lumina Copper(Minmetals/ Jiangxi) Galeno 探鉱中(2017) 2,500 Hudbay Minerals/ Hudbay Peru Constancia EIA 承認済(2014) 1,800 Candente Resources Cañariaco 探鉱 (2018) 1,599 Southern Copper Los Chancas 探鉱中(2019) 1,560 AQM Copper(AQM/ Teck Resources) Zafranal 探鉱中(2018) 1,122 Rio Blanco Copper(Zijin Group) Rio Blanco 探鉱中(2019) 1,500 Los Calatos 探鉱中(2018) 1,320 Rio Tinto La Granja 探鉱中(2017) 1,000 Southern Copper Tia Maria EIA(2 回目)実施中(2016) 1,400 Brescia/ Korea Resources/ LS Nikko Copper Marcobre(Mina Justa) 探鉱中(2016) 744 Anglo American Michiquillay 探鉱(2018) 700 Milpo (Votorantim Metais) Pukaqaqa EIA 審査中(2016) 630 Toquepara 拡張計画(2014) Ilo 拡張計画(未定) 未定 Milpo (Votorantim Metais) Magistral 探鉱中(2016) 750 Junefield Don Javier 探鉱中(未定) 600 Pan Pacific Copper Quechua 探鉱中(2015) 490 Vichaycocha(Volcan) Rondoni 探鉱中(2016) 350 Shouxin Peru 廃さい回収プロジェクト EIA 承認済(2015) 239 ANABI Anubia 探鉱中(2015) 銅 Minera Hampton(Metminco) Southern Copper 1,100 90 出典:エネルギー鉱山省 56 2015.3 金属資源レポート (612) 企業名 プロジェクト名 調査ステージ (生産開始予定年) 投資額 (百万 US$) Newmont/ Buenaventura/IFC Minas Conga EIA 承認済(2017) 4,800 Quincay II Centauro 探鉱中(未定) 3,000 Canteras de Hallazgo Chucapaca 探鉱中(2016) 1,200 EIA 承認済(2014) 373 Buenaventura Tambomayo EIA 審査中(2016) 256 Minera Kuri Kullu(IRL Ltd) Ollachea EIA 承認済(2015) 170 Sulliden Shauindo(Sulliden Gold) Shauindo EIA 承認済(2016) 132 Ares(Hochschild) Crespo EIA 承認済(2015) 110 Reliant Venture(Silver Standard) San Luis EIA 承認済(未定) 未定 Anabi Anama EIA 承認済(2014) 40 Corani EIA 承認済(2015) 600 Santa Ana EIA 審査中(未定) Hilarion 探鉱中(2016) 470 Colquijirca 拡張工事中(2014) 432 Accha 探鉱中 (2017) 346 Hierro Apurimac 探鉱中(2020) 2,300 Pampa de Pongo 探鉱中(2016) 1,700 Marcona 拡張工事中(2015) 1,500 Cerro Ccopane 探鉱中(未定) 未定 錫 Bofedal II 廃さい回収 Minsur 探鉱中(2016) 165 Buenaventura 多 鉱 Invicta Mining(Andean American Mining) 種 Milpo Uchucchacua 拡張工事中(2014) 100 Invicta EIA 承認済(2015) 93 Cerro Lindo 拡張工事中(2014) 40 Fosfatos Mantaro 探鉱中 (未定) 850 拡張工事中(2014) 520 EIA 承認済(2015) 500 探鉱中(未定) 125 金 銀 Bear Creek Mining Milpo 亜 El Brocal(Buenaventura) 鉛 Collasuyo Apurimac Ferrum(Strike Resources) Jinzhao Mining Peru 鉄 (Nanjinxhao Group/ ZiboHongda Mining) 鉱 石 Shougang Minera Cuervo (Cuerco Resources/ Strike Resources) Mantaro Peru Miski Mayo/ Vale Bayovar リ ン Fosfatos del Pacifico (Cemento Pacasmayo70%、Mitsubishi Zuari Fosfatos プロジェクト Industries30%) カリ Americas Potash ウム Salmuera de Sechura 合 計 71 60,938 出典:エネルギー鉱山省 2015.3 金属資源レポート 57 (613) ペルー鉱業の現状 Minera Suyamarca(Hochschild60%、IMZ40%) Inmaculada レポート 鉱種 レポート ペルー鉱業の現状 図10. 主な鉱山・製錬所と鉱山開発プロジェクト位置図 4. 最近のトピックス 4-1. ペルーの鉱業関係争議 2012年は、Newmont(米国) とBuenaventura社 (ペルー) がJVで進めていたCajamarca州のMinas Conga金プロジ ェクトが中断するなど、大規模な鉱業関係争議のニュ ースが多かったが、2013年は前期にCañariaco銅プロ ジェクトで地元コミュニティーの反対運動があり、プ ロジェクトオペレーターのCandente Copper社が探鉱活 動を中断する事態が発生した。 2014年7月現在、確認されていた社会争議は合計208 件で、2013年7月時点の225件と比較すると、幾分減少 傾向にある。この208件の争議の内、社会・環境争議 は133件であり、さらにその内の95件が鉱業関連の争 議である。95件の鉱業関連争議の内、84件が環境汚染 や環境汚染による社会への影響に関するものである。 2013年下期以後は、地元報道においても大規模な反鉱 業運動が報道されることはほとんど見られなくなった が、鉱業関連争議の件数自体は、1年前と比較しても 減少しておらず、依然、鉱業関連争議は多いと言わざ るを得ない状況が続いている。 図11. 確認されたペルー全国の争議件数の推移 58 2015.3 金属資源レポート (614) の合意を、許可の際の最も重要な要件と位置付けてお り、統一地方選挙の結果が鉱業プロジェクトの進展に 大きく影響するが、鉱業活動による環境負荷のコント ロールと環境修復、そして何よりも、環境保全と地域 住民の幸福を目指す高い意識による取組が求められて いる。 2015.3 金属資源レポート 59 (615) ペルー鉱業の現状 4-3. エネルギー鉱山省による社会啓蒙活動 鉱業国ペルーで大きな社会問題となっている、地域 住民の鉱業に対する反対運動を、近代的な鉱業に対す る住民の理解促進により解消・鉱業投資を促進させる ため、エネルギー鉱山省は地域住民に対する啓蒙活動 を実施している。 この啓蒙活動は、Pasantía( インターンシップ)と呼 ばれる研修で、鉱業影響下地域の自治体やコミュニテ ィ代表者を2週間に亘ってリマに招聘し、参加者に鉱 業に対する正しい知識を付け、理解を深めることを目 的とし、2011年10月から、エネルギー鉱山省が大学の 協力を得て、現在のスタイルで開始された。また、 Pasantía参加者は地元に戻り、同様の啓蒙活動(Réplica: レプリカ)を地域住民に対して行う(2012年8月開始) 。 Pasantía参加者は、エネルギー鉱山省による周到な 準備により、村長、村会議員、村役場職員、地元コミ ュニティ、青年組合、女性協会の代表者や書記、その 他コミュニティの有力者や調整役等から選定されてい る。選定される参加者は、大部分が高卒、技師、専門 職と称される人々で、これまでに地域内での合意形成、 交渉・調整の経験を持つ。また、反鉱業運動の指導者 も含まれる。 Pasantíaの内容は、 ・社会・コミュニケーション能力開発 リーダーシップ、チームワーク、コミュニケーシ ョン能力、争議対応能力の向上 等 ・鉱業に関する基礎知識習得 地質学、探鉱、採掘、選鉱、製錬、環境保全 等 ・鉱業・環境関連法規の理解 労働者や地元住民の権利義務、鉱業関連法規、政 府機関 等 ・鉱業や環境の社会側面の理解 鉱業関連の社会・環境政策、環境調査、労働安全 衛生 等 ・鉱業プロジェクト形成過程の理解 プロジェクト形成プロセス、プロジェクトの評価 等 ・鉱山見学 近代的な鉱山の見学、鉱山の環境保全や社会貢献 への取り組みの理解 ・閉会式 であり、閉会式では、参加者に対しエネルギー鉱山省 からPasantía終了認定証とメダルが公布される。また、 合間ではレクリエーション等も行われている。 レポート 4-2. M inas Conga金プロジェクトのその後と全国統 一地方選挙の鉱業に対する影響 前述のMinas Conga金プロジェクトに関し、Santos・ Cajamarca州知事が主導する反対運動の激化は、プロ ジェクトが位置するCajamarca州内に留まらず、首都 Limaにおいても抗議行動が発生するなどし、2012年8 月末にはNewmontは、プロジェクトの中断を決定する に至った。 2013年9月には、オペレーターのNewmontは、Santos 知事の任期が満了するのを待ち、2014年の統一地方選 挙を待ち、新たな州知事の鉱業活動への対応を見極め た2015年以降に同プロジェクトの実施の決定を行うと コメントした。 2014年5月、Buenaventura社は、金の価格が低下し、 またMinas Conga金プロジェクトと同じJVで操業して いるペルー第1のYanacocha金鉱山の資源量が減少して いく中、Minas Conga金プロジェクトで開発を進め、 早期の生産開始を実現するため、同プロジェクトの規 模を縮小することを検討していると発表、鉱山開発を 開始するには地域住民の賛同が前提であるとした。 このような折、2014年6月、Minas Conga金プロジェ クトの反対運動の急先鋒であったSantos知事が、公共 事業の入札に係る収賄容疑で逮捕され、14か月の拘禁 命令により、リマ市内の刑務所に収監された。Santos 知事がペルー中央政界への進出の野望を持つことは、 国内で広く認知されており、地元票固めと、鉱業投資 を促進させたい中央政府との対峙の構図を強固にする ため、大規模な反鉱業運動を展開したと見られている が、2014年10月の統一地方選挙へのCajamarca州知事 への出馬の意向を示していた。 そして2014年10月5日に行われた統一地方選挙の結 果、Santos知事は収監中であるにも関わらず有効票の 44.2%を獲得し当選した。2015年1月から新知事の任 期が始まったが、Santos知事は収監中であるため知事 業務は副知事の代行となり、また有罪が確定した場合 は、解任の可能性があると伝えられた。 この状況に対し、 2014年10月の統一地方選挙終了後、 Minas Conga 金 プ ロ ジ ェ ク ト の JV 企 業 体 で あ り、 Yanacocha金鉱山を操業するYanacocha社は、Cajamarca 州 に お け る 鉱 業 投資は今後も継続するが、同 社 が Cajamarca州内で実施する鉱業プロジェクトが社会的 に受け入れられるよう、責任ある活動を継続していく とコメントを発表している。また、業界団体であるペ ルー・鉱業石油エネルギー協会 (SNMPE) は、Santos知 事がCajamarca州の発展を望むのであれば対話に応じ るべきであるが、一筋縄にはいかないだろうとコメン トを発している。Cajamarca州以外では、Arequipa州 Islay郡の郡知事に、Southern Copper社のTia María銅プ ロジェクトに反対を表明したいたAle氏が当選してい る。 エネルギー鉱山省は、鉱山開発許可のための地元と レポート ペルー鉱業の現状 写真2. Pasantíaの一コマ (写真提供:エネルギー鉱山省) 写真3. Pasantía参加者による鉱山見学 (写真提供:エネルギー鉱山省) PasantíaとRéplicaの開催実績は、 ・Pasantía:2011年10月∼2014年10月で22回、延べ 586人が参加 Cajamarca州11回参加、Ancash州9回、Puno州9回、 Apurimac州・Ayacucho州各8回など ・Réplica:2012年8月 ∼2014年10月 で27回、 延 べ 1,617人が参加 Puno 州 5 回 開 催、Amazonas 州・Ancash 州・ Apurimac州 各3回、La Libertad州・Lambayeque州 各2回など である。 エネルギー鉱山省は、このPasantíaとRéplicaの実施 により、Tia María 銅プロジェクトでは、 「Réplicaで150 人が研修を受け、環境影響評価書の修正を進めさせた ところ、公聴会でも理解が得られた」 、 「Cañariaco銅プ ロジェクトにおいても反鉱業運動指導者に研修を受け てもらい、正しい知識の下で鉱山に対する議論を行う 場を持てたため、反対派の考えも変わり、反鉱業運動 は無くなったと認識している」 としている。 住民からの鉱山開発反対の声以外にも探査実施時の現 場アクセス料(通行料)で法外な額を要求されたり、鉱 山操業開始後も労働条件改善に関して違法な抗議行動 が行われたりする話を耳にすることがある。このため、 ペルーにおける資源開発は、必ずしも順風満帆で進ん でいるとはいい難い。 現Humala政権は、鉱業がペルー発展の鍵を握って いることを承知で、2011年の鉱業税制刷新、2012年の 先住民事前協議法制定、同じく2012年の持続的投資環 境認証サービス局 (SENACE)設立、2013年∼2014年の 違法鉱業取り締まり強化等により、ペルーでの健全な 鉱業の発展のための手を打ってきたが、前述のとおり、 エネルギー鉱山省による社会啓蒙活動が行われてはい るが、鉱業影響下にある地域住民の鉱業活動に対する 理解を得るのは容易ではない。 ペルーにおける現在の鉱業の状況は、大規模な反鉱 業運動は2012年当時に比べると発生していないが、元 より地域住民の間では鉱業への不信感があることに加 えて金属価格の低下もあり、鉱山企業は選択と集中に より、慎重に事業を進めている状況である。 経済が停滞傾向を見せ始めたペルー (2013年の経済 成長率は5.79%、2014年は2%台であると見られる)で は、2016年の第2四半期には大統領選挙が控えており、 2015年が現Humala政権にとって実質的に最後の年と なっている。今後、大統領選に向け、様々な政治的な 動きが出てくることが予想されるが、健全な鉱業の発 展がペルーの発展と同国民の幸福に寄与することを期 待しつつ、日本との関係の点でも今後のペルーの鉱業 の動向を注視していく必要がある。 (2015.2.22) 5. おわりに 鉱物資源開発の話題で、 「チリの次はペルー」という 声を聞くことがしばしばある。前述のようにペルーは 資源ポテンシャルに恵まれ、鉱産物生産量も世界屈指 の資源国である。 一方で、本稿では触れなかったが、スペイン統治時 代に遡る、劣悪な環境下での先住民による鉱山労働や 搾取のイメージと、かつての鉱業活動における環境保 全への意識の欠如がペルーにおける反鉱業運動の深層 に根差している。このため、環境破壊を危惧する地域 60 2015.3 金属資源レポート (616)
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