財政・金融政策とマクロ経済

第7章
財政・金融政策とマクロ経済
11月 7日(金) 1 限目
7.4. フィリップス曲線の議論
財政・金融政策の役割
⇒ マクロ経済の状況を望ましい水準に持っていく。
⇒ (望ましい水準の)判断基準は?
⇒ “フィリップス曲線”
フィリップス曲線: 失業率とインフレ率の間に見られる関係
景気が悪い:
失業率 高い、
インフレ率 低い
景気が加熱:
失業率 低い、
インフレ率 高い
⇒ “失業率”と“インフレ率”のトレード・オフの関係
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7.4. フィリップス曲線の議論
例えば、望ましいマクロ経済の水準が点Aだとする。
現状が点B
⇒
財政・金融政策によって景気を刺激する
現状が点C
⇒
財政・金融政策によって景気を引き締める
⇒ “ファイン・チューニング(微調整)” or 裁量的政策
⇒ 景気の状況を見ながら、望ましい方向に修正
するように政策を用いる(ケインジアンの考え方)。
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7.5. フリードマンによる批判
フィリップス曲線の関係は1970年代以降は希薄になる。
⇒ 短期的にしか成り立たなくなる
・ インフレ率 上昇 ⇒ 失業率 低下 ⇒ (しばらくすると) 失業率が上昇
・ インフレ率 低下 ⇒ 失業率 上昇 ⇒ (しばらくすると) 失業率が低下
⇒ 失業率が “長期的な安定水準(自然失業率)” に戻っていく
自然失業率:
いかなるインフレ率においても、長期的には達成される失業率の水準
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7.5. フリードマンによる批判
インフレ率
(%)
長期フィリップス曲線: 青い線
短期フィリップス曲線: 赤い線
D
4%
財政・金融政策によって、一時
的に失業率を調整しても、長期的
にはもとに戻ってしまう。
2%
B
C
E
物価だけがインフレ(デフ
レ)として残ってしまう。
A
0 %
2%
自然失業率
4%
6%
失業率
(%)
消費生活の安定という面で
望ましくない。
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7.5. フリードマンによる批判
フリードマンの考え方に、新古典派は影響を受ける
⇒ ケインジアンの“ファイン・チューニング”は、経済の
不安定を招いてしまうと批判
⇒ 政府は、マネーサプライの安定や、財政収支の
バランス維持に集中すべき!
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7.6. ケインジアンと新古典派
ケインジアン
マクロ経済は政府が介入しないと、大きな変動を起こしてしまう可能性
がある。それによって、失業やインフレなどの問題を引き起こしてしまう。
そこで、政府は経済状況を観察しながら、景気を平準化するような財政・
金融政策を適切なタイミングで行う必要がある。
⇒ 『政府の政策介入によって、経済変動を小さくできる』
新古典派
政府が介入すると、かえってマクロ経済の安定性を損ねてしまう。
マクロ経済政策の最大の課題は、マネーサプライの安定や、財政
収支バランスを維持することである。
⇒ 『政府の政策介入は、経済変動を大きくする』
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7.6. ケインジアンと新古典派
ケインジアンは裁量的:
マクロ経済政策は、経済の状況に応じて適宜行われる。
新古典派はルールの固持:
マクロ経済政策の目的は、マネーサプライの成長率を一定に
したり、プライマリー・バランスを実現するような、政策のルール
を守ることに重点を置くべき。
⇒ 現実の政策運営においては、ケインジアンと古典派のどちらかに
極端に傾くというよりは、その中間を狙う場合が多い。
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7.7. IS-LM分析
IS-LM分析とは?
マクロ経済の“短期的な動き”をとらえる分析道具
⇒ 『財・サービス市場』 と 『金融(資産)市場』の相互関係で決まる
⇒ 2つの市場の相互依存関係を理解する
金利(利子率)がキーポイント!
・ 金融政策で金利は決まるが、投資や消費を通じて、財・サービス
市場へも影響を与える。
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7.7-1. 資産市場と財市場の接点: 利子率とGDP
『資産市場』と『財市場』を結ぶ重要な経済変数
⇒ “利子率” と “GDP”
<資産市場(貨幣需要関数)>
・ 利子率 up ⇒ 貨幣需要 down (他の資産を保有しようとする)
・ GDP up
⇒ 経済取引が活発 ⇒ 貨幣需要 up
・ 貨幣供給の変化
⇒
利子率とGDPに影響
<財市場>
・ GDP up
⇒
・ 利子率は?
消費や輸入が刺激を受ける
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7.7-1. 資産市場と財市場の接点: 利子率とGDP
利子率が『財市場』において演じる役割
企業は投資を行うための資金の多くを、銀行からの借り入れ、債券
や株式の発行で調達。
⇒ 利子率の上昇は、資金調達の利子コストの増大
⇒ 投資意欲がそがれる
利子率は、投資の変化を通じて、『財市場』に影響を与える
利子率 down ⇒ 投資 up ⇒ GDP up
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