EU Indicators 欧州経済指標コメント:2月英国労働統計 発表日:2016年2月17日(水) ~それでも次の一手は利上げとみる~ 第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 田中 理 03-5221-4527 ・ 英国の失業率(労働力調査ベース)は昨年12月までの3ヶ月移動平均値で5.1%と前月から不変、2006 年初以来の低水準にある。単月の失業率は、新たに計算に加わった12月値(5.3%)が同一サンプルの 9月値(5.2%)から僅かに上昇。同一サンプル間で失業率が悪化したのは昨年5月以来のことで、過 去2年間で僅か2回目。ただ、同時に発表された失業給付ベースの失業率は、前月まで10ヶ月連続で 横這い推移を続けた後、1月は2.2%に低下し、1975年1月以来の最低水準を更新した。失業給付申請 件数が3ヶ月連続で減少、過去2ヶ月は減少ペースが再加速しており、足許の労働市場は改善基調が 続いている。労働力調査ベースの失業率も向こう数ヶ月は現状並みの水準で推移する公算が大きい。 ・ 労働需給の逼迫傾向が続くなかにあっても、賃金上昇圧力は引き続き抑制されている。全産業の週当 たり賃金(賞与を除く)は10~12月平均の前年比で+2.0%と前月(9~11月平均の同+1.9%)から僅 かに加速したものの、昨年央を境にピークアウト傾向にある。今月は単月の振れが大きい賞与が下振 れし、賞与を含む週当たり賃金は昨年2月(2014年12月~2015年2月平均)以来の低水準を記録した。 ・ 16日に発表された英国の消費者物価からは、コア物価が僅かに上離れしているものの、エネルギー価 格の低迷を背景に、当面は物価の低迷が続くことが示唆される。ただ、賃金・物価の両計数は今年後 半にかけて再び上昇に転じる可能性が高い。主要国中銀のマイナス金利競争に乗り遅れまいとBOE の利下げ観測も一部に出ているが、今年後半には利上げ観測が再浮上する展開を予想する。 ■英国:失業率 ■英国:週当たり賃金(全産業、前年比) 失業給付基準(左) (%) 5.5 (%) 5 (%) 労働力調査基準(右) 9 賃金(賞与を含む) 賃金(賞与を除く) 4 5.0 8 4.5 3 4.0 7 2 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 10 11 12 13 14 15 6 1 5 0 4 -1 10 16 注:労働力調査基準は3ヶ月移動平均 出所:英国統計局 11 注:3ヶ月移動平均値 12 13 14 15 16 出所:英国統計局 ■英国の失業給付・平均賃金 失業率(失業給付、%) 失業給付件数(前月差、千人) 失業率(労働力調査、%) (単月の失業率、%) 就業者数(前月差、千人) 週当たり賃金(産業計、前年比、%) 賃金 ボーナス 2015 2016 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.2 -15.1 -7.8 -1.2 0.2 -6.8 1.2 0.5 0.2 -2.2 -15.2 -14.8 5.5 5.5 5.6 5.6 5.5 5.4 5.3 5.2 5.1 5.1 - 5.5 5.7 5.8 5.4 5.4 5.3 5.2 5.1 4.9 5.3 - 202 114 -67 -63 42 140 176 207 267 206 - 2.3 2.7 3.3 2.6 2.9 3.0 3.0 2.4 2.1 1.9 - 2.3 2.7 2.8 2.8 2.9 2.8 2.4 2.0 1.9 2.0 - 0.9 2.0 6.5 -0.5 4.8 10.9 16.7 13.5 6.4 1.3 - 注:労働力調査基準の失業率、就業者数、週当たり賃金は当月で終わる3ヶ月移動平均 出所:英国統計局 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1
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