用語について

「微分」の用語
最初の 0 節では「微分」に関する用語を解説します。普段の
使い方より厳密に言葉を補っています。
しかし、定義と明記できないのは、私が普段の講義で使うとき、
省略しすぎている後ろめたさがあるからです。いわば、お断り
というかお詫びのようなものです。
第 1 節で、二次関数を例に、「微分」がどのように使われてい
るかを見てみます。
— 目次 —
0. 「微分」の用語
2
1. 二次関数の例
4
1
§0
「微分」の主な言葉
次の括弧の中にある言葉は講義の中でほとんど省略しています。もし曖昧な場合はすぐに確
認してください。こちらは前後の文脈から分かるだろうと勝手に思い込んでいる場合が多く、
実は他の学生さんもそれで再確認できることが多いので、どんどん質問してください。
1. 関数 y = f (x)
関数 (のグラフ) 上の二点 A,P を考えます。一点 A(a, f (a)) は固定します。もう一点の P(p, f (p))
はグラフ上を動く動点とします。
2.(点 A での) 平均変化率
∆y
∆x
点 A を基準に相対的な 点 P の変化量を
∆x = p − a ; x 座標の 変化量
∆y = f (p) − f (a) ; y 座標の 変化量
とわけてあらわします。つぎにその比を
平均変化率
∆y
f (p) − f (a)
=
∆x
p−a
とします。この値は二点 AP を結ぶ直線
y − f (a) =
∆y
(x − a)
∆x
の傾きになっています。
3.(x = a での) 微分係数 f 0 (a) =
dy dx x=a
動点 P を 定点 A に (A と P が重ならないように) 限りなく近づける、すなわち
p −→ a(a 6= p) i.e. ∆x −→ 0(∆x 6= 0)
とするとき、(点 A での) 平均変化率
∆y
がある値に収束すればその値を微分係数 といい
∆x
∆y
= f 0 (a)
∆x→0 ∆x
lim
と表します。
4.(関数 y = f (x) のグラフに) 点 A で接している接線とは
(x = a での) 微分係数 f 0 (a) が存在するとき、その微分係数を傾きとし、点 A を通る直線
2
接線: y − f (a) = f 0 (a)(x − a)
のことです。ですから 点 P が限りなく点 A に近づくとき微分係数が存在すれば
平均変化率 −→ 微分係数 (= 接線の傾き) であり、さらに 直線 AP−→ 接線
といえます。すなわち p −→ a (or ∆x −→ 0) のとき
平均変化率:
∆y
−→ 微分係数 : f 0 (a)
∆x
であり、また
{
}
∆y
直線 AP : y − f (a) =
(x − a) −→ { 接線 : y − f (a) = f 0 (a)(x − a)}
∆x
となります。
接線とその傾きは、近道で 指数関数・対数関数、三角関数の「微分」を納得するための重要
なキーワードです。頭の中にグラフがイメージできるように、しっかりと 1.∼4. を理解してお
いてください。
5.(関数 f (x) は x = a で) 微分可能
f 0 (a) が存在するとき、(関数 f (x) は x = a で) 微分可能 といい、収束しないとき (関数 f (x) は x =
a で) 微分不可能 といいます。工学では扱う関数のほとんどが微分可能です。
6.(関数 f (x) の) 導関数 f 0 (x) =
dy
dx
一点 A(a, f (a)) から微分係数 f 0 (a) が求められましたが、今度は固定していた点 A を動かすと
a 7→ f 0 (a)
の対応を関数と考えることができます。すなわち a を一般的な変数 x に置き換えて、対応
x 7→ f 0 (x)
を関数と捉えて (関数 f (x) の) 導関数 f 0 (x) といいます。また
f 0 (x) =
dy
dx
とも表されます。
3
∆y
の形から
∆x
§1
二次関数 y = f (x) = x2
平均変化率 ; まず 点 A から 点 P への変化を ∆x ; x 座標の 変化量 、∆y ; y 座標の 変化量
であらわします。すなわち
∆x = p − a, ∆y = p2 − a2
すると
p = a + ∆x, ∆y = p2 − a2 = (a + ∆x)2 − a2 = 2a∆x + (∆x)2
となり
傾き =
(p + a)(p − a)
∆y
2a∆x + (∆x)2
=
=
= 2a + ∆x
p−a
∆x
∆x
ここで、P を限りなく A に近づけると
∆x → 0
となり
∆y
= lim (2a + ∆x) = 2a
∆x→0 ∆x
∆x→0
微分係数 = lim 傾き = lim
∆x→0
となります。
0
·
· · 接線の傾き f (a) = 2a
この結果を利用して、放物線 y = x2 上の 点 A:(a, a2 ) での 接線は
y − a2 = 2a(x − a) 整理して y = 2ax − a2
となります。
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