はじめに 本校が設置されている県南地区では、近年地域の小・中学校の肢体不自由特別支援学級が増 加傾向にあり、本校でも小・中学校の特別支援学級等との転出入児童生徒が増加しています。 本校における教育相談、巡回相談等においても、小・中学校に在籍する肢体不自由児の教科の 指導に関する相談が増加してきています。相談内容としては、学習の積み上げが困難な児童生 徒に対する学習の定着を促すための指導方法や教材教具の活用、言語力の向上等があげられま す。 一方、近年、肢体不自由特別支援学校に在籍する児童生徒の障害の状態は、重度・重複化の 傾向にあり、脳に起因疾患を有する児童生徒が増えている現状にあります。本校においてもこ の傾向が見られ、動作の不自由により活動が制限されることへの配慮に加え、思考や認知の偏 り、ワーキングメモリの弱さ等に対応した学習をどのように組み立て、積み上げていくかが大 きな課題となっています。 また、本校の教員による校内研究アンケートからは、児童生徒の言語活動や表現力の乏しさ が指摘され、それらの充実を図るための研究が求められています。 そこで、本研究では、外部人材を講師として招聘し、児童生徒の言語活動の充実を図るため の指導を探ることとし、特に言語活動の充実が求められる「国語科」を取り上げ、着実に学習 成果を積み上げるための指導法やそれに対応した教材等をまとめて「指導パッケージ」を作成 することとしました。「指導パッケージ」の作成にあたっては、小・中学校等や特別支援学校 の学習指導要領を踏まえて個々の児童生徒の学びの道すじを整理しながら、教科内容の配列の 工夫や内容の整理を行う視点を明確にしておくこと等に取り組むこととしました。 また、肢体不自由特別支援学校に在籍する児童生徒の障害の特性が学習に影響を及ぼすと考 えられることから、児童生徒個々の認知特性への対応や言語の受容・表出に関するコミュニケ ーション能力の向上等、自立活動の内容と関連した指導が、「国語科」の学習の困難さを軽減 するために効果的であると考えられます。このことは、小・中学校等に在籍する児童生徒にと っても同様であると思われます。そこで、 「国語科」の指導にあたっては、 「国語科」の3領域 「話すこと・聞くこと、読むこと、書くこと」と自立活動の「コミュニケーション」 、 「身体の 動き」、 「環境の把握」の内容も関連させ、児童生徒一人一人に応じた指導を展開していくこと に重点を置くこととしました。 以上のことから本研究では、講師からの講演や助言をもとに指導内容の精選や配列の仕方を 確立するとともに、授業における支援の仕方や教材教具の活用などの指導方法等をまとめ、 「国 語科」の内容の定着や言語活動の充実を図ることとした。また、教科の学習につまずきが見ら れる児童生徒にとって、自立活動の内容も取り上げて指導することで学習の困難さが改善され ることが予想されることから、教科と自立活動の内容を関連性を持たせて指導するための指導 方法等について明らかにしていくことにしました。 本研究で作成した指導パッケージを活用することで、本校教員の実際的かつ専門的な指導技 術の向上が図られ、教育相談や巡回相談等の質が高まるとともに、地域の小・中学校等に在籍 する児童生徒への「国語科」を主とした教科指導や言語活動の充実、認知面等の向上、目標を もって主体的に諸活動に取り組めるようになるための指導などの充実が図られることを期待 しています。
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