VI 短期の経済変動 1 第15章 総需要と総供給 1.経済変動に関する三つの重要な事実 • 事実1:経済変動は不規則で予測不可能であ る • 事実2:ほとんどのマクロ経済の数量は同じ ように変動する • 事実3:産出量が減少すると失業が増加する 2 2.短期の経済変動の説明 • 短期と長期はどのように異なるのか – (これまで説明してきた)古典派理論は短期では なく長期の世界を描写している 3 経済変動の基本モデル 物価水準 (一般物価) 均衡物価水準 総供給曲線 均衡 総需要曲線 0 均衡産出量 産出量 (GDP) 4 3.総需要曲線 • なぜ総需要曲線は右下がりなのか 総需要=C+I+G+NX • 物価水準と消費:資産効果 – 物価水準の下落によって、消費者はこれまでもより豊か になったように感じ、消費支出を増やそうとする • 物価水準と投資:利子率効果 – 物価水準が下落すると、利子率が下落し、投資財への支 出が増大するので、財・サービスの需要量が増加する • 物価水準と純輸出:為替相場効果 – 物価水準が下落すると、利子率が下落し、実質為替相場 が減価する。これにより純輸出が刺激され、財・サービス の需要量が増加する 5 • なぜ(どのような要因で)総需要曲線はシフト するのか – 消費によるシフト – 投資によるシフト – 政府支出によるシフト – 純輸出によるシフト 6 4.総供給曲線 • 総供給曲線は、長期においては垂直であり、 短期においては右上がりである 物価水準 (一般物価) 短期の総供給曲線 長期の総供給曲線 0 産出量 (GDP) 自然産出量 7 • なぜ総供給曲線は長期において垂直なのか – 長期においては、経済の財・サービスの生産(実 質GDP)は、資本と労働と天然資源の供給と、こ れらの生産要素を財・サービスに変換する利用 可能な技術に依存する • なぜ(どのような要因で)長期の総供給曲線 はシフトするのか – 労働/資本/天然資源/技術知識 8 • なぜ総供給曲線は短期において右上がりな のか – 物価水準が人々の期待する水準から乖離すると、 自然産出量から乖離する – 硬直賃金理論/硬直価格理論/誤認理論 • 供給量=自然産出量+ a×(実際の物価水準-期待物価水準) 9 • なぜ(どのような要因で)短期の総供給曲線 はシフトするのか – 労働、資本、天然資源、技術知識の変化 – 期待物価水準が上昇すると、財・サービスの供給 量が減少し、短期の総供給曲線は左方にシフト する – 期待物価水準が下落すると、財・サービスの供給 量が増加し、短期の総供給曲線が右方にシフト する 10 5.経済変動の二つの原因 • 総需要曲線のシフトの影響 – 短期においては、総需要のシフトによって経済の 財・サービスの産出量の変動が生じる – 長期においては、総需要のシフトは全般的な物 価水準には影響を及ぼすが、産出量には影響を 及ぼさない 11 • 総供給曲線のシフトの影響 – 総供給のシフトによってスタグフレーションが生じ ることがある。スタグフレーションは、景気後退 (産出量の減少)とインフレーション(物価の上昇) の組合せである – 総需要に影響を与えられる政策立案者でも、景 気後退とインフレーションを同時に消滅させること はできない 12 第16章 総供給に対する金融・財政 政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がり である – 資産効果 – 利子率効果 – 為替相場効果 • (アメリカ経済にとって)総需要曲線が右下が りであることの最も重要な理由は、利子率効 果である 13 流動性選好理論 貨幣市場均衡 利子率 (r) 貨幣供給 均衡利子率 貨幣需要 0 中央銀行によって 固定された量 貨幣量 (M) 14 右下がりの需要曲線 (b)総需要曲線 (a)貨幣市場 貨幣供給 r P ③ ① ② O 貨幣需要 M 総需要 O ④ Y 15 貨幣供給の変化 (b)総需要曲線 (a)貨幣市場 貨幣供給 r P ① ③ ② 総需要 貨幣需要 O M O Y 16 • 中央銀行の政策における利子率目標の役割 – 流動性選好理論によると、金融政策は貨幣供給 と利子率のどちらでも表現できる 17 2.財政政策は総需要にどのような 影響をもたらすか • • • • 政府支出の変化 乗数効果 クラウディング・アウト効果 租税の変更 18 3.政策によって経済を安定化させる • 積極的な安定化政策の賛成論 • 積極的な安定化政策に対する反対論 • 自動安定化装置 19 第17章 インフレ率と失業率の短期 的トレードオフ 1.フィリップス曲線 インフレ率 (%) B A 0 失業率(%) 20 総需要、総供給とフィリップス曲線 (b)フィリップス曲線 (a)総需要と総供給 物価水準 総供給 インフレ率 B B A A 総需要 O GDP O 失業率 21 2.フィリップス曲線のシフト: 期待の役割 • 長期フィリップス曲線 インフレ率 (%) 0 自然失業率 失業率(%) 22 長期フィリップス曲線と 総需要、総供給 (b)フィリップス曲線 (a)総需要と総供給 物価水準 総供給 インフレ率 B B A A 総需要 O 自然算出量 GDP O 自然失業率 失業率 23 期待と短期のフィリップス曲線 • 失業率=自然失業率 -a×(実際のインフレ率-期待インフレ率) インフレ率 (%) B C A 0 自然失業率 失業率(%) 24 3.フィリップス曲線のシフト:供給 ショックの役割 (b)フィリップス曲線 (a)総需要と総供給 物価水準 インフレ率 総供給 B B A A 総需要 O GDP O 失業率 25 4.インフレ率を低下させることの費用 • 短期と長期のインフレ抑制的な金融政策 インフレ率 (%) A C 0 自然失業率 B 失業率(%) 26 • 犠牲率 • 合理的期待と費用のかからないインフレ抑制 の可能性 27
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