マーケットα

(株) 市場経済研究所
2015 年 6 月 22 日(月)
Market Economy Research Institute Ltd.
週刊レポート
マーケットα
<第 113 号>
(株)資源・食糧問題研究所
代表 柴田明夫
天然ガス、EIA が上昇と予測
天然ガス価格は 6 月に入って軟調に推移している。ヘンリーハブ・スポット価格は、4
月平均の 100 万 BTU(英熱量単位)2.61 ドルから 5 月は平均 2.85 ドルに上昇したものの、
6 月 19 日時点では 2.79 ドルとやや軟化している(グラフ参照)。NOAA(アメリカ海洋大
気庁)は今年の夏は昨年に比べて気温が上昇し、エア・コン向けの電力需要が増加、一般
の住居用ビルの電気料金は前年比 4.8%上昇すると予想している。このため、EIA(米エネ
ルギー情報局)は 6 月の STEO(短期エネルギー見通し)で、天然ガス価格も今年の夏場に
かけて上昇すると予測しているが、天然ガスの生産も急速に拡大し、在庫の積み増しも進
むとみられることから、同価格は、4 ドルを上回ることはあるまいとしている。
天然ガス在庫、前年同期の 51%増
天然ガス商業在庫は、4 月からは在庫積み増し期に入っており、5 月末時点で前週比 132
Bcf(10 億立方フィート)増加し、2,233Bcf となった。これは昨年の同時期に比べ 751Bcf
(51%)多く、過去 5 年間の同時期平均と比べても 22Bcf(1%)多い。EIA は、天然ガス
在庫の積み増しが終了する 2015 年 10 月末時点で、同商業在庫は 3,912Bcf に達するとみて
いる。これは過去 5 年間平均を 115Bcf 上回る。
EIA は、2015 年および 2016 年の天然ガス消費量を日量平均各 76.7Bcf、76.6Bcf と予測。
2014 年の消費量 73.5Bcf より増加する。これは主に、天然ガス価格の低迷を映して、産業
用およびガス火力発電用需要が拡大するためである。特に、2015 年の火力発電向けガス需
要は前年比 13.7%増加する見通しだ。
減産、予想通り見送り
一方、WTI 原油価格は、節目である 1 バレル=60 ドルをにらみ、もみあいとなっている(グ
ラフ参照)。6 月 5 日の OPEC(石油輸出国機構)総会では、事前予想どおり日量 3,000 万
バレルの生産枠が据え置かれた。その背景には、①ロシアやブラジルなど非 OPEC の協力を
得られそうにない、②イランは減産よりも制裁の全面解除を勝ち取り、一刻も早く輸出拡
大につなげたい思惑がある、③減産すれば原油価格が上昇し、米シェールオイルの生産活
動が再び活発化する―などがある。
OPEC 総会後、市場には供給過剰が長引くとの見方が広がっている。にもかかわらず油価
が底固いのは、①世界の石油需要が回復傾向にある、②米原油生産が減少に転じた、③世
1
界の原油在庫の積み上がりにも歯止めが掛かった―などによる。IEA( 国際エネルギー機関)
は、2015 年の世界石油需要が日量 9,360 万バレルで、前年比 110 万バレル増加すると予測。
EIA(米エネルギー情報局)は、米シェールオイルの生産が 5 月平均の日量 960 万バレルを
ピークに 6 月以降減少に転じ、2015 年平均では同 940 万バレルと発表した。強弱材料が拮
抗する中、原油は 60 ドルを挟む硬直状態が続きそうだ。
WTI原油&天然ガス価格
ドル/バレル
ドル/100万Btu
120
10.000
110
9.000
100
8.000
90
7.000
80
70
6.000
60
5.000
50
4.000
40
3.000
30
2.000
20
WTI原油
10
NY天然ガス(右目盛)
0.000
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
2012
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
2013
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
2014
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
2015
2
3
4
5
6
0
1.000
(出所)NYMEX
《執筆者紹介》
柴田 明夫(しばたあきお) 資源・食糧問題研究所代表 1976 年東京大学農学部卒。同年丸
紅入社。鉄鋼第一本部、調査部等を経て、2002 年に丸紅経済研究所主席研究員。同副所長を
経て、2006 年同所長。2010 年同代表。2011 年に資源・食糧問題研究所を設立、代表に就任。
<主な著書>『食料争奪』(日本経済新聞出版社) 、『水戦争』(角川 SSC 新書) 。
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